2015年2月7日土曜日

「団塊世代のヤマセミ狂い外伝 #96.」 ヴァン ヂャケットの社内でのエピソード、その6。

 1970年代初期につのだじろうの漫画「うしろの百太郎」の中でコックリさんというものの紹介があり中高生中心に大ブームが起きたことがある。1974年のユリ・ゲラーのスプーン曲げ手品(本人は超能力と言っていた)と「超能力相乗効果」でテレビのバラエティショー等では超能力と言う言葉が出ない日はなかった。
うしろの百太郎 つのだじろう Google画像

ユリ・ゲラー本 Google画像

 そういう背景の中、まだ販促部が青山3丁目の角の本館に在った頃の話。

 ある日の昼休み、販促の部屋で軽部CAPが「皆集まれーっ、全員集合!」と声を掛けた。其処で販促男子4名が軽部さんを中心に集まり事が始まった。超能力の具体的な例としての実験をやろうと言うのだった。まず大男の軽部さん(身長190cm体重80kgほど?)が椅子に座る。そうして4名の男子が座った両膝の裏、両腕の付け根に4人それぞれが自分の右腕と左腕を伸ばして握り差し込む。そうして、「せーの!」で4人の力で大男軽部CAPを持ち上げようというのだ。

 筆者は腰も強いし、新人なので腕の付け根の裏側に両腕を差し込んで「せーの!」で持ち上げたが、びくともしなかった。一度やってみて4人の男は全員直感的に「これは無理だ、上がる訳が無い」と思ったのだった。
 で、軽部さん言うには「皆一言も言葉を発してはいけない。」「4人がそれぞれ両手を中空で重ねあい、その過程でも一言も言葉を発することなく、各自が上げるぞ上げるぞ・・と念ずる。軽部さん本人も自分で上がるぞ、上がるぞ!」と思うのだそうだ。で、無言のまま一人ひとり順番に持ち場のポジションに組んだ両手を差し込んで行く。そうして眼と目で「せーの!」で力とタイミングを合わせるのだ・・・という事だった。

 これを聴いて、本番が始まった。無言のまま段取り通り4人が真剣に事を運んだ。そうして眼と目で「せーの!」とやった途端何が起こったか!?
 80kgを越える大男軽部CAPがスーッ!としかも軽々と一瞬の間に持ち上がってしまったのだ。持ち上がった軽部CAPの頭が低い天井にぶつかり、穴が沢山開いている天井の吸音材が1枚へこんだ程のショックだった。もう販促の部屋の中は恐怖と言うか脅威を観たショックからか、驚きとショックの嬌声が響いたのだった。10円玉が動く程度のコックリさんどころの騒ぎではなかった。しかしその空恐ろしさは明らかに摩訶不思議な世界を垣間見てしまったかのように、その後二度と同じ事をしようと言い出す者はいなかった。
 
 次の話はどちらかと言うと悪戯の範疇に入る話。

 販促部でアメラグのヴァンガーズメンバーでもあり、アイスホッケー・ヴァンガーズの正ゴールキーパーでもある小笠原さん、通称「選手」が結婚することになった。式は梅が丘の教会で行われた。
改装された梅が丘教会、当時は木造だった。

 ジューンブライドつまり夏でもあるし、それぞれ参列者がヴァン ヂャケットの社員らしい気取った、そうしてかっこつけた装いで集まる事は想像がつく話だった。


 当日、梅が丘の教会では事前の打ち合わせでちょっとした事件が起こった。 
 牧師さんが新郎を探せなくなってしまったのだ。理由は簡単だ。上下真っ白のスーツを着た販促部の男性が7名も教会内をうろうろしていたのだから。中にはわざわざ牧師さんを惑わすかのように新婦と腕を組んで写真に納まるものまで出てきてしまい、もう10分間ほどの短い間だったが皆で参列した他の大勢を楽しませるのだった。
白のコットンのサマースーツは当時のヴァン ヂャケットの気取った社員には必需品だった。

 その間本物の新郎は介添え人である若林ヘッドに別室に連れ込まれ、色々結婚してからのは心構え等を話す振りをして参列の人たちから事前打ち合わせどおり隔離していたのだった。
 牧師さんが汗ビッショリだったのは7月だからと言う理由だけではなかったと思う。
 
 こんなことばっかりやっていた販売促進部だったが、勿論まじめに仕事は仕事で120%のパワーでやっていた。次回からは少しこの仕事上での逸話を幾つかご紹介しよう。