2019年7月27日土曜日

団塊世代は上映時間3時間半にも及ぶ映画「ニューヨーク公立図書館」という映画を見た。The baby boomers watched a movie called 「Ex Libris the New York Public Library」 which runs for three and a half hours.

 数週間前知的な友人が観て、素晴らしい感想をFB上に投稿していたので、筆者も是非一度観てみようと思い都内の上映館へ足を運んだ。茨城の研究所へ行く途中なので朝一番の上映回・・・と言っても上映時間が3時間40分(15分の休憩込み)なので、映画としては長い方だ。過去自分で観た映画でも「ベンハー」、だとか「アラビアのロレンス」に匹敵する長さだ。しかし観て良かった。感ずるところは違うかもしれないが・・・素晴らしさは友人の指摘通りだった。

 内容に関しては観てのお楽しみで、いわゆるネットで良く有りがちの「ネタバレ」的なものはない。犯人も居なければ、ヒーローもヒロインも居ない。どちらかというとNHKスペシャルの大型版に近いが、解説方式ではなくドキュメンタリー・リアルを繋いだ映像作品だ。

 カメラワークもNHKの機材や技術を使うまでは無いものの、説明もないわりに飽きさせない構成は見事と言って良い。テーブル会議やミーティングの場面が多いが、1台のメインカメラが喋っているリーダーを追い続け、意見を言ったり聞いている他のメンバーをサブの1台が追い収録したものをメインの画像の合間に編集時にインサートする方法を取っている。

 カメラは多くて同時に3台ほどだろうか?普通は2台、屋外は1台で回している様だ。

 何が面白いって、まずこの図書館で働いているメンバー、打ち合わせに来ている関係者、イベントごとの参加者、一般利用者たちの種々雑多の人種、千差万別のいでたち、ヘアースタイル、ファッションのなんと素晴らしい事!ミックジャガーやリンゴスター、あるいはカルチャー・クラブのボーイ・ジョージが紛れ込んでいても気が付かないだろうきっと。
 個性の集まり、人種の集まり、さすがニューヨーク!という幅の広さ。星条旗だけがお互い唯一の共同シンボルという国らしい。

 日本に在ってはそのスタイルで群を抜く存在感の、故・内田裕也さん、故・樹木希林さん、松本人志、マツコ・デラックス、又吉直樹、テニスの大坂なおみ等がこの映画に出てきても、ほとんど目立たないと思えるほどのキャラクターぞろいだ。まずそこに驚いた。

 しかし、この図書館が揃えたアーカイブの幅の広さ、その量、本の貸出しと回収のシステム。どれをとっても日本のそれとは桁が違う。
 筆者が良く通う東京の国会図書館で、やっと少し同じ土俵に立てようかという部分もあるが、写真やその他の資料単品のアーカイブは日本の国会図書館にはないだろう。利用者と同じ目線での運営には程遠い。「見せてやる、利用させてやる、入れてやるから有り難く思え・・」的な雰囲気がシステムにも係員の表情、言葉遣いにも表れている。外国人の利用者がほとんどいない理由はそこに在るのだろうか?

 あと目に付いたのが、この図書館・本館その他別館で数多く使用されているパソコンがhp(=ヒューレットパッカード)主体で、来場者の持参パソコン(ノート)に日本製が多かったこと。VAIOやTOSHIBAなど、あとは秋葉原で買えるコスパの良いブランドが多かった。
 一方、マックは子供用の実験開発分室で貸し出し用に置いてあるラップトップだけだった。思いのほかマックの使用者が少なかったのは意外だった。

 映画も半ばあたりで、筆者は早速感化され、自宅に眠っている’60sオールディスや英国リバプール中心のマージーサウンド辺りのコレクターズアイテムLPレコードのジャケット画像などのアーカイブをまとめようと思った。これはたった4000枚とはいえ、一仕事だ。

 今年の秋辺りから部屋を片付け簡単なスタジオ装置を用意して接写し、パソコンにデジタル画像をまとめれば済む話だ。

 団塊世代の生きた証として、自分が撮影した画像(野鳥・スポーツなど)の整理と共に今はもう無いLPレコードのジャケットデザインの歴史を残して置いても良いだろうと思った次第。そういう意欲がわいただけでも、この映画の持つ力は大きいような気がした。

 中盤で、図書館の建築家女性が「図書館は単に本をしまっておく所じゃない」と言ってたが、日本の図書館で誇りをもってその役割・公共性を認じている人がどれ程いるだろう?一人もいないかも。
 国会図書館のように「館内では写真撮影禁止です!」と言っているようでは、日本の図書館は100年遅れていると思ってよいだろう。日本の図書館関係者全員がこの映画を観るべきだろう。

 本来この映画の製作理由、目的は、単なる映画芸術作品を残すためではなく、この図書館の年間予算の結構大きな部分を占めている一般からのスポンサー・寄付などをより多く集めるためのモノだろうとは思う。
 日本の各地方で既存の観光活性化案と議会で決められた年間予算にだけ頼って運営・経営企画を進めている自治体・行政の方々に是非見て欲しい作品でもある。これを観て何も刺激を受けなければ、アナタは公共活動には向いていない。

 筆者のヤマセミの写真集をぜひ置かせてほしいと言われ直接お届けした、佐賀の武雄市立図書館などのように知恵を働かせ工夫しているユニークな所も徐々に増えてきているが、地域のコミュニティの中心的存在になり得る「図書館」の役割、考えさせられた映画だった。
 
 比較になどならないだろうが、近いうち日比谷図書館が閉鎖され、広尾の有栖川公園に移った東京都立図書館に行ってみようと思う。
 

恵比寿ガーデンシネマはなかなか居心地が良いハイソな映画館だ。(画像は合成)



此の5th Ave.と6th Ave.に挟まれたニューヨーク公共図書館は、1987年日本のオンワード樫山がトラッドの名門J Pressを買った際に依頼されたブローシャー制作で渡米した際に2度ほど訪れた記憶がある。

 もちろん今回の映画のように全てを見て回ったわけではなかったが、その際西側にあるブライアント公園の出店カフェの珈琲でくつろいだ気持ちの良さは今でも覚えている。

 しかし、今回この映画に出てきた公園側の樹木の幹が奇麗にそろって公園側にカーブして生えてるのとか、緑のテントのカフェが気になった。いつからこうなったのだろう?1987年当時はこんなに奇麗な公園ではなかった記憶があるのだが・・・。

恵比寿ガーデンシネマのトイレやカフェはなかなかお洒落。女性客が多い訳が判る。


此処のファンの年齢層には非常に幅があるようだ。


並んで貼られたポスターの映画にも興味をそそられた。映画は良いものだ。