2020年8月11日火曜日

球磨川7月豪雨災害の検証 その2.Verify the Kuma river July heavy rain disaster. vol.2.

  今年の甲子園、全国高校野球大会大会が中止で、それの代替え大会が行われている様だが、初戦から闘って負けたチームの選手が試合後泣いていた。何で高校野球の選手って負けるとすぐに泣くのだろう?決勝戦でもないのに。また何故メディアはそれを青春だとか言って美しい事のように報道するのだろう?昔から不思議でならなかった。

 サッカーの全国高校選手権大会で負けたチームの選手が泣いたりするのを観たことが無い。何故野球やラグビーって大の男がすぐ涙するのだ?普段は見えない所で酒飲んで悪さしたり女子にヤンチャして捕まり、出場停止になる学校が多いというのに・・・。メディアや高校野球ファンのオッサン達に甘やかされすぎていやしないか?

 今日TV観ていて久しぶりにそう思った。筆者は高校時代は弱いバレーボール部だったが、横浜の大学でサッカーをやり神奈川県知事杯で東芝と引き分け同時優勝した。その結果1971年の和歌山国体の神奈川県代表権を手にするほどだったが、負けても泣いたことなど一度もなかった。野球やラグビーの選手ってなぜすぐ泣くのだ?筆者にとっては永遠の謎。

 

 で、今日は一昨日の続きで、球磨川7月豪雨災害の検証、その2.

 このブログでも筆者が人吉市にご縁が深いので、あの7月4日当日から暫くはこの球磨川の惨状に関して幾度かネット情報やTV報道、新聞情報を頼りにリアルタイムレポートした。

 その中で、今更ダムが在ったからと言ってとても防げる事ではなかったと思う・・と書いたのを観て「貴方はダム反対派なのか?ダムにメリットは無いと言い切れるのか?」などとご意見を頂いた。

 断わっておくが、筆者はダム賛成派でも反対派でもない。それは土建屋・建設業関係者はダムを造るとなれば「仕事=お金」になるから賛成するだろう。一方で自然保護団体は自然保護活動がメディアに注目されるから、詳しい事はそっちのけで自然界に人工物を作り自然破壊する事には何でも宗教的に反対するだろう。1980年代後半に長良川河口堰の問題、長野オリンピック男子滑降スタート地点問題、白神山地ブナ林保全の3本の問題を掲げていた頃、大変勉強させてもらった。当時は大手広告代理店に居たのでメディアの中枢から裏情報を随分頂いて世の中の仕組みを学ばせて頂いた。

 確かに筆者が観察研究している山翡翠=ヤマセミの生態に関して言えば、ダムが出来て下流部で水量が減り獲物の鮎や魚類が減ることで、そのエリアでは個体数が減るかもしれない。

 上流にダムが出来れば、静岡県の天竜川や大井川のように下流部は砂利の川原が広々と広がるだけだ。川辺川ダムがもし出来ていたなら、球磨川の水量は激減し人吉市内の球磨川も砂利河原になり球磨川下りはおろかラフティングも営業できず、ヤマセミも激減して球磨川は観光価値がなくなるだろう。伝統の河川産業アユ漁や八代河口部の青海苔も絶滅するに違いない。

 しかし、だからと言ってそれを盾に単なるダム反対・・を軽々しく唱えたりもしない。ヤマセミはより住みやすい所に移動するだけだろう?水力発電所は原発が出来るよりは、はるかに良いとの見方もあるだろうし、灌漑用水で農作物が安定してできる利点もあるだろう。

 球磨川に関しては強い若い川なのでダム数個で治水などあり得ない話だが、日本国内全体を見れば各地各河川ケースバイケースなので、白か黒かという物言いはしないし、そんなに一律簡単に判断出来るものではない。

 しかし、政治団体やマスコミ・メディアは本質とは外れたところで、こういう二者択一の案件を争うスタイルが好きなのだ。しかも利権が絡むのでその酷さは呆れるほどだ。今回の球磨川災害でも合併するに名称すら決められない者達の集まりである二つの民主党系が「川辺川ダムが在ったら防げたのでは?」などというバカな事を良く調べもせずに言ったりする。

 ともすると、それを見込んだメディア・マスコミがネタにしようと、まだ被災のショックでボー然としている被災者に向かってマイクを突き付け「もし川辺川ダムが在ったら・・どうですか?」などとしつこく訊いたという。なんとメディアの質が落ちた事だろう。こんなインタビューをするバカ記者が地元熊本のメディアでは無い事を祈るばかりだ。

 この引用させて頂いたFacebookの「つる祥子さん」は八代にお住まいで球磨川の自然環境に関する熱心なオーソリティだ。駅前のミック珈琲店の出水マスターにご紹介頂いて一度お会いした事がある。球磨川のスーパー堤防の話で・・。人吉旅館は過去7~8泊している。昭和レトロの色々なものがロビーに展示されていて、古き良き旅館の匂いと佇まいで素晴らしい旅館だ。日本式旅館でありながら早くからネット回線が在って2010年から暫くは良くお世話になった。一刻も早い復旧を祈りたい。

 メディアの酷さの話は筆者が必死になって述べずとも、心ある識者の殆どがそう思っているので、それぞれに情報発信されているからネットで探して頂きたい。別に橋下徹氏や池上彰氏ほどの鋭さでなくても、酷いメディアへの「ご意見番」は沢山居よう?

 でだ、今回の球磨川洪水を単に球磨川本流だけでダムだの堤防だの言っても防げる訳が無かった事をまず知ってほしい。過去から球磨川は大洪水を繰り返してきた。その都度犠牲者が出たり、家屋の流失、床上浸水、田畑の水没・農作物被害は繰り返してきている。

 しかし本流支流合わせて10本以上の強固な橋が流失・破壊されたのは今回が初めてだ。明治41年アメリカ製で出来た肥薩線球磨川第1橋梁の流失は完成以降今回ほどの洪水が無かったことを意味している。この明治41年に八代ー人吉間の鉄道が開通している。鹿児島に行くに今の肥薩線(=当時の名称は鹿児島本線・明治42年全線開通)が大動脈だった訳だ。

 今の肥薩オレンジ鉄道(旧鹿児島本線)が開通したのは、何と昭和2年10月の事だ。したがって今年に至るまで球磨川に此処まで大きな水害は無かった事を表している。

 此処で思い起こすと平成27年関東東北豪雨、平成30年西日本豪雨辺りから「線状降水帯」という言葉による豪雨災害が気象庁⇒メディアで一般に認知され始めたように思う。昨年の長野の千曲川洪水も同じような現象だったと記憶している。1996年頃から幾度も長野オリンピック準備で走った堤防道路が決壊したのでよく覚えている。

 しかし、この頃はまだ線状降雨帯というそう広くないエリアへの集中豪雨だったのだが、今回は線状というより帯状降雨帯が熊本県南部に集中したと思っている。広島の毛利の殿様の話ではないが、線状降雨帯が三本まとまって、幅広でいくつも襲ってきたと言って良い。


 それを表しているネット情報(=証拠)がいくつも存在する。

                             日本気象協会資料より

日本気象協会の今回7月熊本豪雨の降雨量のグラフ。球磨川水系に幾つのダムが在ったとしてもダムの上流部にだけ雨が降った訳ではないので洪水は防げなかった事をよく表していると思う。

                    同じく日本気象協会のネットデータから。

これだけの線状降水帯がたったの24時間内に熊本県南部~鹿児島県北部に集中したのだ。

この地図は「川の名前を調べる地図」というサイトの球磨川水系の全河川から作成した。

 この球磨川水系に今回の線状(帯状)降雨帯の一部を幾つか落とし込むと、その広域さが判る。2018年の広島のケースや2015年の宇都宮のケースとはその規模が違う事が良く判る。たとえ黄色い線で表した川辺川の中ほどに川辺川ダムが在ったとしても、そのダム上流部に降った降水量より球磨川本流の南側や球磨村など球磨川全域で降った量の方がはるかに多い事が良く判ろう?これらは今後河川学や洪水の専門の方々が検証すれば、もっと正確なことが判るはずだ。
 
 今回の集中豪雨はこの血管のように全域を覆っている水系全て多量の降雨があったため、太い色線で示した球磨川(赤)川辺川(黄)万江川(青)胸川(茶)など主要な河川のみならず、それぞれに流れ込む細かい支流部全域で物理的限界を超えた降雨量があったのだ。近年のこうした傾向は今後もより酷くなると思われる。もう想定外・・という言い訳で逃れる訳にはいかない大きな地球環境の変更点に差し掛かっていると思って良いだろう。

 是非ともこのあたり専門家の方々の早急な結論と次への方策を聞いてみたい。この先、台風シーズンには同じような事が起きる可能性が非常に高いのだ。

 一例を上げれば、人吉市の東に位置する石野公園の横を流れる鳩胸川。人吉市上水道の水源でもあるこの鳩胸川にもヤマセミが生息していて筆者は数十回このエリアを探索撮影している。その際幾度も通過している麓橋が流失した。この麓橋は結構奥まった場所なので球磨川の南側・白髪岳の方面でも相当・大量の降雨があったことを示している。市房ダムや計画のあった川辺川ダムがもし在ったとしても、場所が違い全然洪水を防げる事にならなかったのだ。

 このように、球磨川水系の治水を「ダムさえ在れば・・」と思うのは、このエリアで降る降水量全体(すべて球磨川水系へ流れ込む)とダム(市房ダムとあったとしての川辺川ダム)が貯められる水量の桁を理解できない算数の出来ない人が発想する事だ。繰り返すが雨は決してダムの上流だけで降る訳ではない。治水のプロの方は早くこれらを無知なメディア関係者に教えるべきだろう。

 こういうことを調べもせずに、もし川辺川ダムが在ったらば、だのダムによる治水じゃなきゃやっぱり駄目だ・・などというバカな話がまかり通る様では、球磨川流域の100年先は真っ暗だ。特にマスコミ・メディアの記者は勉強した方が良い、恥をかくことになる。

 じゃ、この先どうすればいいのだ?という事に関しては大きな話(国や行政の成すべき事)と個人のレベルで出来ることなど色々あると思われる。これはまた少しして・・。