主に監視する為に留まる場所は3~4箇所在ったが、今回の場合肝心の巣穴が観察者の筆者からは杉の木立に隠れていて直視できない為主に2箇所だけ確認できている。このほぼ巣穴の正面で監視する理由は、巣立つ直前の雛が親鳥の姿とその声を直接確認できるように・・・との事だろうと推測している。動物、特に野鳥は生まれて眼が見えるようになって最初に動くものを親だと認識する為にそういう事なのだろうと思う。
この親が巣穴の雛に集中し、給仕を頻繁に行って居る最中、実は親鳥のつがいがいつも縄張りとしているエリア、採餌するエリアは縄張り監視が手薄になり、隣組のヤマセミが進入・通過する事がある。時には知らん顔で羽休めをしたりする。
縄張り侵犯は、普段であればすぐさまスクランブル発進する監視役のオスが、水面すれすれで飛行してくる隣組ヤマセミを高い位置にある監視場から加速しながら急降下して追い立てるため、アッと言う間に終わる事が多い。普段縄張り争いはオスの役割と相場が決まっている。此れは長い事観察していてのデータがそう示しているので間違いない。
しかし、オスが給餌の真っ最中だったり、何かで巣穴の傍に居ていつもの縄張り監視がおろそかになった場合、メスが代わりにスクランブル発進して侵入者を追い払うことがある。メスが他のヤマセミと猛然と争う場合は初冬の頃、オスの取り合い、つまり嫁に成りたいメス同士がオスの目の前で闘い嫁の座を得ようとする場合と、このように繁殖期のエリア信入者の駆逐・排除の場合に限られる。それ以外はメスは殆ど目立って争う事をしないように見える。オス同士の激しい縄張り争いの場合でもメスはそれぞれ一歩も二歩も下がって遠くから静観している。「何やってんのよ!もっとやんなさいよ!」などとは決してけしかけたりしない。色々な意味で人間の夫婦とは随分違う、人間も是非ヤマセミのつがいの生き方を学ぶべきではないだろうかと、常々思っている。
突然監視台の杉の木から舞い降りて侵入してきた隣組のメスを追い立てるメス。びっくりした侵入者は一度水中に没して攻撃をかわした為波紋が残っている。
逃げる方はもう必死で逃げまくる。
主翼端が水面を叩いた後が幾つも残る必死さだ。
急旋回して本能的に自分のテリトリーのほうへ戻ろうとする侵入者。
隣組は実は昨年生まれた追いかけるほうの子供だったり、或いは兄弟・姉妹だったりする。
闘いあうのが目的ではないので、威嚇しながら併走して追い出すのが通常だ。
此処まで来て双方メスで在る事が見て取れよう。
追い出したメスは意気揚々と筆者の目の前まで凱旋してきた。
勝ち誇ったように傍を旋回して・・・。
30mほどの距離の電線に留まった。
暫く羽根を休めていた。こちらは車の迷彩ネットの中から一切出ないで息を殺していたがこちらが居ると言うのは百も承知!と言った感じだった。3日同じ場所に居れば慣れているのだろう。