2021年6月12日土曜日

今すぐそこにある危機、今年の球磨川は大丈夫だろうか? The crisis is in front of you, Is the Kuma River all right this year?

 昨日の夜、ニュースウォッチ9の後「NHKクローズアップ+」で、最近の洪水被害の多発理由と各地の対策を取り上げていた。

 冒頭の映像は昨年7月4日の球磨川の氾濫を人吉市上空から撮影したものだった。そのほか筆者がヤマセミ観察・撮影で何百回となく通った道路や撮影ポイントが写っていて、とても辛い思いだった。

 放送が終わった後、改めてNHKプラスで二度ほど見直して思った。滋賀県琵琶湖附近、東京の下町・ゼロメートル地帯、高層タワーマンションなどでは、洪水に立ち向かう住民たちの具体的な準備なりシミュレーションなり、行動が紹介されていた。

 しかし昨年7月4日の球磨川及びその支流による大洪水に見舞われた人吉市中心の被災地では、何故洪水が起きたか?どういう状況だったのか?の説明だけで、今年同じ豪雨が発生した場合など次の「目の前にある危機」への具体的対策・行動が何も紹介されなかった。

 何故だろう?それは具体的な住民の動きや行政の具体策が進んでいないからだろうと思った。熊日新聞や人吉新聞などの地元メディアを見る限り、未だに行政や市町村議会で対策計画を討論しているだけで、その結果・成果、具体的行動は数年先でないと実を結ばない様なものばかりに見える。

 地元熊本の地方新聞。既に梅雨に入っているにもかかわらず、いつ出来るか判らない川辺川の穴あきダムに関するシンポジウムだの、千年に一度などという抽象的な言葉の踊る浸水図を作るだの今目の前に迫る危機への具体的・即行動に関する報道が何も無いのは何故だろう?他の洪水被災地区の具体的即行動に比べ何という悠長な事だろうとため息が出てしまう。

 千年に一度‥とか言っている前に、現実的に大小関わらず十年に一度の洪水被害が在るのだから、官民一体になった「命を守る」具体行動に入るべきなのではないだろうか?同時にメディア・マスコミも、行動優先順位を説き、ダムの話やシンポジウムなどより明日洪水が来るかもしれない住民中心のエリアごとの避難計画・シミュレーション避難訓練を行うよう啓蒙すべきではないのか?

 治水に関するシンポジウム開催など、力を合わせて良い事をしています・・・的報道も大切だろうが、専門家まかせ、国任せ、行政任せの洪水対策ばかりでは、また被災者・犠牲者が出てしまうに違いない。

 繰り返すが、地元メディアの報道を見ている限り、川辺川の穴あきダムだの、住宅地の建築規制だの、今年の7月4日に昨年と同じ集中豪雨が発生した場合どうするのか?という「今そこにある危機」に対する対策が何も出来ていないように思えて、人吉球磨エリアにご縁のある者の一人としては非常に心配だ。

 まさか、100年に一度の大災害だったんだから、次は100年後だろう?あるいは、去年えらい目にあったんだから、しばらくは同じ事が起こる訳ない…くらいに思っていやしないだろうか?洪水に慣れているエリアの人々の「慢心・油断」が逆に大きな被害を生んでいるような気がしてならない。

 数年に一度、洪水~浸水を繰り返す地域住民は、川の増水・豪雨に慣れてしまう傾向が強いそうだ。飛行場の傍に住む人びとは航空機の発着時の騒音に体も耳も脳も慣れてしまう。電車の路線近くの住宅でもそうらしい。慣れてしまうと音の場合は良いが、急激な川の増水の場合はちょっと違う。洪水災害になった際に対処できないという。「適当にまた収まるだろう・・。せいぜい床下浸水くらいか?」これが昨年7月4日の球磨川洪水被害の原因の大部分だったという分析もある。

 幾度も自分の例を挙げて申し訳ないが、昭和40年頃の集中豪雨では、当時我が家族が住んで居た下流部の八代市でも2年連続で床上浸水になった記憶がある。普段から雨量の多い九州では、去年起きたことは今年も起きる可能性が非常に高いのだ。

 今日はそのNHKクローズアップ現代+で報道している内容をこのブログでかいつまんで要点をご紹介したい。

 個人的に言えば、官・民を問わず人吉の皆さんに「NHKクローズアップ現代+」をNHKプラスの見逃し再視聴(登録すれば6月16日まで無料閲覧可能)で是非ご覧いただきたい。地元人吉の事ではなく、同じ様な洪水被害が発生している他地域の工夫とスピード感ある努力を見て欲しいのだ。人吉市の現状と他の災害被災地を見比べて欲しいのだ。

 https://plus.nhk.jp/watch/st/g1_2021060907982?playlist_id=c62990e7-250f-4817-b8ed-8c3366df4c87


あの安倍内閣時、菅官房長官に嫌われ降板させられた国谷裕子氏の後を受けての番組。

ハザードマップの洪水想定エリアに住宅が増えた為の災害発生多発が今回のテーマ。

さんざんヤマセミの観察撮影をした場所がクローズアップされていた。画面中央は球磨川本流で流された西瀬橋。右上隅の大きなお宅は筆者が非常に懇意にして頂いている方のお宅。

この堤防道路は幾度も車で通過し、ヤマセミの観察を行なった場所。今ヤマセミは居ない。

ハザードマップで5mの浸水地域に在りながら、床下浸水くらいだろうなどという周りの声で、ロクな危機感も持たず、「その時」の準備をしていなかった事実が暴露された。

昭和40年の大洪水は下流に当たる八代市駅周辺~市街地でも床上まで浸水した。

決して100年に一度の集中豪雨では無いのだ。球磨川は数年に一度氾濫するのだ。

 ハザードマップで5m浸水が予想される場所にまで宅地開発を進めた行政は、考えと行動を今すぐにでも、全とっかえしなければならないだろう。自分達だけで額を寄せ集めて、仲間内だけでモノを考えるのではなく、同じ様な水害多発地区の工夫や努力を学び・実践する必要があるだろう。それをしなければ同じ事が繰り返されるだけだ。今年もあり得る話だ。

 滋賀県では役場が住民に危険を知らせ避難指示するだけではダメだと、いろいろ工夫して具体的な行動を始めている。治水に関しての専門家・嘉田由紀子元知事のDNAが残っているのだろう。是非人吉市も学んで実践して欲しい。

筆者の居る東京でも昨年はタワーマンション中心に各地で被害が多発した。

 海抜ゼロメートル地帯=下町と言われるエリアでは、相当な被害が予想されるため、住民の方々は必至で具体策を立て実践している。

 昨年の豪雨の際は川崎市などで、浸水で電源が喪失し4~50階の高層マンションの機能が失われた。エレベーター等も補助発電機含めて全滅だったという。昔の川床に高層マンションを建てたりするからだ。今後は自然災害から自分の住居を守る意味で入居者の事前チェックも重要になるだろう。

 東京の場合は危機感を持った住民が即一丸となって行政を動かし、応急処理を行ったという。具体的に水を防ぐという事と同時に、「自分たち住民同士が力を合わせて実際に行動する・・」と言う事が需要で、本番の際への避難訓練にもつながる。

 人吉市の人々はこれを日ごろから行っていただろうか?行政任せではなかったろうか?人吉市には甚大な被害に遭われた知り合いが沢山いるので、筆者は東京に居ながら昨年の件ではお気の毒過ぎて、未だに声もかけられない。

 いざ洪水が予想できた場合は学校やコミセンなど行政が指定した「避難所」ではなく、住民目線、住民の物理的行動可能エリアにある建物へ分散非難するようにしている。人吉市においては、市の中心部なりハザードマップ危険地域の方々はこういう事をしているだろうか?

 洪水対策で町内会・民間人のプロジェクトが組まれ、優れた避難マトリックス・タイムラインが完成している。ここまで細かく具体的な対策は行政には無理だろう。

 ただアリバイ的に「避難指示」だの「避難命令」だの発令を繰り返すだけの行政指示では、命は守れない。その土地土地、立地条件が違う特殊性に合わせた行動タイムテーブルは非常に良いシステムだ。それにはそこに住む人々自体が自分たちの身を守る工夫をしなければ何も始まらないのだ。

 このマンション理事長の一言は一番理に適っていると思った。一言で簡単にマンション理事長といっても1棟に1,500人が住んでいる高層マンションの代表なのだ、地方で言えば町内会10か所合計の首長のようなものだから、いい加減な地域行政のものの考え方とは責任感も必死さにおいても基本が違うような気がした。

 人吉球磨の行政も地元住民も、是非こういう全国のあり方、優れた対策を学び、地元の対策へと取り入れて欲しいと思う。