2015年11月26日木曜日

この時期のヤマセミつがい2羽の距離はビミョー。  The distance of two crested kingfisher pairs of this time is delicate.

 今日はヤマセミに関してちょっと細かい話をしようと思う。今まで出版されたヤマセミに関する生態に関する書物は非常に少ない。あの野鳥を描かせたら右に出る者のいない伊藤若冲ですら、カワセミは描いてもヤマセミだけは描いていない事からも、江戸時代からなかなか出遭い難い野鳥の一つだったのだろうと推察する。  数少ない記述や、ヤマセミ研究者の方のネット・ブログなどを見ても、ヤマセミは繁殖期を終えると真夏以降次の繁殖期までオス・メスバラバラになり単独行動をすると出ている。

 しかし、たとえそれが人吉球磨エリアに限った特別な事だとしても、そういう単独行動は無く成鳥に関して言えば通年でつがいは一緒に暮らしている。今までの説からすれば年間でも一番バラバラの単独行動をしているはずの今頃、数か所で異なるヤマセミのつがいの距離感を観察できたのでアップしたいと思う。

 この時期のヤマセミのつがいは殆ど横に並んで、にっこり笑った写真はまず撮れない。横に並ぼうとしないのだ。どちらかが傍へ行こうとすると、もう一方は声を荒げて逃げ去る!何故だか判らないが、この時期のヤマセミのつがいは何処かつっけんどんだ。しかし基本的な行動は終日一緒なのだから余計わからない。その距離10~20mで一日中一緒に居る。これがまた逆に観察していて非常に面白い。

 
人吉市内では数年前から矢黒神社をテリトリーとする有名な存在のヤマセミ君。観察できるのは矢黒神社にお参りした日の早朝のほんの数分間のみ。日中はまず出遭えない。不思議な事だが、お賽銭をはずむと出遭いやすくなることは統計的に数値が出ている。

その彼がつがいの相手と一緒に居る毎朝の距離感がこれだ。右の樹と左の樹にいる2羽のヤマセミがご覧いただけるだろうか?白く写っているのがそれ。

左の枝に留まっているオスのヤマセミ君へメスが近寄って一緒の枝に留まろうとする。

せっかくメスが来てくれたのに、オスのヤマセミ君はご覧のとおり逃げてしまった。

こちらは同じ日の川辺川のヤマセミつがいの距離関係。右上の木の枝と左下の岩の上のヤマセミがご覧いただけよう。この時期、これ以上近づくことはまずない。

まったく同じ状況は、球磨川本流のつがいでも見て取れた。一日でこういう場面を撮影できるのはやはり5年間通い詰めた事と、毎日ヤマセミ達の情報を送って下さる古江之人さんと辻正彦先生のご協力の賜物。

今日はお互い近寄ってもこの距離が精いっぱいだった。これが何故なのか?この先解明できるかどうか判らないが、年中一緒だと息が詰まるのだろうか?まさか人間の夫婦とは違うと思うのだが摩訶不思議だ。

昨日は、球磨川本流あさぎり町のつがい、錦町のつがい、人吉市内のつがい2組、支流万江川のつがい、支流川辺川のつがい、全て似たような状況で撮影できているので間違いないと思う。支流胸川のヤマセミのみ夕方一羽で架線に留まり鳴いていたが、鳴いていたという事はつがいのもう一羽が傍に居るという事だろうと思う。