2021年2月14日日曜日

今回の森喜朗辞任騒動で語られない深層部分に存在する3つのポイント。その2. Yoshiro Mori's resignation Three points that exist in the deep part that can not be talked about in the uproar. Vol.2

  昨夜の地震には驚いた。ちょうど10年前の3.11の際には山口県のイベント予定会場に居てまるで判らず、災害を知ったのは3時間後の夕方だった。翌日の九州新幹線全然開通祝典出席の為博多へ向かう所だったが、祝典取りやめにより鳥栖駅まで車で送ってもらい、在来線の特急つばめの最終で熊本まで移動宿泊し、翌日の九州新幹線初日のツバメで博多に移動と言う奇遇な体験をした。

 大きな被害がない事と、続いて余震が起きないことを祈るばかりだ。

昨夜の地震時の恵比寿から品川駅・羽田方向の画像だそうだ。知人撮影。

 話は「森喜朗騒動」の続編。

 前回はいわゆる競技スポーツ経験者と、そうでない非スポーツ派の人々の価値観の違い、一般常識の違いを述べたが、同じ競技スポーツのテリトリーで世界中の女性アスリートたちは何を考えているだろう?これに対しては筆者が非常に近い環境を体験しているので此処でご紹介しておきたい。今から15年前の話なので女性スポーツ界の環境は既に大きく変わってしまっているかもしれない。その場合はご容赦願いたい。

 「2006年世界女性スポーツ会議くまもと」というイベントが、今から5年前の5月に我が国の熊本県熊本市で開催された。筆者はその運営プロデュースに関して担当広告代理店のプロデューサーとしての立場で外注スタッフを編成して全面的に裏方を支援担当した。

 これは世界各国のナショナル・オリンピック・コミッティの女性メンバーTOPが集まった勉強会のようなもので、参加者には多くの元オリンピック各国代表選手、メダリストが含まれていた。

 世界の女性アスリートのトップ的存在である彼女たちが、その時点で「女性スポーツの現状と今後」に関して意見交換を行うもので、熊本県と熊本市が主催者兼スポンサーとなって県民・市民の税金を使った大イベントだった。時の熊本県知事が潮谷義子さんだったので実現したようなものだ。

 しかし、今回の森喜朗氏の「女性蔑視発言」「女性蔑視思想」などを問題にするような動きは、決してこの15年前の国際会議ではなかったことを報告しておきたい。メディアも非公開の会議で笑いを取ろうと思って茶化した発言を聴きつけ、良く本人の意図も聴かず意図的にチックって大問題に発展させるような卑怯なことはしなかった時代なのだろう。ましてやSNSなどはそれほど普及しておらず、情報拡散のスピードもまだ原始的な頃だった。

 逆にこの国際会議の現場で知り得る限り、森喜朗氏が言うような「女性は話が長い」だの「競争心が強く、一人が手を上げると我も我も‥と手を上げて発言しなければと思うんでしょうね?」などと言う事は一切なかったことも付け加えておきたい。

 むしろ、傘下の女性たちは消極的すぎて会議が進まない事の方が遥かに多かった。女性アスリートって15年間で豹変してしまったのだろうか?

 地元の女性アスリートや体育の先生・市民スポーツ関連の方々が出席した国内の準備会議などにも幾度かオブザーバー参加で出席させてもらったが、手を挙げる人がほとんど出ず、会議自体が進まず同席していてイライラしたほどだった。余程「貴女方自身の問題なのだからもっと積極的に意見を言った方が良い・・。」と何度言いたかったか。

 しかし、出席者に順番制で発言を促すと、必ずと言って良い程「このようなレベルの高い会議に私の様なものが同席させて頂くのは大変おこがましいのですが・・。」などと言い、会議が上手く成功して欲しいと願っております・・的な、まったく具体的な内容の何一つ無い挨拶ばかりで驚いてしまったのをよく覚えている。

 当時は「日本の女子バスケットボール協会には理事が男性しかおらず、女性が一人もいない・・。」などと会議のリーダーが嘆いていたが、じゃあ自分たちでどうしよう、どうすれば女性理事を誕生させることが出来ようか?などと言う討論・議論はほとんど無く、現状を嘆くだけだった。

 この大会進行の中心的人物は現・順天堂大学の女性スポーツ研究センターに居る小笠原悦子氏で、スー・ニール氏という女性スポーツ界においては世界的人物と共同でプロデュースしていると言う事になっていた。

 他に英国人のアニタ・ブライト氏がコーディネーターとして参加していたが、この3名の打ち合わせは東京で行えば済むところ南阿蘇の高級温泉旅館まで官費で出張・豪遊しマッサージ料金まで市や県に請求するという、ノーテンキな幹部たちだったことも付け加えておきたい。

 これは大会費用の日々変わる収支管理を筆者が行っていて、使途不明金には詳しく調査し、追及の手を緩めなかったのでよく覚えている。何故なら多方面からの補助金や熊本県民、熊本市民の血税で行われているため監査が非常に厳しかったのだ。自治体の予算管理をお手伝いしたのは非常に良い経験となった。

 市役所の担当責任者と大会終了後、補助金申請の為、清算業務を行ったのだが丸1か月以上も掛かったのでよく覚えている。

 またある時は昨日のブログに在る通りアスリート独特の優越感的な特権意識の裏返しなのか、市役所・県職員との合同直前打ち合わせでモメタ時「私はアンタたち職員なんかとは違うんだからネッ!」と発言してしまい、女子職員を数名その場で悔し泣きさせてしまうというとんでもない事件も起こしている。英国人のアニタには後でこの件をじっくりと説明したが、相当に驚いていた。

 

実施運営マニュアル。この編集に数か月掛かっている。

会議目的の中に女性蔑視にどう立ち向かうかだの、男女同権などに関するテーマは無い。

下位にセクハラやDVの件はあるが、女性蔑視だの男女同権云々テーマは無い。

 報告書にも森喜朗氏の様な男性から女性蔑視や偏見を受ける事への危機感は無い。これらから判断するに、森喜朗氏のような考え方が男性の多くに存在するという気配は、この時点ではまずなかった。要は彼個人的な資質の問題だろうと思う。

女性知事の潮谷義子氏が開会宣言を行った。

 高円宮久子妃殿下の基調講演は参加者全員がスタンディングオベーションで称えたほど素晴らしいクイーンズ・イングリッシュで、英国人のアニタ・ブライト氏は「内容はもちろん素晴らしいし私よりはるかに正統派の英語だ!」と驚嘆していた。

メイン会場でのディスカッションには故・木原美知子さん(筆者と同い年)も壇上でパネリストとして参加していた。

故・木原美知子氏の中身の濃いプレゼンテーション。

質問は人種や宗教の壁を越えて全世界の参加者から出ていた。

 開会式のフィナーレは参加者が踊り出す勢いだった。さんざん準備期間中意見を戦わせたディレクターのアニタ・ブライト氏が傍へ寄ってきて「タフなシンジョーさん!どうよ、此の女性たちの勢いを見て?」と誇ったように言うので、こう答えてあげた。「I think they are very Charming!」