2015年12月24日木曜日

団塊世代の撮影者・本人にしか判らない「老い」との付き合い方。 How to deal with the "old" not only to the baby-boomer generation.

 カメラを使った写真撮影は1960年、筆者が熊本県の八代二中の1年生になった頃から行っている。フィルムも当初のドイツ製カール・ツァイス・スーパーイコンタのブローニー・タイプから、35mmフィルムカメラに変り、35mmのSS、もしくは高感度のSSSを使うようになった。仕事で撮影が多くなった頃からフィルムからリバーサルになり紙焼きの時代が終わり、スライドで保存するようになっていった。

 デジタルに移行したのは1998年の長野オリンピック辺りからで、同時にパソコン上で画像処理を行うようになっていった。パソコンスキルとデジカメ操作スキルはほぼ同時に習得したが、カメラ自体の進歩速度はあまりに速く、自分が付いて行くのがやっとの時代が暫く続いた。

 筆者と同じ団塊の世代の方々で、写真撮影、中でも大自然・動物系特に野鳥関係の撮影をされている方にとっては非常に理解して頂けそうな内容が今日のブログネタだ。勿論、団塊世代以外の先輩達、後輩達の中にも似たような経験をお持ちの方は決して少なくないと思われる。

 つまり、己の加齢による心身上の数多くの不具合、不都合を如何に予防し、回避するかに関して自分の経験値をベースに、同年輩の仲間・知人の話などをまとめてみようと思うのだ。

 これは団塊世代に近い方であれば、誰もが経験ある事象だろうと思うが、「物が手につかない、良くモノを取り落とす・・・、」という経験が在るだろう。コップや食器、工具や筆記用具。時には高価な、大事なカメラ機材・レンズ・キャップなどなど。原因・理由ははっきりとしている。「加齢によるせっかち」になるからだ。加齢により気が短くなるのと、自分が昔そうであった様にキビキビと動けると思い込んでいる矛盾が大きな原因となっている。自分ではコップをしっかりと握ったつもりなのだが、実際はせっかちな頭の中が次に自分がすべき事、例えばガスの栓を閉めなきゃ・・・とか、玄関に新聞を取りに行かなきゃ・・・を「忘れてはいけない」と考えてしまう為、いい加減な行動で、しっかりと今現在を確保できていないのだ。

 車で高齢者が高速を逆送したり、アクセルとブレーキを踏み間違えるのも、全て眼の前の「今其処にある作業」の次の展開をせっかちに頭の中に考えてしまう為に起こる現象だというのだ。

 たとえ、しっかりとコップの取っ手を握ったつもりでも、端の方を掴んでいたり中に入っている珈琲の重さを予測していなかったりしてしまう。つまりはバランスを取れずに物を落としてしまうことが多くなる。例えていうならば、ヤマセミが採餌の際に獲物の頭の部分ではなく、尻尾の部分を銜えてしまった状態に近いと思っていただければご理解頂けよう。
 元気なヤマセミが大物の魚の尻尾を銜えてしまい、運ぶ途中で暴れられて取り落としたシーンは今年このブログでもアップした。

  要は「物が手につかない」という現象は、気持ちは昔のままだが、動作が鈍くなっていてフィジカル面で昔のスピードで追いつかないという事により起こるのだ。これを回避するには老いた自分の動作のスピードを認識して、自ら意図的に遅くすること。目で現在の行動を確認しつつ、次の動作へ移る事が大切だろう。

 目の前に珍鳥がいて、いつ飛び立ってしまうか判らない焦りの状態でカメラをセッティングするなどという状況下では、もっともこのパターンに陥りやすい。
 三脚の縦横方向・回転ネジの微調整を怠ったが為に、大きな望遠レンズの重みでカメラが前方へお辞儀をしてしまい、バランスを失って高価な三脚ごとカメラ一式を池ポチャしたりさせたりするのも、この延長線上にある悲劇だ。

 更には、同時に加齢現象として周りの状況への気配りや注意力が散漫になり、死角にあるビンやコップ等を無意識に腕や手で払ってテーブルや流しの台から落として破損してしまう事が増える。集中力不足、希薄現象がこれの原因だ。写真撮影においては三脚の各段の絞め忘れで、急に一本の脚が重みで引っ込んでしまい、カメラごと転倒させてしまう・・・などの事故に繋がる。これなども、じっくりとセッティングの際の確認を怠った為に起きてしまう事例だ。

 野鳥観察撮影に車で行く時は、カメラバックやケースに一式を入れたままではなく、是非車を出す前に目的に応じたカメラとレンズのセッティングを完了し、車内に横たえておくことをお勧めする。野鳥はいつ何処で貴方を待っているか判らないのだ。目指す野鳥に遭遇できるチャンスはそう多くないだろう?

 同時に、週に一度はカメラを持って、身近な所で撮影のトレーニングを行う事も大切だろう。特に留まっている野鳥だけではなく、飛翔中の野鳥を撮ることが好きな方々で熱心な方は、チャンスを逃さない瞬発力、野鳥の飛翔にあわせた反射神経のトレーニングも欠かさないで行っていると思う。これは大変重要な事だと思う。

 記憶力の衰えは、認知症、ボケに繋がる。人間の経年変化で致し方ない事ではあるが、これは訓練や工夫で100%回避できる。音楽家、例えばピアニスト、バイオリニスト、指揮者でボケた人は居ない。高齢でもしっかりとしている。農業従事者、漁業従事者つまりお百姓さんや漁師にもボケや認知症の人は多くない。これらの方々に共通しているのは、必ず毎日作業や演奏練習で手先を使う動作を欠かさないという事だ。

 実は指先の動きは脳に直結している。もちろん撮影者もシャッターを押すだけでは駄目で、画像処理を頻繁にパソコンで行う事がボケや認知症の一番の回避策となる。筆者がブログを毎日更新している理由も、実はその目的の半分以上が其処に在ると言っても過言ではない。

 今までこのブログ上で幾度も紹介してきたが、ヤマセミを球磨川や川辺川で撮影する事で、聴力、視力が毎年向上している。これも己の「老い・劣化」を如何に回避するかにおいて非常に良い効果を上げていると信じている。勿論重たいカメラを持って終日土手を歩き回るのも、腰痛が全然ないという良い効果に繋がっている。

 ・・・という訳で、今日の野鳥は川辺川の太郎とその嫁、昨年からつがいになった雌。

川辺川太郎の特徴はその雄雄しい胸の褐色ゾーンの力強さ!こうしてこちらを認知しており警戒する気配は感じられない。

体格の良い雌の嫁は地元の方々から川辺川花子と呼ばれている。この花子もこちらを認知しており、車から離れない限り飛び去る事はなくなった。

太郎は繁殖期前の今、花子との距離をビミョーな一定間隔に保ちながらも一緒に居る。

若い嫁、花子は元気でやたらとあちこちを飛びまわり、時おり太郎の傍へ行こうとする。

あと2ヶ月もすると、この二羽は寄り添うようになり繁殖期が始まる。