青大将に1羽が呑まれた後、ヤマセミ両親はけなげに残された雛への給餌をせっせと続けた。基本的には最初の給餌は午前5時30分頃に始まり、最後は午後7時00分頃だった。給餌は雄も雌も平均的に同じペースで行っている。1羽が採餌に行く時はもう1羽は必ず巣穴からほぼ正面に見えてなおかつ10m程高い位置にある樹木の枝から巣穴を見張っていた。こういったポイントは観察した限りでは3か所あった。
大型車がアイドリングの為エンジンを掛けたり、荷積み荷卸しで人間が多数動く際はヤマセミは樹木の裏に隠れるが、隠れつつも巣穴はちゃんと目視で監視できるようになっていると思う。
それが証拠に、ちょっかいを出すカラスが巣穴入口辺りに近寄ると、あっという間に何処からかヤマセミの親が現れてカラスを威嚇しながら全速力で追い回す事で説明できる。雛を育てる時のヤマセミの親鳥とカラスとの力関係がいつもとはまるで見事に逆転するのを知ってとても感動した。
で、今回は青大将の災難から6日経った日の早朝起きた原因不明の雛落下事故のレポート。
青大将事件以降再会した給餌は順調に進んだ。
雄も雌も運んでくる餌は球磨川・川辺川流域の鮎やオイカワなどの清流の魚ではなくドンコの様にずんぐりとして、紫色っぽい濁った川に居る様な魚が多い。環境が違うと餌の種類まで違うようだ。
給餌が終わるとすぐにそのまま採餌に向かう事が多い。
給餌に行かない場合はこうして巣穴が良く見える位置で監視をしている。距離80m程。こちらの車からは150m程離れている。
こうして6日ほど観察を続けたある朝事件が起こった!
早朝午前4時50分、まだ相当暗い中、2匹の四足が車の横に来た。その時はタヌキだと思ったが、どうやらテンのようだ。顔と足が黒いイタチを調べたら顔つきも色もイタチではなかった。
その後、5時過ぎからいつものように観察を始めたら鳴くはずの親鳥が現れない。カラスが3羽やたらと騒いでいる。(05:10)
そのカラスがなかなか飛んで行かないので、何かおかしいと感じ良く観ると一番左のカラスのくちばしが赤い。
ヤマセミの親が現れず、カラスの様子がおかしいので巣穴の下に行ってみると、仰向けになって内臓を食い荒らされたヤマセミの死骸が在った。成鳥だか幼鳥だか判らなかったが、後に両親が給餌を再開したので巣穴の幼鳥だと判明した。落ちた原因は、その瞬間を目撃していないので何とも言えないが、巣立ち直前の幼鳥が巣穴から顔を出した瞬間をカラスにやられたか、巣穴の中で後ろの雛に押されて落下してしまったか・・・。食い荒らされたのは朝5時前に目撃したテンやカラスによるものだろう。最終的にはカラスが肉片を持ち去って行った。これも食物連鎖の自然の一部。
その後05:58になって親鳥が再度給餌を始めたので、まだ雛が居ると云う事が判り安心した。
しかし、給餌は行わず、巣穴の前でホバリングして餌を見せつけた後持ち帰った。これを何度も繰り返した。この後、この日の昼ごろ最初の1羽が巣立つ事に成る。雛の落下事故にもめげずに1羽が巣立った瞬間の感動は非常に大きなモノが在った。