2016年6月24日付人吉新聞 掲載記事
この地元にお住いの古江さんが中心に始められた地道な運動は、筆者もよそ者ながら6年前から応援をしてきただけに、心の底から悦んでいる。人吉市の市長さん訪問時にはもちろん現場に駆けつけられなかったが、こうして具体的に提案した行動が掲載された紙面を観るとほっと安心する。
現在、ヤマセミを市の鳥に制定している自治体はNHKの「ダーウィンが来た!」でも有名になった北海道の千歳市、新潟の胎内市、岡山県の高梁市など3市のみ。しかしそのどの市でも街中でヤマセミを観る事は不可能だ。余程山奥の民家のないポイントで、車の中からもしくは物陰に隠れるかブラインドと呼ばれる迷彩柄の一人用のテントに隠れて観察しないと警戒心の強いヤマセミはあっという間に逃げてしまう。
このような状況下で、人吉市のヤマセミは市街地のど真ん中を流れる球磨川の堤防から観る事が出来る。勿論ツバメの様に朝から晩まで飛び交っている訳ではなく、繁殖期以外は早朝、日の出から3時間と日没前1時間程度だ。たとえ熊本県内でも昼間日帰りで簡単に観察出来るという訳にはいかないが、一泊して朝早くから観察すればほぼ間違いなく写真撮影も可能だ。
鮎刺し網漁の干し網に留まるヤマセミつがい。
国交省土木事務所の河川監視ライブカメラに留まるヤマセミ。
ウォーキングの地元の人から50mの距離でも逃げないヤマセミ。
旧跡・人吉城址の塀に留まるヤマセミ。後ろは通学の子供たち。
その関連の一つが4月23日にこのブログで取りあげたJR九州の来春から運行が始まる観光列車「かわせみやませみ号」だ。
※ http://yamasemiweb.blogspot.jp/2016/04/blog-post_23.html
現在、八代市と球磨村のシンボル鳥は「カワセミ」だ。せっかくJR九州が球磨川沿いに走らせる観光列車を「かわせみやませみ号」と名付けてくれたのに、終点の人吉市のシンボル鳥が梅園が在るという理由で定められた「ウグイス」でしかないのはいかにも残念。ウグイスももちろん相応しい野鳥だが、全国的に視て唯一無二の街中で観られる深山の野鳥ヤマセミを追加で2羽目のシンボル鳥にする事が出来れば人吉市に大きな利益を生むだろう、間違いない。
人吉新聞に掲載されたJR九州の「かわせみやませみ号」記事。
北海道の千歳市の場合、市の鳥はコウライキジとヤマセミだ。他にもシンボル鳥が2種類定められている自治体はいくらでも在る。此処でウグイスに加えてヤマセミを人吉市のシンボル鳥に制定する事で色々な展開が可能になる。
熊本地震から2か月が過ぎたばかりで、未だに苦労されている被災者からは「市の鳥だぁ?何を考えているのだ?」と言われかねないが、人吉市も甚大な被害を被った。市役所は使用不能となり数か所に分散して執務せざるを得ない状況。史跡の人吉城址の塀も瓦が落ち物理的被害は街中のあちこちに存在する。一番の影響は観光客の激減だ。SL人吉号の乗客、名物球磨川下りの利用客も激減しており、地震前の水準に戻すには数年以上掛かると言われている。
此処で官民一体になって、人吉の地震からの復興を起こすきっかけに、このヤマセミがシンボル鳥になってくれれば最高だ。
山奥の盆地の観光活性化をその地域だけ単独で行おうとしても、まず難しい。アンデスの山奥の空中都市マチュピチュとまでは言わないが、球磨川の深い峡谷を抜けて突然目の前に広がる人吉盆地は、日本でも珍しい盆地気候・盆地独特の生物生態系が存在し、もちろん盆地文化・独特の食文化も存在する。
野鳥愛好家垂涎のアカショウビン(別名・火の鳥)なども盆地のあちこちから鳴き声が聴こえる。筆者も一日に全然違う3か所で鳴き声を間近に聞いた経験がある。何と住宅街の傍の崖の上で2羽が鳴く声を聴いた。証拠写真を撮られた方もいる。
こうした独特の環境下にある人吉市なのだ。観光素材は山ほど存在する、しかし地元の観光業に従事している方々は、なかなかその魅力に気が付いていない。いわゆる宝の持ち腐れ?
これらの課題、問題を解決する引き金になるのが「「ヤマセミを人吉市の鳥に!」の運動だと認識している。今日の新聞掲載によって嬉しい事に今後の展開から目を離せなくなった。