一度だけ、巣穴から飛んで出たヤマセミが直ぐ下の地面に降りて、巣穴をしばらく見上げて居る場面を撮影していた。これはコンパクトデジカメと望遠を付けたデジタル一眼レフ双方で撮影できているので、結構長い時間だったろうと思われる。
このとき現場では、まさかそれが巣立ったばかりの幼鳥だとは夢にも思わなかった。過去において巣立ったヤマセミの雛は巣穴の中で羽ばたきの練習を出来ないので、いずれも目一杯羽ばたいてしまい、真横もしくは上昇しながら巣穴から出てくるのが常で、下へ飛び降りるなど観察経験がなかったのだ。
冷静に考えてみれば、親鳥が巣穴の真下にとどまって巣穴を見上げる様な事をする訳がないことくらい判りそうなものだが、筆者もどうかしていたのだろう。
東京から途中2泊しながら1,500kmほど一人で車を運転してきて、残り数十キロで人吉に着くという段階で、目の前の巣穴からまさにヤマセミの幼鳥が巣立つ等という都合の良い偶然がある訳ないと思い込んでしまったのだ。事実は小説より奇なり・・・の現実が其処にあったのに。
正面の高い樹木と右の電柱のテッペンもしくは左90度の樹木の上と二羽の親鳥が見張る(実は車の中からドアミラに映るこの2羽の親を同時の確認するのは非常に難しかった)前で、ひょろひょろと飛んで地面に降りたのが巣立った幼鳥であることは撮影されたカットで後に成って判明した。
考えてみれば、この際の画像はその場で確認しておらず巣穴の前でホバリングして戻ってきた親鳥の行動に注目出来なかった筆者のミスだ。撮影者はこの時親鳥にしか目が行っておらず、まさか暗い巣穴から幼鳥が顔を出していたなど気がつかなかったのだ。
巣穴からの顔を出しカットもあるが、親鳥だと思い込んで全く疑わなかった。
これが巣立った直後のヤマセミ幼鳥。確かに昨日の親鳥の巣穴から出た勢いとは違う情けない飛び方だ。脇腹の褐色部分も見て取れる。
ダラダラしながら飛ぶのは巣立った際の幼鳥の特徴だ。これも後になってPCの大きな画面で見て始めて判ったこと。撮影時にそれが判っていたらと悔やまれる。
滑空して地面におりようとしているシーン。この後一旦地上手前の障害物で行方を見失ってしまった。この際は車の後方の樹木へ移ったと思い込んでいた。
こちらはコンデジで撮影したフル画面(縦横比率をワイドにしている)
何故、巣穴の下で上を見上げているのだろうと思いつつ、一眼デジタル+望遠ズームに持ち替え撮り直したもの。その時間を考えると結構このまま巣穴の下にとどまっていた事が良く判る。
実はこのときこの個体が巣立った幼鳥だと判っていれば、この後の親鳥との行動をつぶさに観察したのだが、なんとこの後の画像がないのだ。早く人吉へ行かねばと思ってしまったのだろう。返す返すも残念だ。