今日、東京市ヶ谷のアルカディア会館で第16回日本自費出版文化賞の授賞式が有った。9月頭のブログで紹介の通り、昨年出版した写真集「江津湖の野鳥」がグラフィック部門で入選した。応募総数600以上の中、入選した出版物は60冊余。この手のコンテストでは非常に難関であった模様。初めての応募で入選が如何に珍しいかを今日関係者から告げられた。全てこれは的確なアドバイスと解説を頂いた日本野鳥の会熊本県支部の山田龍雄氏、無理を言って写真提供をお願いしたモトキユミコ氏の協力有っての事、更には印刷入稿デジタル処理などに細かい気使いを頂いたエールプランニングの染谷和彦氏に重ねて感謝したい。
表彰式で、来賓・関係者の総評・書評を頂いた中に今まで知らなかった出版業界の問題や今後への課題が数多くあり大変勉強になった。関係者とは直木賞選考委員の文芸春秋社の重鎮、朝日新聞社のCSR(企業の社会貢献)担当者、富士フィルムのグラフィック出版関係者、その他出版界の主要人物など。
この方々の祝辞と発言の中に、今の本屋さんに並んでいる本はその40%以上が返本される。だから売れない本は作らない。しかし売れる本が何だかよく判っていない。初版完売だの30万部売り切りなどと言う見出しばかり踊っているが、本当に中身のしっかりとした出版物は今や自費出版の本に集中してきている・・・と言うのだ。
まさかとは思ったが、売れている本程中身がスカスカで直ぐに読み切れる本ばかり、ベストセラ―作家と言われ、売れている作家の本も2冊分の中身を4冊にして名前を変えて売っているだけだと云う。言われてみれば心当たりがいくつも有った。
そういう意味からも、まだ数は少ないが、ただ綺麗な写真を並べただけではない野鳥に関しての生態観察など、時間と手間暇を掛けた中身の濃い出版物・写真集は出版関係者としても非常に期待するジャンルだと言っていた。入選出版物を全て展示していた中で「江津湖の野鳥」を手にする方は多く、8名ほどの方が是非欲しいと言って下さった。その内半数が出版関係者、残りが入賞者の方だった。
今回特別賞を受賞された野鳥の写真集「水上の狩人 ミサゴ大全」を出版された香川県の平沢修氏は表彰式には欠席で代理の出版社の方が来られていたが、ミサゴを追い続けて12万カットの画像を撮られたそうだ。上には上がいるモノだと驚いた。自分のヤマセミもまだ7万カット程度なので足元にも及ばない、今後の観察活動に大変良い刺激を頂いた。
なんと協会のトップはあの「がめつい奴」の子役から一世を風靡した中山千夏さんだった。昭和23年生まれの同い年。その昔中学生時代、両親に「ほれあの子はお前と同い年なのにもう稼いでいるよ」と言われてすごく嫌な気分になった覚えがある。
文集や子供向けの絵本などを対象としている程度が「日本自費出版文化賞」だと思っていたら、とんでもない勘違いで相当ハイレベルの出版関係の賞で驚かされた。
他の入選作品は、皆そのまま本屋さんで売れるような装丁でハードカバーも多く、帯カバーなども付いていてびっくりした。皆さん出版社や本屋さんがバックに居るので、原稿制作・レイアウト・入稿までを自分でやる人はいないらしい。そういう意味でも「江津湖の野鳥」が此処で入選と言うのはつくづく奇跡的な事と思った次第。
しかし、関係者のチラ見ではけっこう手に取って魅入る人が多く、文章を読まねばならない小説やエッセイ等よりは人気があったようだ。
最後まで席に戻らず「江津湖の野鳥」をご覧になっていた方は出版関係者らしかった。
これまでスポーツ関連(サッカー、アイスホッケー、ウインドサーフィン、クロカンスキー)や写真、デザインなどのアート部門では幾度か表彰された経験があるが、どちらかと言うと理科系・美術系の私が出版文化賞などというどっぷり文科系の受賞などは考えもしなかったので自分でも意外だった。
黙々と野鳥の後を追い回す合間にこういうご褒美が有ると次への大きなエネルギーを頂いた感じ。今後も少し前のめりに行けそうな気がする。熊本の素晴らしい自然と、応援頂いた皆様にもここで感謝したい。