写真の原点的展覧会が、紅葉の始まった東北・米沢市のよねざわ市民ギャラリーで今日から六日間だけ始まった。伊藤甚太郎という農民写真家が自作したガラス製の印画紙写真機で大正~昭和初期の飯豊町中津川地区の農民生活を撮影した貴重な作品群だ。
伊藤甚太郎さんはWikipediaなど、ネットで調べても出てこない。佐藤秀明さんなどから教わらなかったら判らなかった方だ。
何が凄いって、当時自作したという写真機も凄いが、大正~昭和初期という時代の東北の雪深い寒村の日常生活がものの見事に表現されている事に驚かされる。
当時の農家の普請の様子。子供たちのいで立ち、女の子が手にする手作りの日本のぬいぐるみ人形。農家の労働者の逞しさ。どれをとっても貴重な画像遺産だろう。
幕末から明治初期に九州出身の上野彦次郎や富重利平により幕末の志士たちが何分間か動かないで撮影された肖像画写真の原点とは意味が違う、普段の日本の農村の生活を捉えた一点一点は「写真」のそもそもの原点が見て取れる。
写真撮影が好きでたまらない人たちにとって、「自分は写真を何のために、誰のために撮っているのか?」を改めて考えさせられる、とても貴重な写真展だろうと思う。
佐藤秀明さんご自身の出品作品もあり、普段の佐藤さんの発表する作品ではお目にかかれない雪国の農村生活シーンに出逢える。雪深い米沢近辺でなければお目にかかれないその地域独特の和かんじきを履いたおばあさんや、くるみをでっかい七輪で煎る様子など貴重な画像が多い。
同時に、幾度も撮影チャンスを待ち続け、其処に住んでいなければ絶対に出遭えない大自然のシーンをモノにされた風景写真の匠、斎藤 徹さんのカラー作品も展示されている。
たった6日間の開催、東京から日帰りできる距離だが、写真が好きであれば一生に一度のチャンスとして絶対に観ておくべき写真展だろう。
GO TOキャンペーンを利用して紅葉を狙って東北へ行かれる方は、是非立ち寄りをお勧め。写真美術館やカメラ関係のメーカーのギャラリーで行われる写真展とは次元のちがう「唸る写真展」であると思う。
昨日、よねざわ市民ギャラリーで佐藤秀明さん中心に準備・設営の様子をスナップしたので此処にご紹介してみたい。