2017年9月2日土曜日

団塊世代はもっとプロの写真集から学ぶべきだと思う! Baby-boomer should learn more from Professional's photo-books.

 野鳥に限らず、今までの自分の写真撮影活動に関しては、自分なりにプロの方々の作品展、写真集を穴が空くほど観させて頂いて、色々な事を学んできたつもりだ。
 オーディオファン(=今やもうあまり残っていないかもしれないが)と同じで音楽の「音=音質」の方に凝ってしまい何百万円もするスピーカー装置やアンプ、カートリッジに命を懸け、挙句の果てにはリスニングルームを改装するまでになる方がいる一方で、音楽の「楽=音源」の方に凝り、レコードコレクションに全精力を使う方もいる。

 写真撮影愛好者もこれに似ていると思う。撮影機材=カメラの方に全精力を注ぎ、家に在るカメラ用の防湿庫には何十台という高価なカメラボディやレンズが所狭しと鎮座している方がいらっしゃる。勿論最新発売のカメラ機材の情報や評価をするのが楽しくて、仲間とあーでもないこーでもないと知識自慢を繰り返す・・・。

 一方で、せっせと撮影をし続け、あちこちのコンテストに応募して、コンテスト荒らしの様な方もいらっしゃる。それぞれカメラが道楽と言われたデジタル以前の時代からの末裔だろう。

 上手になるにはプロなり先生から盗め!と言われるのは芸事の世界、何処でも同じだろう。写真撮影もそれに近いと思っている。しかし筆者には具体的な師匠や先生は居ない。
 その代わり、ハワイでは1984年~1993年の間、スティーブ・ウイルキンスというプロに仕事をお願いしながら一緒に撮影現場の横で多くを学んだ・・・と言うより覚えた。

 もうそれから25年以上経った今は、佐藤秀明さんというプロフェッショナルの作品を通して「見る眼、狙う心、訴える演出」を何とかして盗もうとしている。勿論自分が生きている内にその20%のレベルにも近づけないとは判っていても、今よりは少しは良くなるだろう?という「欲」がある限り近づきたいと思っている。

 今回はその佐藤さんがあの9.11で崩壊してしまったニューヨークのワールド・トレードセンターを、建設を始める前から撮影し続けたドキュメンタリーに近い画像を1冊の写真集にまとめたものを例に、如何にプロの眼が凄いかをご紹介しようかと思う。
 単に、まさか「約30年後にテロで崩壊する」などとは想像もつかないまま撮影をして置いた・・・という佐藤さんの神がかり的な運命は置いておいて、その写真を通じて「眼の付け所」「何度も足を運んだ入念なロケハン」の凄さが伝わってくるのが筆者にとっての「学び・勉強」なのだ。

 写真集というものは、普通一般的には「これ好きだなぁ」とか「こういうの撮ってみたいなぁ」ぐらいにしか思わないモノだと聞いたことがある。これは大手の本屋さんだったり、写真撮影愛好家の仲間の口から聴いたものだ。

 しかし筆者は到底写真集というものはそれだけだとは思わない。勿論さーっと視て大体の中身は判るが、佐藤さんの写真集はさ―っと行かないのだ。絶対に行かない。

 高価な写真集だし、版権が存在するのでやたらと中身を公開する訳にはいかないが数枚だけ、筆者が何故釘付けに成ったのか説明をする為に掲載させて頂く事にしたい。

 この写真集はマガジンサポート社から発行された「鎮魂 世界貿易センタービル」写真/文 佐藤秀明 ¥5,000+税 2001年の発行だから、もう今となっては、Amazonの古本でもなかなか手に入らないが、本気で「写真」を撮るという気にさせてくれるバイブルになるかもしれない。 
表紙は暗い摩天楼だが、かってマンハッタン島に在ったワールド・トレードセンターの存在感が十分判る写真だと思った。ずいぶん前に大相撲本場所の写真で舞の海の向こうに小錦がこっちを向いて仕切りに入る場面を縦に撮影したものがあった。この表紙にはそれに近い衝撃を受けた。

まだワールド・トレードセンターが建つ前の1960年代後半のニューヨークの佇まいが非常によく判る1枚だと思った。筆者が一番最初にNYCに行ったのはVAN宣伝販促部の出張で行った1975年の事だから、その7~8年も前の画像に成ろうか。しかし、左にエンパイア・ステート・ビル、右にクライスラー・ビルを配して真ん中を地下鉄?が通るこのアングルを良くぞ見つけなさったと思う。足で稼がねば判る訳ない。
ワールド・トレードセンターが建つ前の地面を写真で見られるとは思わなかったし、それをつぶさに撮影したのが日本人であった事に感動を覚えた。

建設中のワールド・トレードセンター。アングルがどうの鉄骨がどうのに目が行く方もおられようが、どうやってこれを撮ったのか?同じ高さの隣のビルにどうやって上ったのか?どうやって許可を取ったのか?この1枚を撮影するのにどれだけ通い、工夫したか考えるだけで「自分には無理かもしれない」と思ってしまった。撮る側の人間として考えると、この写真を凄いと思ってしまう。

左の水辺線上に自由の女神が写っているのがお判りだろうか?この1枚も、何度も同じフェリーで往復しないと撮れないような気がする。決して袋を抱えたおっさんがメインでは無いような気がした。

走ってくる子供が非常に印象的なワンカット!これはタイミングを逃してはならない!という教えだろう。常にいつでもシャッターを押せる状態でアンテナを張っていなければ撮れない1枚だ。
 偶然、筆者も1972年学生の身分で英国に40日間居た際に似た様なシーンを撮影していて驚かされてしまった。残念ながら筆者のは後ろ姿、これがプロとアマの才能の違いなのだろう。でも、なぜか嬉しい。
1972年3月Bournemouth.England.

ちなみに佐藤さんのサイトとブログをご紹介しておこう。