2016年1月3日日曜日

団塊世代の撮影者・本人にしか判らない「老い」との付き合い方 最終回.「いきがい」 How to deal with the "old" not only to the baby-boomer generation, Part7.

 1996年だったか、マガジンハウスのターザンの取材でアメリカ・オレゴン州のフッドリバーにいった事があった。マガジンハウスの取材スタッフ全員は奥地のユージーンというスポーツシューズで有名なNIKE(=ナイキ)の本社が在る都市へ行ってしまい、一人でフッドリバーに残された事があった。たまたま取材でお世話になったFoodriver Windsurfingのオーナー、ダグ・キャンベルのディナー・パーティに招待された。ダグを含めて集まった6名は皆団塊世代の1948年生まれだった。

 そこで深夜1時半まで語り合った話の中心は「生き甲斐」についてだった。当時50歳前の自分は、まだ日本人の友達とすら「生き甲斐」などに関して一度も話し合ったことも無かったのに、乏しい英語会話力でそんな重たい話をするとは今思い返しても冷や汗ものだ。

 しかし、人生50歳前に「生き甲斐」に関してきちんと自分の意見や計画を持っている彼らに大変驚き、感化されたのも確かだった。皆の話は決して宗教的なものではなかった。現実的に、仕事、収入、健康、家族、財産、そうして「生きている証として何をこの世に残すか」だった。それまで、あまり西洋人・アメリカ人を身近に感じたことは無かったが、この時は図体はでかくて、東洋人種よりはるかに早く老け顔になる西洋人のクセして、その頭の中は日本で筆者の周りにいる団塊世代よりはるかに真面目で計画性に富み、真剣に生きている事が判った。

 まず、テレビを観る事が殆ど無い。モノを余り買わない。人より早くお金をためて、早く仕事をリタイヤして自由な時間を使える『老後』に入りたい・・・と言うのだ。随分日本の常識と違うと思った。日本でこれを実践すると間違いなくこう言われる「あいつは変わり者!」

 で、何故?と訊くとほぼ全員が言った「自分には自分にしか出来ないやるべき事を決めているからだ」、そうして逆に訊かれた「お前には無いのか?」虚を衝かれて即座には答えられなかった。

 定年退職した後もどこかの会社に入って、いつまでも現役でどこかに勤めている・・等というのは彼らからするとWorking poorだそうだ。現役で働いている時の目的は会社への為ではなく、出世競争で優越感を感じる為でもなく、あくまで高収入を得る事に徹しているそうだ。「会社のため」と言う言葉はついに聞かなかった。全て自分の為、収入の為で仕事と自分の生活はまったく別世界だと割り切っていた。それが彼らの常識だった。

 趣味を仕事にしたあのウォルト・ディズニーだとか、映画俳優などの芸能人とは違い、「仕事が好きで没頭し、家庭を顧みず・・・」などという生き方は彼らに言わせると「非常識」だそうだ。アメリカにはハッピー・リタイヤ(=Happy retirement)という言葉が有るが、「=定年以前に豊かな老後資金を確保して悠々自適の引退生活に入ること。」という意味だ。浅田次郎も本を書いているが日本の官僚の天下り小説らしいので読んでも本来の意味は判らないだろう。

 結局、このオレゴン州のベビー・ブーマー(=団塊世代)の5時間に及ぶ日米座談会で得たものは非常に大きかった。いわば明治維新に欧米に留学した薩長の若者達に似たショックを受けたのは間違いない。相当影響されたと自分自身思う。自分が勤めていた大手広告代理店で2度3度有った早期優遇退職者募集に、目先の割り増し退職金に目がくらみ、次の当ても計画も無いまま退職しなかったのもこの時の経験・勉強があったからだった。

 しかし、夜も更け何の気なしにキャンベル家のリビングルームのガラス棚に映った室内の様子を見て、絶句してしまった。ガラスの向こうには紅毛碧眼の西洋人5人と一緒に髭面の日本人が何の違和感も無くワイワイやっているのだ。あの乏しい英語力は何処へ行ったのだ?神様が語学力をそのときだけ倍増させてくれたのだろうか。ジーン・ピットニーのルイジアナ・ママをギターを抱えて飯田久彦の日本語バージョンで歌った時の彼らの歓び様は今でも夢に出てくるほどだ。

 しかし、こうした自分にとっての人生の転機は早くもはるか20年も前になってしまった。

 まず、リタイヤ後に何をするか、何をしたいか(=自分の生き甲斐)を10年くらいかけて悩み考え、それを達成する為の貯蓄目標額を決め、そのために仕事に励むと言う10年以上かけた自分の生き様に対する考え方と実践は団塊の世代に限らず今の日本人には余り見られない生き様だと思った。

 永年仕事が生き甲斐・・・等と言いながら人生を送り、退職して心身共に真空状態になり、環境が変り自分への評価基準も変り、毎日やる事も無く、何をして良いかわからくなるのが日本のサラリーマンの退職後の姿ではないだろうか?
 カミサンの後についてスーパーの買い物にまでついて行くという元企業戦士こそ、今問題になっているボケ・認知症患者に一番近い候補生なのだ。この候補生は今後爆発的に増えると言う怖い予測もある。老後医療に関するNHK特集を見てみればそれが判ろう。

 「自分の生き甲斐は何でしょう?どうしたら良いでしょう?」って、これは人に訊く事ではない。団塊世代は今重要な曲がり角に来ているような気がする。自己防衛・自己認識でしかこれは解決できない。

 という事で、この年末年始シリーズは今日でおしまい。明日からはレギュラーの野鳥ブログに戻ろうと思う。

 今日の画像は昨日10kmランの途中、野川沿いで撮影した幾つかをご紹介。

暖冬異変で蝋梅も満開に近い

十月桜も昨年から開きっぱなし

水仙が早くも群生で満開に近い、水仙の名所伊豆の爪木崎じゃああるまいし、これは異常かも。

国分寺ハケ線の崖の上から富士山がくっきり!

今日も2日前とまったく同じ場所にいるカワセミ君

鳥が目的だろうか?大きなカメラを持った撮影者の後ろにダイサギ、カワセミ、コサギが・・。