2020年8月23日日曜日

続・今回の豪雨災害人吉市の復興は人吉市単独で考えても無理だと思う。 It would be impossible reborn alone Hitoyoshi city from this heavy rain disaster. VOL2.

  昨日の投稿で、まだ専門家の今回豪雨災害のデータ検証・分析も終わっていないのに、川辺川ダムが在ったら~という事も視野に入れた政治家中心の会議が始まることを憂えたが、何と筆者の考え方を後押ししてくれる治水専門家の大御所のレポートを昨日の投稿数時間後に発見した。

 球磨川流域の今後を考える全ての方は、まずこの専門家の指摘するレポートをよく読んでいただきたい。数値データを駆使し、証拠を上げながら解り易い解説をしている。今回の豪雨災害に関しての国土交通省・熊本県・各自治体、などのデータ分析結果とどのように違うのだろう?是非早く比較したいものだ。

https://www.nacsj.or.jp/2020/07/21000/?fbclid=IwAR1lFYhQoXzquSs5ySXA7b7wnoj30a3KlKo8UM7d2SRvZVOmq8N-QAYn4-I

 もし、川辺川ダムが在ったなら防げたかも・・などと、データも検証せず、専門家の意見も書かずに思う政治家や行政関係の方々は是非このレポートを知っておくべきだと思う。

 これを読んでもなお「川辺川ダムを造るべきだ」と言い張るのであれば、造った後に今回のような豪雨災害が再び起きた際は当然提唱者・賛同者は責任を取らねばならない。3.11の東日本大震災の時の福島原発の東電幹部のように「想定外だから仕方がない」とはもう言えない事を肝に銘ずるべきと考える。ネット時代の今、すべてのネット記事・発言は記録が残るから逃れられない。

 特に以下は、この新潟大学名誉教授の大熊孝先生のデータ分析後の今後の球磨川治水に関する考え方だ。非常に納得する内容だったし、京都の桂離宮の高床式の話もご存じだった。具体的で非常に重要な事をたくさん述べられている。素人の筆者がこのブログでレポート・提案したようなことに非常に近い内容もあった。

8月15日付の筆者のブログはこちら

http://yamasemiweb.blogspot.com/2020/08/7-3verify-kuma-river-july-heavy-rain.html



 「4.今後の球磨川治水のあり方について

今回の洪水では、人吉の青井阿蘇神社(国宝)の楼門や拝殿が1.5mほども水没している。1200年の歴史を持つ同神社の記録に、そのような浸水記録はないとのことである。今回の洪水位は過去最大といって過言でない。今回の災害は、「本家の災害・分家の災害」の概念から見るといわば「天災」である。

しかし、世界的な豪雨の頻発から見ると地球温暖化による「人災」というべきであろう。このような時にこそ、巨額の費用で建設されるダムには役立って欲しいと考えるが、上記で見たようにほとんど水害軽減には役立たなかった。

さらに、今後、地球温暖化の加速より今回を超える豪雨は頻繁に起こると考えていい。今回、市房ダムは「緊急放流」が検討されたが、何とか回避できた。今回は豪雨の後12日間継続(7/15現在)の長雨となったが、これが逆であったのなら、「緊急放流」は免れなかったであろう。今後、計画を超える豪雨によってダムの「緊急放流」が頻発する可能性が高い。その観点からもダムに依存する治水計画は基本的にやめた方がいいと考える。

それでは、このような大洪水にはどのように対処すればいいのであろうか?氾濫危険地域に人が住まないことが究極の水害対策といえるが、今後の人口減少を想定しても、その実現は無理であろう。結局は、氾濫地域に人は住み続け、大洪水には避難し、被害を最小限に押さえる以外に方法はないと考える。

人吉の河道流下能力を河床掘削により現況より高める必要はあると考える。しかし、下流に狭窄部があり、谷合には多くの集落があるので、それには限界があり、河道から洪水が溢れることを前提とせざるを得ない。

その場合、両岸に水害防備林を造成し、氾濫流の水勢を弱め、土砂をろ過する方法が次善の策であると考える。その上で、建物を耐水化するしかないと考える。

京都の桂川右岸にある、桂離宮は洪水が溢れることを前提として、水勢を弱め、土砂をろ過する「笹垣」と呼ばれる水害防備林を造成し、書院は高床式にしてある。それによって、400年を経ても建物と庭園の美は維持されてきている。

球磨川においても、少なくとも200~300年のスパンで持続可能な治水策を考えるべきである。200~300年のスパンで治水を考えるならば、ダムは必ずや土砂で満杯となり、治水容量はゼロに帰す。また、ダムは川の物質循環を遮断し、川の生態系を破壊する。治水の手段としてダムは選択肢から外すしかないと考える。

なお、水害防備林については、すでに1997年改正の河川法第3条で「樹林帯」として位置づけられている。この20数年間で、樹林帯を治水計画の中に取り入れた河川はない。むしろ水害防備林の伐採が進んでいる。写真2は、川辺川にあった水害防備林が2019年「国土強靭化」という名目で伐採され、今回の洪水で被害が拡大している状況を示している。

今後の人口減少の中で、川沿いに土地を確保して、水害防備林を造成していくことこそ治水の根本でないかと考えている。なお、遊水地を設けることも一つの治水策であると考えるが、今回の洪水では水田地帯を中心に至る所で氾濫しており、実質遊水地の機能を果たしていた。この水田地帯を治水的に遊水地に位置付ける場合、その治水効果を吟味し、農業の持続可能性を考慮しながら、慎重に検討する必要があろう。」


※ 果たして、この専門家の名誉教授の説明に具体的数値や証拠を合わせて反論できる方がおられるだろうか?

 具体的な数値や証拠を元に川辺川ダムが在ったれば今回の豪雨災害は防げた⇒だからやはり川辺川ダムを建造推進するのだと言わねば、単なる建造売り上げ=利益機会の獲得・建造ビジネスを得られるというダム建造経済活性化願望に過ぎないという事になろう。

 長年治水・水害を研究されてきた専門家の名誉教授の見立てが以上だ。これ以上の判り易い解説を今回まだどこにも発見できていない。

 どうだろう?この部分だけでも説得力は大きいと感ずる。筆者のような素人が考えた事と同様な内容も数か所あり頷きながら幾度も読み返した。さすが理路整然とした説明解説素晴らしいと感じた。皆さんは如何だろう?                     

                                   この項続く