恵比寿のTOP MUSEUM(東京都写真美術館)で中野正貴氏の「東京」展をじっくり観る事が出来た。とてつもなく撮るのが大変な作品ばかり。例えば日中、東京都心の街中、時計は午前11時半を指しているのに、街に人が一人もいない!「TOKYO NOBODY 2000年出版」でいろいろ賞を撮られた方。知らない筆者の方が恥ずかしい話だった。
中野さんに訊いたらお盆の日や正月だという。東京タワーシリーズは北斎の冨嶽三十六景シリーズにも似て現代の東京タワー三十六景?
それ以外も明らかにビジネスホテルやラブホテル、あるいは普通の家(マンション)と思われる部屋から超スローシャッターで撮った画像。思いっきり絞り込まなきゃ地平線までピントが合って表現できない画像など、撮る身になって考えれば途方もない画像の数々。
1枚1枚が訴えている狙いが判りやすい作品群。何を撮って何を訴えたいのだか判らない新進気鋭の若き写真家さんたちとは全然違う「リアル」な東京を30年掛けて撮影・蓄積した力作ぞろい。
一度じっくり観て頂きたい。大きなプリントが素晴らしく、ご本人には申し訳ないが写真集は手にする気にならない。生の作品の大きさで観なければ、この方の意図・目論見などは判らないと思う。
何度も見に行くつもり。もう今はとても狭くなってしまった渋谷の東急文化館前のバスターミナル。 ヒカリエ建つ前の俯瞰、昔のパルコ前、など貴重な東京の画像も沢山!偶然現場でご本人とお会い出来てよかった!大変勉強になりました。
しっかりとした意図と事前調査、ロケハン、目論見、演出(シャッターチャンスの決め!)の重要性は尊敬する佐藤秀明さんから散々学んではいるのだが、これほどアドリブなしで計画通りにプランしないと撮れない撮影は相当きつい活動だと思う。
佐藤秀朗さんが’60年代最後の頃、ニューヨークのあの貿易センタービルが建っていく過程を、隣の高層ビルの知らない人の部屋や事務所から撮らせてもらったという、信じ難い体当たりの撮影行動と同じことをこの人は東京でやっていた。此の共通点にはある意味感動すら覚えた、「すげー」。
野鳥撮影にしろ、風景撮影にしろ、鉄ちゃんにしろ、徒党を組んでわいわいと、サロンのように撮影していては絶対にこういう針に糸を通すような「写真」は撮れないのだと、感じ入ってしまった。
多分、今後徐々に混み合ってくるだろう、行くなら今のうち、朝のうち。
東京タワーのバリエーションは中野さんらしい苦労の跡が、素人にも良く判る。
貴重な歴史的写真でもある、渋谷の東急文化会館前バスターミナル、しかも無人!
写真集出版準備で、プロトタイプを自分で作成されていた。筆者も全く同じことをしていた。
ご本人は、自分が撮られるのは非常に照れ臭い・・とおっしゃっていたが、無理をお願いした。