2016年3月9日水曜日

アイサシリーズ その9.「越冬コウライアイサの家族・総集編」  Merganser series Vol.9. [Scaly-sided merganser Vol.5]

 情報によると、昨年の11月25日前後から人吉盆地に滞在中だったコウライアイサの姿が、ここ数日見えなくなったようだ。まだ何処かに隠れているのかもしれないが、昨3月7日(月)とうとう人吉の気温が25度を超えた、夏日だ。もう大陸に戻ったのかもしれない。

 このコウライアイサは情報データ不足の野鳥で、日本には最近でこそ南九州中心に飛来情報があるが、昭和初期に刊行された「鳥類原色大図説=黒田長礼著・小林省三画」によれば、「本邦にては唯一回朝鮮京城市場にて雄一點が發見せられしのみ」とある。この「本邦~」とは当時の日本領土の朝鮮半島で一回観うけられた・・という事だが、実際はもっと居たような気がしている。

 当時は野鳥にこれだけ興味を持つ人は多くなく、ましてや超望遠レンズを搭載した高感度のカメラを持って大勢が車で探し回るようなことも無かっただろうと思うからだ。交通も通信もバーダーの数も今とは雲泥の差の当時と、現在の環境・状況を比較する事そのものに無理があるだろう。携帯電話・メールの発達で、情報があればものの1時間で4~50名のバーダーが噂のポイントに集まろうという現在、見逃す野鳥など居る訳がない。

 昭和初期、通信の基本は「郵便」だ。のんびりポストから郵便局を経て相手に情報が伝わるころには目指す野鳥などはるかに遠くへ去って居よう。自分を含めてバーダー諸君は今の時代環境に相当感謝しなければいけないのだろう。

 その現在ですら、なかなか出遭えないコウライアイサの最終回は3羽の家族?で滞在していたいろいろな場面をご紹介して終わろうと思う。

基本的にはオスが先頭を行くのだが・・・。


キレイに間隔をそろえて規則正しい編隊を組む。普通のカモにはないと思うが・・硬派なのか?

時には急反転でオスが最後尾になることも、たまにはあった。

 ほんの2~3日の事だったが、オスが1羽増えたと思ったらカワアイサのオスが近くで行動を共にしていた。コウライアイサのオスは時折すぐ横まで行ってコミュニケーションしていたようだ。見ている限りでは争いのような動きは一切なかった。カワアイサのオスがコウライアイサのメスの若鳥を見染めたのか!すわ交配か?と思ったが違ったようだ。左手前がカワアイサのオス。

何かに危機を感じて飛び立つときは素早い!

飛び立ちは7回ほど目視したが、撮影できたのは5回だけだった。後ろ向きは一度のチャンスだけだった。

この時は、子供と思われるメスが少し離れたところに居たのだが、つがいの親達が飛び立ったのを視てあわてて自分も飛び立って追いつこうとしている様が見て取れた。

自分の目線より上を飛ぶ姿は数少ない。

 水面近くからの撮影は非常に難しかったが他に観察者・撮影者がいない時、コウライアイサが300m以上離れた遠くにいる際に、運が良ければ目の前を通るに違いないと、水辺の藪の中にしゃがんで隠れて撮影したもの。いわばバクチに近いが、何回か無駄を繰り返してやっと撮影できた。



 コウライアイサに関してはブログで5回に分けて生態画像をご紹介したが、実際には10倍以上のデータが在る為、YAMASEMI WEB本体でアイサコーナーを設けて画像をアップしようと考えている。ぜひ来年の冬も再会できるように祈ろう。