ヤマセミの生態の中でも、特に繁殖シーズン一連の行動は他の野鳥たちのそれに比べ観察しやすいので、詳細まで理解できる点で非常に面白い。
最近の生物学界のニュースとして話題を集めた「本当のセミの寿命は種類によっては10日から1か月ほどある」という事実を高校生が突き止めたなど、今まで常識とされてきた「定説」が随分事実とは異なってることが多い事が判って来た。
自然観察の醍醐味の一部だろうか?ヤマセミの観察を10年続けて判った事の中にもそうした「新事実」が幾つか有る。
例えば長くて7~8年がその寿命だと「推定」され有名な図鑑にもそう記されて来たヤマセミの寿命。実は吉祥寺の自然文化園で、巣から落ちたヒナを保護して飼育されているヤマセミが13歳になってまだ元気いっぱい!という事実。伝書バトなど鳩の寿命に比べ、より体の大きなヤマセミ(実際はハトの1.5倍以上の体積)がそれより寿命が短い訳無いと筆者もこのブログで推定していたのが証明されて非常に嬉しかった。
縄張り争いの激しい闘いはオスだけが行い、メスは背後で見守る・・という観察データが、9年経過して初めて今シーズン、メス同士の争いを詳細な画像収録出来たことで打ち消された事。
更には、幼鳥が枯れ木の枝を自らくちばしで咥えて折り、獲物叩きの練習素材にする事実。(人吉市の辻先生撮影の画像アリ)、慣れた人間に向かって成鳥が水中から拾って来た小枝をくるくる回して見せる、しかも連続して違う枝を拾ってきて見せる・・・などなど。
他の野鳥もたぶんそうなのだろうが、ヤマセミの幼鳥は巣立ち後2週間も経たないうちに、誰に教わる訳でもなく水中に飛び込み、木の葉や小枝を拾って来ては咥え直し、硬い岩などに叩き付け、採餌後魚を完全に殺し骨を砕く練習を始める。
傍に親が付いている訳でもなく先に生まれた兄弟が見守る訳でもないのに、ある日20分程じーっと水面を見つめた後、チョコチョコ歩いて縁まで進みいきなり飛び込んで何かを咥えて来る。
こういったDNAに刷り込まれているのだろう、本能に導かれて自ら行い始める生態を観察すると、もう感動以外の何物でもない。
今日はそういった幼鳥の本能に導かれて自立を始める瞬間をご紹介。
最初はよちよち歩いてバランスを崩したりしているが・・・、
突然!水に飛び込んだかと思うと・・・、
黒い木の枝を咥えて戻って来る!
そうして、暫く加えた後、
放り上げて、
咥え直す。これを1時間ほど繰り返すのだ。
時には後ろを向いて咥え直し、
失敗して水中に落とすと、また飛び込んで持って来る。
これを観ているだけで、「何と観察しやすい野鳥なのだろう」と思わざるを得ない。人吉市の子供たちは日本で唯一こうした貴重な野鳥を目の前で観察出来るのに・・・もったいない話ではないか?
もっとも、朝6時に球磨川堤防に集合させると、親や教育委員会、口うるさいクレーマーたち(メディアを含めて)が騒ぐので先生・教育者たちも出来っこないと思っているのだろう。
しかし、自然界は人間が決めた授業の時間割など都合の良い時間にだけ動いている訳ではなく、人間の決めた時間割の方がはるかに自然に反しているのを理解させる意味でも朝6時の自然観察は在っても良い話だと思うが如何だろう?
自由参加でも良い、日本で人吉市でしか観られない「自然」上手く活用してこそ「人吉市の鳥」に在った意味があるのではないだろうか?