2017年4月9日日曜日

団塊世代の写真撮影愛好家が師匠と仰ぐ佐藤秀明さんとは?その2. With Mr. Hideaki Sato the baby-boomer respects as a master? Part2.

  幅広い活躍をされているなかで、自分の中では1980年頃からその作品でハワイの空気と海とサーフィンの色気を教えて頂いた佐藤秀明さんだが、カメラ機材やアングル、光など写真撮影技術より、写真撮影全般に対する「精神・心構え・哲学」の様なものを学び取ったような気がしている。学び取ったというより真似をさせて頂いた、盗ませて頂いたと表現した方が正しいかもしれない。

 良く、子は親の背中を見て育つ、後輩は先輩の背中とその行動を真似て育つというが、まさにそれに近いかもしれない。具体的に同じ場所に行って同じ被写体を撮るとかいうのではなく、自分で何かに相対してシャッターを切ろうとする瞬間「佐藤秀明さんならどうするだろう?」と考えるのだ。

 全く同じ意味での師匠に、ハワイで活躍した後現在はLA近郊に住んでいるスティーブ・ウィルキンスが居る。彼の場合はウインドサーフィンの撮影時に現場で一緒に仕事をしながらさんざん学ばせて頂いた。 こちらが仕事で散々通ったハワイ滞在中は撮影だけではなく、英語、アメリカの一般生活の常識・マナーなど多岐にわたるレクチャーを頂いた。未だにFaceBookで繋がりエールの交換を行ってはいるが、あまりにもレジェンドなので多少ビビりがちだ。

 この偉大なお二人の事を頭に描きながら、自分がシャッターを切る瞬間、それこそ何百分の一秒の間、自分の行動を再確認するのが常だ。

 しかし、写真集の一ページごとの感動と教えの刷り込みは、頭の何処かに必ず残っており、被写体を選んだり、場面構成や光を考える時に自然に出てしまう事が有るのが不思議だ。

 一番驚いたのが、かってウインドサーフィン・ジャパンというウインドサーフィンを日本国内に広めた会社からの依頼で、1986年頃ウインドサーフィンの開発・テスト、大きな国際コンテストで有名に成りつつあったマウイ島でのレポートを広告・販促用に製作する事になったのだ。

 その時、その表紙を「佐藤秀明さんだったらどうするだろう?」と考え、カッコいい著名選手のジャンプやウエイブ・ライディングの画像ではなく、これから海に出ようと、海の状況を注視するライダー(マイク・ウォルツ)の表情で制作したのだ。当時はプロ・アマを問わず、実際にウインドサーフィンをやっているライダーたちに高い評価を頂き、あっという間に無くなってしまった。

 そうして数年前、発刊された佐藤秀明さんの「カイマナヒラ」という大ベストセラー写真集の一ページを観て、腰を抜かしそうになってしまった。自分自身、自問自答した程だ、「お前これ、佐藤さんが随分前に発表したの真似したんじゃないの?知らなかったの?」汗びっしょりだった。

 勿論、真似などする訳もなく、逆に非常に嬉しかったのを覚えている。「佐藤さんも同じようなシチュエーションを絵にしていたんだ!」

1986年発行のマウイレポートだが撮影は1985年マウイで。筆者撮影。

カイマナヒラより 佐藤秀明氏撮影。

2012年ビームス発行のカイマナヒラにこの1ページを発見!佐藤さんがいつごろ撮られた作品か判らないが、勿論筆者よりはるかに前だろう。

 一方で、ハワイへの憧れは佐藤さんの写真集でピークに達していた1982年に雑誌ポパイの妹分、雑誌オリーブ創刊2号取材に参加。ハワイ特集のウインドサーフィンに関するで初めて本物のハワイへ渡り2週間ほど取材・撮影をしたのだった。その時に参考書・バイブルにしたのが何と佐藤秀明さんの作品をまんまパクったような表紙の雑誌ポパイのハワイ特集だった。
今でも大切にしているハワイの参考書、1982年1月10日号表紙は佐藤さんの有名なウエムラストアの写真をモチーフにしている。

こちらが本物の佐藤秀明さん撮影のウエムラストア。写真集カイマナヒラの表紙を飾った非常に有名な写真だ。

 これらの影響を受けつつ雑誌オリーブの取材に同行し、ウインドサーフィン関連の撮影をさせて頂いたが、何とその扉ページに筆者の撮ったカットが採用され有頂天に成ったのを昨日の様に想い出す。
ウインドサーフィン・ジャパンのカレンダー用にとカイルアの海とビーチを入れて撮影したものだったが、雑誌オリーブのスタッフが素人の撮った写真を選んでくれた事に今でも感謝している。

こちらが雑誌オリーブでハワイ・カイルアでのウインドサーフィン特集の扉ページ。今でも宝物だ。撮影者へのギャラ(写真使用料)が発生する雑誌ですら、撮影者の名前をきちんと右上の隅に表示してくれている。これには感動した。無償で借りた写真の撮影者名を出さない個人の知的財産所有権を管理すべき行政・公の組織の出版物が何と多い事かと思う。

 こうして佐藤秀明さんの影響をどっぷり受けて写真撮影を続けてきたのだが、やはり彼のモノの見方、目の付け所に関しては今後もひそかに学ばせて頂きたいと願っている。
カイマナヒラより 佐藤秀明氏撮影。

カイマナヒラより 佐藤秀明氏撮影。

自分はウインドサーフィンに実際に乗ってジャンプしたり波に乗ったりを葉山森戸海岸裏をベースに25年間続けてきた。プロではないのでマウイのフキーパには入らなかったがカナハをベースに、スプレックルスビルでは数回乗った。普通のサーフィンは殆どやらないが、海に対するライダーの姿はウインドでも相当ダブる部分が在るので、こういった作品はいつまで観ていても見飽きない。

カイマナヒラより 佐藤秀明氏撮影。
オアフのノースショア、バンザイ・パイプラインの傍に住んでいるグレッグ・イエスター(プロのウインドサーファー兼サーファー)がこの写真を見てうなったのを忘れられない。彼は家にこの写真を額に入れて飾っているそうだ。その彼が「ミスター・佐藤はサーファーの心を撮る人だ」と言っていたのがとても印象的だった。

カイマナヒラより 佐藤秀明氏撮影。

片岡義男さんの「波乗りの島」の巻頭にも掲載されていたこの写真はハワイの夕陽の時間の光の素晴らしさを知っている人達にはたまらない。

 調布にお住いの佐藤さんは、筆者も良く行く野川にもちょくちょく行かれるそうだ。一度首からカメラを提げ、自転車をこいで猛スピードで走り抜けていかれたお姿を一度だけ見かけた様な気がする。今後も彼の色々な作品に出合いたいと思う今日この頃だ。

 カワセミの撮影にも、必ずこうしたレジェンドの撮影に対する姿勢、哲学などを学ぶと、今までとは違う何かを成し得るかもしれないので是非お勧めしたい。