2023年11月16日木曜日

エデン・プロジェクトの発想がなぜ英国で生まれたか?  Why was the idea for the Eden Project born in the UK?

  筆者は大手広告代理店時代、2005年・『愛・地球博(=愛知万博)』へ出展参加するコスモ石油の企画・実施を提案し、「植物の二酸化炭素吸収リアルタイム実験装置」の開発・製作・実験の一部始終に関わった。

 この活動の主軸はコスモ石油の当時の凄腕広報室長鴇田氏、植物に造詣の深い作曲家の神津善行先生、早稲田大学機械工学科の三輪敬之氏(現・名誉教授)ほか20名を超す早稲田大学・三輪研の大学院生諸君。

 筆者は最初の発想の段階から中枢で参加、試作品製造段階では大学の研究室に寝泊まりした。その後、愛知万博185日間運営管理、万博後の全国各自治体などの招聘により巡回展示を行った。

 東京で毎年行われるエコ・プロダクツ展、洞爺湖サミット時に札幌で行われた環境展などにも出展注目された。この愛知万博終了(2005年9月25日)後、11月2日に植物をドームで覆って育てるユニークな試みという科学雑誌の記事を見て、英国エデンプロジェクトを自費で訪れたのだった。

 で、そこで腰を抜かしたのが、そのエデンプロジェクトにどでかい似たような「植物の二酸化炭素吸収実験装置」が在った事。

 我々が作った実験装置とは違って、決してリアルタイムで実験(二酸化炭素が減っていく様子を赤外線センサーで測りリアルタイムでコンピューター表示)はできないのだが、植物が空気中の二酸化炭素を吸収してくれていることを説明する大きな実験装置だった。ディスプレイ上「発明時代」さながらのノーチラス号みたいなイメージの構造物だったが「考え方が同じ」という事で大感激したのを覚えている。

 18年ぶりのエデンプロジェクトは多少の建造物が増えてはいるものの、基本は全く変わっていない。時期も前回同様の11月なので、まるで数年前に来たような?的な雰囲気で宿舎のホテルの内装の変わり様とは雲泥の差だった。

The Carlyon Hotel(画面下部)から2005年はタクシーで移動したが、エデンプロジェクト(画面上部)までは歩いても2.5㎞程度。

 イングランド西部・コーンウォール地方は、昔から有数の露天掘りが可能な陶土産地だった。その陶土を掘った穴を利用して、斜面に沿ってペンタゴン(=五角形)+ヘキサゴン(=六角形)の透明樹脂によるエアーサンドウイッチ構造を組み合わせて造った半球形のドームを繋げた大空間に熱帯植物を育てているのがエデンプロジェクト。

 緯度が高く寒冷気候の英国人は自国では育たないトロピカル(=南洋)の植物に異常な憧れがあるそうだ。ロンドンのキューガーデン(大きな温室がいくつもある)が何よりの証拠。英国の刑事ドラマ「ヴェラ」「モース警部」「ルイス警部」「エンデヴァー」や探偵もの、事件モノに必ず得てくる金持ちの邸宅の温室を観ると良く理解できよう。

レストランもほとんど変わっていなかった。

敷地内のドーム以外は紅葉真っ盛り

 ドームに入ると植物臭というか、最初は少し頭が痛くなるような異臭がするが、そのうち慣れた。これが万博の2年後にエコプロダクツ展で実施した植物小屋実験装置につながる。この実験では女性はこの匂いが「いい匂い」と感じられ、男性は「臭くてたまらん」という結果につながって面白いデータが取れた。

左側の崖が陶土を掘った跡の壁

 この壁を利用して、斜面を登り球体の天井近くまで空中階段で行けば上から全体を見下ろせるのだが、ほとんどの人は怖くて登らないようだ。

 温度調整や湿度調整が完璧で「熱帯雨林」そのものを再現したため、伸び切った植物を剪定するのに、なんと一人乗りのガス気球を使って枝落としをしている。これもここでは一つの見世物になっている。

教育棟に在ったのが、この実験装置。2005年の時は2時間ほど居続けた。

明るくしたり暗くしたりで二酸化炭素を吸収している変化は見せていないが、

基本的な考え方は同じだが、植物は毎年変わるようだ。

 気温調整で自然の大気も状況に応じて入れ込むため、開口部からイングリッシュ・ロビン(=ヨーロッパコマドリ)が入ってきているのは昔も今も同じ。

 自分の実際行っている「研究・行動・制作」に重なるものを異国の旅先で見聞きするのはたまらない喜びを感ずる。人の話を聞いたり、人の作品に触れる、接し参加するのももちろん大切だし有意義なのだが、「当事者」になることの感動はそれらの数倍、あるいは数十倍強いと思う。ましてや旅行先ではなおさらの事。