2021年7月13日火曜日

国立科学博物館の「特別展・植物」への私感レポート。 A personal report on the "Special Exhibition / Plants" at the National Museum of Nature and Science.

  2日前上野の東京国立科学博物館で開催されている「特別展/植物・地球を支える仲間たち」を観て感じたことなどを会場内の展示・解説中心でレポートしてみたい。

 筆者はかって世田谷の奥沢中学校時代生物部に属し、洗足池のプランクトンを研究した。

 何かの発表で洗足池には植物性プランクトンと動物性プランクトンが居て、中でも植物性プランクトンが異常発生すると水面を覆い尽くすので水中の酸素が不足し水生昆虫や魚類にダメージが発生するのではないか?という研究成果で何かの賞を頂いた。

 これがきっかけで、植物・動物への興味が増し、72歳の今に至るまで自然系・生物系ジャンルへの注目度は非常に高いものがある。

 2005年の愛知万博では植物が光合成の一環として行う「二酸化炭素を吸収して酸素を出すという行為」をリアルタイムで視認できる装置を早稲田大学の研究室で開発し、125日間展開するなど、歳を重ねても仕事を通じて植物への興味はより深まった。

https://astamuse.com/ja/published/JP/No/2007079320

丸2年掛かって完成した植物の二酸化炭素リアルタイム吸収実験装置。

 密閉ドーム内に植物を入れ、ドーム全体を暗くしたり光を当てたりして、入る空気と出る空気の二酸化炭素濃度の変化をリアルタイムで試認できる装置。

色々な植物での実験を行った。常緑樹と落葉樹の違い、カム植物と非カム植物の違いなど。

 万博終了後500㎞離れた場所へ植物ともども移動させ、ある環境イベントで実験したら持ってきた植物すべてが全く反応(二酸化炭素を吸収する)しなかったことがあって、運搬の振動で装置が壊れたと大騒ぎになった事があった。

 学生諸君が装置メンテに必死になっている間に、筆者は「植木鉢で500㎞も移動させられた植物の側に問題があるのでは?」と思い、展示会場の近所の畑から持ってきた大根で実験したらとんでもなく素晴らしい反応を示した。
 この瞬間「本来根を下ろしたところから動けない植物は、無理やり移動させられると転校生と同じで、最初の数時間(24時間程度=1昼夜?)は静かなのだ!」と自分の小学生時代三度の転校をした経験と照らし合わせて勝手に理解したのだった。このあたりは機会が在ったら是非研究したいと思っている。

 こういった現場での経験値から新たな植物に関する「疑問」がたくさん湧いて来たのだった。
上記の万博型の大型装置を小さくして持ち歩き出来るようにして、エコプロダクツ展などで展開。子供たちに大いに植物のパワーと不思議をアピールした。

 早稲田大学の大学院生諸君が、小型化された装置でエコプロダクツ展来場者へ詳しいレクチャーを行った。この時の環境大臣は小池百合子氏。

 このように万博中、あるいはそれ以降色々お世話になったコスモ石油さんが出展参加されたエコプロダクツ展展開をお手伝いする間、植物に関するいろいろな疑問が湧いてきて、新たな研究テーマが生まれた。

 しかし今回の植物展でそれの解決に役立ちそうな展示は無かった。それだけ植物の世界は広くて判らないことだらけなのだろう。自分なりの植物に関する疑問のいくつかを列挙してみたい。

➀ 鉢植えの植物を長距離移動させると光合成などの機能が1日ほど停止するが何故?➡植物は本来種が落ちたところで根を張り芽が出るので動かない。それを鉢に入れて動かすと新しい環境に慣れるまで時間が掛かる?その理由、原因は?地磁気の問題?植物の持つGPSの問題?

② 植物が一杯の部屋(閉鎖空間)に人間が入ると女性は「気持ちいい!」といつまでも入っているが、男性は「臭い、気持ち悪い!」と言ってすぐに出てしまう。➡エコプロ展でのデータ。※筆者自身もエデンプロジェクトで同様な体験をした。

 英国セント・オステルにあるエデン・プロジェクト=陶土掘削窪地跡に半球樹脂ドームを設置。大型の熱帯植物などを育てて研究している施設。2005年に自己負担で視察。

室内はいくつかに判れており熱帯や砂漠と同じ環境条件にしてある。

③ 大きな樹木は上から見ると大体において円錐形に育って伸びていくが、何故陽が当たらない側にも葉が生えるのだろう?日当たりの良い側と裏側で光合成の性能は同じなのか?

④ 今回植物展でも高さ150mの樹木などが出ていたが、上の方までどうやって水を吸い上げるのだろう?毛細管現象だけで、あるいは上部の葉の蒸散作用による吸い上げパワーが生ずるのだろうか?葉が風で動くことそのパワーアップに関係しているのだろうか?・・・などなど。

 植物に関して言えば作曲家の神津善行先生は独特の観点から植物を研究されている学者さんだ。先生の著書「植物と話がしたい」などは目からうろこの話が盛りだくさんある。残念ながらこういった世界も今回の「植物展」には紹介されていなかった。

 また、筆者の横浜国大学生時代授業を取っていた宮脇昭教授の「植生生物学」などに関するジャンル、人間生活と植物の関わり合いに関しても残念ながら触れられていなかった。次回に期待したいと思う。

こうした植物の世界に興味を持った筆者が今回植物展を観て思ったこと・・・。

普段観られない食虫植物の本物を目視出来たのが一番リアルで良かったと思う。

最初は一覧表のメニューとの関連性が判らない人が多かった様だ。もう一工夫?

ライオンゴロシ・・という名前から入る展示も面白かった。

展示をスマホで撮影出来るのも世界の常識レベルになってきて良いと思った。

化石を復元して見せる手法は大人でも面白いと思う。

奥日光の戦場ヶ原の木道へ行けばこの程度の根っこはゴロゴロしている。

大きな壁面パネルも良いが動画での見せ方がもっとあっても良いような気がした

 光合成に関しては自分が関係したジャンルのせいか、一番不親切な説明解説のような気がした。文章の言いたい意味が良く判らない。植物学以前の日本語・国語の問題だと思う。随分多くの人がこの前で首をかしげていた。エネルギーの話に行く前に、まず光合成そのものの仕組みとそれによって生ずる色々な事を説明して植物にとっての光合成がいかに重要な事なのか、その方法も生息する環境(地上・水中・湿原・砂漠・高山)で随分違う事も紹介して欲しかった。

 光合成の話や遺伝子組み換えの話と、でっかい樹木の話や臭いアフレシアの話や化石植物の復縁模型などとの落差がありすぎて、全体的にバランスがとれていないような気がする。

 もう一度行ってみて更に詳しいレポートが出来ればと思う次第。しかし久しぶりに中身の濃い科学博物館の展示だった。南方熊楠展以来のワクワク感だった。是非お勧め!