2021年9月1日水曜日

団塊世代は野生動物撮影に関していろいろ思う所あり。 The baby boomer generation has a lot to think about wildlife photography.

  自然界の生き物をやたら撮影し始めて15年が経った。勿論、15年くらいで偉そうな事は言えないのだが、手探りで野生の生き物を撮影して、お手本となるプロの野生生物写真家の作品や撮影手法を見るにつけ、撮影方法に関して自分なりの考えを持つようになった事に気が付いた。

 今まで自然界の生き物を撮影するにあたって、その作品に感動するとともに勝手に学ばせてもらっている写真家さんが二人居る。故・星野道夫氏と嶋田 忠氏だ。

2年前のTOP MUSEUM東京写真美術館での「野生の瞬間」展で。多分同学年。

野鳥に関しての写真家さんとしては我が国の第一人者。

2013年市川市での写真展で。

彼の同窓生に教わらなければ知らない人だった。クマに喰われるまで執着した超人。

 いずれも自然界のプロ写真家としては世界的な方々で、学ぶことは山ほどあるのだが、アマチュアの筆者が真似しようにも、できる事と出来ない事がある。今までその境目を自分で理解しながら自分の撮影スタイルを造ってきたつもりだ。勿論、「実力・センス・技量」はじめその世界で生きていく「覚悟」において一個人の筆者とは決定的な差があるし、物理的な資金力も人脈・コネクションに関しても雲泥の差であることはどうしようもない事実。

 しかし!自分自身が予想通りの成果を上げられた時!あるいは思いもしない凄い生態の瞬間を収録できた際の有頂天の喜びは、プロもアマ、つまり彼等と筆者もそう大差ないと思っている。

 野鳥なり昆虫の動きを観察していて、次に起こる生態を学術上・経験上から予測し、カメラをそれなりにセットして構え、ファインダーを覗いて「その瞬間!」が撮れた時の何とも言えない達成感・充実感は大変なものがある。

 たとえば、撮影現場から宿舎の部屋までずーっとレッドカーペットの上を凱旋行進するような感じだ。

 多分、これを感じられた事のある方は決して少なくないだろう。自然の生き物にレンズを向ける者、誰もが公平に持って良い喜びの瞬間だ。

 故・星野道夫氏の作品群、写真集を観ても作品ごとにそれを感ずることが多い。嶋田忠氏の作品群は同じヤマセミなど鳥類が多いため、余計似たような同じような感動・喜びを得られているに違いないと確信する次第だ。勿論その回数は筆者の何倍にもなるだろうが・・・。

 しかし、今回TOP MUSEUM東京都写真美術館で観た宮崎学氏の「イマドキの生き物」写真展を観て、そういった撮った瞬間の感動、被写体から迫り来る「対峙した緊張感」をあまり感じなかったので「何故だ?」と不思議に思い、続けて二度も観に行ってしまった。

 で、判ったのがセンサーで生き物の動きを察知し自動撮影方法で撮った作品が多かったためだという事がおぼろげながら判った。

 簡単に言えば、いわゆる最近玄関にセンサー付きで明かりがいきなり灯る防犯ライトのようなもので、暗闇で動く生き物がセンサーで捉えられるとライトが付いて撮影される・・という自動撮影装置。

 よくカメラメーカーが広告宣伝に使ったスタイルと同じだ。遠くからレンズ目がけてフクロウが飛んで来るという映像。これなどは自動撮影システムに加えレンズの前に生餌を置いて撮影したのではないかと思われる。どんなにギリースーツ(狙撃兵が着用する完全カモフラージュ服)を着て待っていても、いきなりフクロウがレンズ目がけて降りては来まい?

筆者が球磨川流域で良く着用するギリースーツ。

 ファインダーを通じて息を殺して対峙する野生の生き物との駆け引きや、思いもかけない生態の瞬間の画像が今回の写真展では少ないように思えるのだ。撮ったぁー!ではなく、撮れてた…に近い作品が多いのだ。作品と言って良いかどうかわからないが・・。

 野生の生き物の生態の殆んどは、行わねば生きていけない採餌行動、縄張り保持行動(闘い)、繁殖活動、身づくろい、天敵からの身の保全・・などが主なものだが、そういった生態の行動の瞬間画像が少ないと感じたのだ。

 例えば、フクロウでも採餌の瞬間、餌物を咥えてカメラに気が付いた瞬間の獰猛な目つき・‥などが感じられなかったのはとても残念だった。

筆者が2018年奥日光で対峙したフクロウの日中採餌シーン。餌物はネズミ。

レンズに気が付いて睨まれた時の獰猛な眼付は背筋が凍った気がした。

 宮崎学氏のフクロウの一部はブラインドに身を潜めての直撮影だと想像したが、それ以外の夜行動物のもろもろの生態は自動撮影だろう、写真的に素晴らしい絵になる「瞬間」は在るのだが、撮影者が野性と直接対峙した「息詰まる瞬間」が少ないように感じた。


 嶋田忠氏の撮るヤマセミはどれもやはり緊張感のある1カットという気がする。直にファインダーを覗いて対峙しなければ撮れない瞬間だ。 

ここからが今回のTOP MUSEUMの写真展。

宮崎学氏も団塊世代の一歳下・・・かな?

センサー自動撮影システムによる撮影なので夜行行動の画像が多くなってしまう。

自動撮影の場合縦横無尽に動く生き物を追尾するのは難しい。

どうしてもカメラを中心に前後の動きが主になってしまう。

 テーマごとに色々な撮り方もしているが、夜行の動物自動撮影の作品と、都会で人間と共存する動物たちの生態との落差が気になる写真展だった。