2020年10月11日日曜日

緊急投稿!新・肥薩線の復旧を考える。その5.(所詮無理な治水を考えず川の氾濫を受け入れる!)) Consider restoration of the New Hisatsu Line. Vol 5. (Accept the flooding of the river without thinking about unreasonable hydraulic control.!)

  筆者は何度でも言いたい。地球環境がこれだけ激変して、もはや人間の手で自然をコントロール出来無くなっている時代が来たのだ。

 この事を認識・理解しようとせず、「治水=水を治める」などという人間の驕りでこの先も行けると思い込んでいる人のなんと多い事か?

「人間の知能と技術をもってすれば治水は完璧に出来る」という従来の考えを捨てて、あえて氾濫・洪水と共存する生き方を考えるべき時期に差し掛かっているのではないだろうか?

 人吉・球磨の今回床上浸水したエリアは、過去においても何度も同じような水害に遭って来た場所だ。

7月4日当日のメディア空撮画像に注釈を挿入。

 これだけ洪水災害を繰り返してきた人吉市が7年間、市の洪水ハザードマップをじっくりと見直して来なかった事が大変悔やまれる。

 今回の災害は、其処に住んで生活をしている人々も自分達の身を切る防災の工夫・努力なしに、国や県など行政のダムを造るか・造らないで行う治水で行くかの論争に頼り切り、他人任せで各個人で行う自然の防災対策を疎かにした要因も一部に多少あるのではないだろうか?

 前にも述べたが、大きな高潮被害、洪水被害に実際は殆ど遭遇していない首都東京の海抜ゼロメート利地帯ですら、各区(数十万人規模)ごとに詳しいハザードマップが用意され、小中学生でも読めばわかる書き方で避難方法や普段の心構えが書かれている。

 現在Yahooでも日頃ハザードマップを確認していますかというアンケートを実施しているが、首都圏のみならず全国展開でも「確認している」と回答している人が68%ほどいる。今回人吉球磨エリアで確認していた人は一体どれだけいただろう?

 首都圏東京では避難訓練も9月1日の防災の日に限らず、首都直下型地震に備えて普段から頻繁に行われているというのに、人吉球磨では豪雨増水には慣れっこになっているが故、あまり行われてはいなかったのではないだろうか?この場合セレモニーとしてではなく、ほとんどの住民が参加しての訓練を言う。

 住民も防災関係者もダム管理者も「まあ、今回も今まで通り収まるだろう?」くらいにオオカミ少年の寓話同然、あまり危機感を持たずにダムの事前放流も事前非難も用意周到に行わなかったのだろうか?残念な事だ。

 多くの犠牲者が出てしまった渡の千寿園にしても洪水ハザードマップとの関連はどうだったのだろう?非常に気になる所だ。

肥薩線車内から撮影した渡の千寿園、左奥。

 長年住んでいるから大丈夫だろう?の一言で済ませてしまう防災上非常に危険な場所に住んでいる人々は、いつの間にかその場所に住むリスクの怖さを忘れてしまう。

 筆者も「慣れてしまう怖さ」に関しては幾度か実体験している。1990年頃ウインドサーフィンのイベント実施運営でハワイのマウイ島へ数十回出張し、滞在費を節約するためスタッフともども一軒家を借りて1か月なり滞在することが多かった。観光地のホノルルなどとは違い4~5マイル先まで店など一軒もない海に近い平屋だ。

 ベッドルームが5つも6つもあるような貸し一軒家なのだが、カフルイ空港の滑走路の延長線上に近いビーチ際に在ったその家は、最初の2日間はジェット機の離発着時には轟音で何も聞こえないストレスで「絶対明日は別の家へ引っ越そう!」と思ったものだ。

 しかし、人間の順応性は恐ろしいもので3日目にはすっかり体も耳も慣れてしまって、轟音が平気になってしまった。それ以降は出張の旅初日から全然違和感もなく「そういうものだ」と気にしないで寝泊まり出来たのだ。「慣れ」とは恐ろしいものだ。動物園で飼育係が飼い馴らしたつもりの猛獣にやられてしまうのも、動物写真家が勝手知ったる野生の動物に襲われて命を落とすのも皆このパターンに近いのではないだろうか?

 防災上実は非常に危険な場所に住んでいる人々、火山の火口付近(北海道洞爺湖温泉、阿蘇山火口原、湯布院温泉、雲仙温泉など火山の火口から数キロに在る温泉集落。伊豆諸島、大島、三宅島、八丈島、利島など火山島に住んでいる人々。活火山の傍の大都市、鹿児島市。活断層上にある都市、熊本市、東京都など。過去大水害に幾度も遭遇している都市・人吉市、名古屋・岐阜の輪中集落、広島の新興住宅地、利根川、多摩川の土手沿いなどなど。

 防災に関しては国や県・都がどうにかしてくれようと思う前に、各自が身の危険をどう排除し大自然の脅威とどう立ち向かうか、まず普段から真剣に考えておくべきだろうと思う。


 決して単純に考えている訳ではないが、もし川辺川ダムを建設するとなるとネット上の最新情報では当初の数倍、3000億円以上のお金が掛かるという情報もある。原資は税金だ。

http://kawabegawa.jp/zougaku/futanritsu.html

 しかし、例えば今回洪水で床上浸水に成った5500軒余りの球磨川流域住宅を、今回最高水位以上の総3階建てに改築する費用は幾ら掛かるのだ?

 一軒2000万円掛けるとしても1000億円強もあれば済むのではないのか? ダム建設と住居かさ上げ・・、どちらを先に行うべきなのだろう?そうしてどちらのコストパフォーマンスが良いのだろう?

 更にはどうしてそういう声が何処からも上がらないのだろう?洪水に見舞われた農耕地の復興費用にしてもダム建設費用に比べればはるかに安いだろう?

 今回、球磨川豪雨災害直後同じように洪水に見舞われた山形県の最上川流域は40年前の大洪水後、河川近くの住宅は自費(補助金が出たかもしれないが)で皆かさ上げを行って今回の洪水時にけが人も出ず、被害は免れている。人吉球磨の人々は先人たちの知恵を活用する努力はしないのだろうか?他地域の成功例を学ばないのだろうか?

 もちろん国庫の補助が出る場合でも、ダム建設とはお金の出所の省庁が違うし、簡単計算は出来まいが人の命を守る意味で、人吉市、球磨村の存続を考えた時、何が一番即効性に富みコストパフォーマンスが高いか、良く考えるべきではないだろうか?役所も民間もダムに頼るVs頼らないで争っている場合だろうか?

 今や洪水は世界中どこでも起こり得る仕方がない地球環境・大自然の定め。住んでいる場所の自然環境が悪い方へ変わってしまったのだから、その中で生きていくには人間の方から高台に移住するか、自宅をかさ上げするか・・川の氾濫を上手く安全にやり過ごす「共存」の道を考える時期ではないのだろうか?次世代の者たちへの負の遺産を残すことを思えば、該当者の方々は今こそ勇気と決断が必要な気もする。

 洪水ハザードマップの最も危険度の高い所に、周りの注意・忠告を聞かず今まで通りの高さの住宅を建てて、今回のような豪雨災害に再び遭遇し住居が倒壊した場合などは保険が下りない、あるいは援助を後回しにするなど、官民一体に成った厳しい防災対策条例を施行するのも手だろうと思う。

 そうでなければ何のためのハザードマップだか判らない。行政は建築業者へ厳しいハザードマップの立地条件と照らし合わせて、請負建築の安全基準順守などを義務付けるべきだと思うが如何?


 もしダムを造るとなった場合、完成までに何年かかる?その間今年と同じ豪雨が襲った場合どうするのだ?

 なおかつ今回のデータが示す通り川辺川ダムが在ったとしても洪水は防げなかったという多くの専門家の見立てを考えた時、造っても造らなくても洪水が起きるのであれば、何故必死に造ろうとするのだろう?なぜ流域住民も頼ろうとするのだろう?

 逆にダムが出来た場合は、「さあダムが出来たからもう安心だ」とばかり、豪雨洪水への心構えや対策がおろそかになるのは目に見えている、これは住民たちにとってみれば当たり前の事だろう。しかし本当にそれで安心して良いのだろうか?

 くり返すが今回のようにダムがその効力を発揮できないエリアで集中豪雨があって今回と同じような洪水被害が出た場合、ダムを造れと声高に叫んだ人達はどう言い訳するのだろう。

 この辺り、地元の行政マンや政治家・首長さんたち、更にはメディアの方々はどう考えているのだろう?ぜひ知りたいものだ。