この展覧会というより展示会へ行った方はお気づきだろうが、前半が幼稚園から始まって高校・専門学校までの過程における全国のユニークな美術教育の一端を展示したものだ。
後半は東京藝大の授業・講義内容を判り易く展示したもので、東京藝大に入りたかった者にとっては垂涎の展示だろうと思う。
あの1969年の東京大学入試中止事件のあおりを食らって、同じく入試を中止した東京教育大学の芸術学部・工芸工業デザイン専攻科に入りそこなった者の一人としてはちゃんと入試を行った東京藝大はいささか羨ましい所ではあった。
筆者は結局志望先を替えらざるを得ず、気が付けば同じような境遇で集まった横浜国大教育学部美術科(=中学校教員養成課程)の一員になったのだった。
つい先日クラス会があったが、現在活動メンバーである学会と重なり欠席したが、特別に三次会を開催して頂き充実した時間を過ごしたばかりだ。その上、昨日は昨日で都立広尾高校15期F組の古希記念クラス会で大変有意義な時間を過ごしたばかりだ。
この高校時代のクラス会などクラス会で思う事は後日ブログアップ。
前置きが長くなったが、いくつか小中学校のパートで思ったことを述べたいと思う。
筆者は1979年以来、広告代理店業界で過ごしてきた為、海外を含め全国各地の小中学校を訪れている。授業中より休みの日の学校の方が多いのだが、教室内に入る事も多々有った。時には私立の学校で美術系の講義を行う事があったが、印象的な事を想い出した。
それは沖縄の名護市の小学校へ行った時の事、休みの教室で後ろの壁に貼られた一連の絵を観て驚いたのだった。皆ヤシの木や白い雲など如何にも沖縄らしい佇まいの絵だったのだが、一様に海の水平線の手前に白いラインが入っているのだ。一瞬何故だろうと思ったら、サンゴ礁だったのだ。
沖縄など南の島の子供達にとってはこれが普通の海の情況。海には白い波の経つサンゴ礁が在って当たり前なのだ。
要は沖縄の子供たちは、海を描けば沖のサンゴ礁が当たり前なのだ。京浜地域の子供が「海」の絵を描けば江の島や富士山や大きな沖の船が必ず入るのと一緒なのだ。この地域性を子供達自身は知らないだろう。これらを子供たちに教えるのも一つの教育だとその時思ったのを覚えている。
もう一件は「エルメス」というフランスの馬具工房から発展したファッショングッズの有名ブランドの担当者に訊いた面白い話。
エルメスは企業活動としてアフリカの子供たちに「絵を描く事」を教え、美術教育に力を入れつつ、そのユニークな色使い、描写力の元描かれた「作品」を人気のエルメス・スカーフの図案に採用したのだ。
その際、何がユニークだったかというと、絵の具なり画材を混ぜ合わす事を知らない子供が「画材の原色」のまま動物や生活や自然を描く為、その描写・表現パワーが非常に強く、有名なプロの作画師顔負けだったというのだ。
確かにその一部を見せてもらうと納得だった。
オリジナルか否かは不明だがあくまでイメージ Google画像より
歴代の人気スカーフ柄の中で非常にユニークだったので超人気だったらしい。
要は、子供達が画材の持つ発色力をそのまま生かし、自分のインスピレーションそのままに当てはめて活用する事で、元の色の持つパワー100%を活かしているのだろう。だから「絵」に迫力があり、大人顔負けの訴求力と新しい魅力に繋がっているのではないかと踏んでいる。
それに対し、日本の色に対する教育は、いきなり色と色を混ぜ合わせる事を教えてしまうので、子供の純粋無垢な訴求力を殺してしまっているのではないだろうか?100%の色の力と別の色の100%の力を混ぜ合わせると70%の力になってしまうのではないだろうかと思うが如何?
色を混ぜ合わせる事は子供達自分自身が作画中に気が付くまで放って置く方が面白いのではないだろうか?先にそれを教えてしまっては・・・。
こう言う事を会場を回りながら考えてしまったので2回とも2時間以上滞在してしまった。考え過ぎだろうか?