2015年6月18日木曜日

今年の人吉エリア・ヤマセミ繁殖レポート その4。 This is the breeding report of Crested kingfisher at Hitoyoshi area. Part4.

 今日の出だしは繁殖中のヤマセミつがいに何かが発生したと思われる異様な鳴き声を発するヤマセミの音声。2日前6月16日付の画像と同じ方向に向けたカメラの動画機能を使って音声だけを録音したもの。16日のブログにも説明をしてあるが、正面に写っている巣穴は昨年以前のモノ。鳴き続けるヤマセミの親は向かって右の杉の木立の奥から聴こえている。現役の巣穴はその方向に存在するものと思われる。
 ※営巣中のヤマセミに異変発生=https://youtu.be/GQzjSIrbo4k

 声しか聴こえず、姿が見えないため静止画の撮影が出来ない。したがってうるさい連写のシャッター音も聴こえない。非常に奇妙な状態が約30分以上続いた。この間親鳥はこの状態のまま鳴き続けていた。観察する側としてはこれ以上辛い状況は無かった。

 鳴き声が止んだのは相当経った後だった。それから暫くして親鳥つがいが川を挟んで留まり、暫く動かなかった。今改めて撮れた画像をよく視ると雛が何か天敵にヤラれ、諦め落胆しているように見える。昨年ヤマセミ繁殖中に巣穴に青大将が入りメスの親と卵もしくは雛が全滅したのを目撃した経験が甦ってきて大きなショックを受けてしまった。

 更に昨年その悲劇の直後新たな繁殖中の巣を発見、遠くから観察したがやはり5羽の雛(後で計算して5羽が判明)の内1羽は青大将に呑まれ、1羽は巣立ち直前に巣から落下、テンやカラスに殺され3羽のみが巣立つ事が出来た。此れは約10日間ベタ付で観察できた。まだヤマセミの繁殖記録の詳細画像付き文献は日本に存在しないので近日中に自費出版予定中(100冊程度限定・非売品)。

 これら昨年と今年の3家族の繁殖記録を見る限り、各家族5個づつの卵を産み育てたとして、巣立てたのは15個中3羽という事になる。巣立ち率20%、5個に1羽しか巣立てないという事になる。勿論巣立った後の自然淘汰を考えるとヤマセミの数が思いのほか増えない意味が良く理解できる。一方で6年前からのヤマセミの繁殖状況を見ていると、4羽の子連れ、3羽の子連れ、2羽の子連れファミリーの教育場面の画像が幾らでもあるのでもう少し繁殖率は高いかもしれない。データがまとまったらまた此のブログとメインのYAMASEMI WEBで発表したいと思う。

 しかし、此れだけははっきりと言える。繁殖活動を止めてしまうから営巣中の野鳥の巣に近づくな!と良く言うが、野鳥の種類と周りの環境とその時々の立地条件を判断すべきだろう。ツバメやカラスの営巣に近づいて放棄した話は聴いた事がない。そんな事でカラスが減るのであれば東京のカラス問題はもっと簡単に片付くはずだ。これはサンコウチョウでもブッポウソウでも同様だ。

 憲法の様にすべてに共通する解釈は成り立たない。脚立でも立てかけて巣穴を覗き込み、雛と親が居る所をストロボをたいて写真を撮ったりして親が脅威を感じ諦めない限り繁殖行動を放棄したりはしない。過去においてそう云う事が有ったのは余程の事だろう。1つの例をとって全部が全部そうだと決め付けるのは実態をよく観察していない者のいう事だ。TVメディアの報道を頭から鵜呑みにする一般大衆と同じだろう。

 実際、野鳥愛好家の中にはそういう覗きこみ写真を撮って本にして出したり、ブログに載せたりする人を幾らでも知っているが、確かにやり過ぎだとは思う。しかし野生の繁殖力は実はそんな事ではめげるほど弱くない。ヤマセミにとっても天敵青大将やカラスの脅威のほうがはるかに大きいのだ、むしろ今回発見した別の営巣ポイントは道路から15m民家から20mの距離に営巣している。 勿論あまりに近い為、関係者間で「此の巣だけは近寄るまい」と決めたので、その後の進展は判っていない。今回失敗に終わった此処のヤマセミの観察にしても、巣穴から最低でも80m以上離れて一般の道路に車を停めて観察撮影している。

 いずれにせよ、これらのデータを元にヤマセミがこれ以上減らないようにするには人間として何が出来そうか、すこし知恵を出してみたい。

けたたましい鳴き声が止んだ後、親鳥つがいは電線上でしばし動かなかった。

30分後川に面した竹の上でじーっと動かないつがい。繁殖失敗のショックで落胆中か?

ヤマセミがこれほど長い事動かないのも久しぶりと思えるほどだった。

巣穴を見通せる正面(距離90m程)の杉に留まっている親鳥つがい。

翌日もいつもの附近でつがいで行動していたが、巣のほうには二度と行かなかった。

事件の2日後二羽の親鳥達はテリトリーの上空をむなしく旋回することが多かった。

盛んに給餌していた時と異なって何も咥えず巣立ちを促すこともなかった、残念。

ヤマセミを観察していてこれほど辛い事はないが、大自然の驚異を目の当たりに出来ている
幸運を感じつつ今後も観察を続けたい。来年また同じ所で営巣するとは限らないが・・・。



<お知らせ>

日本野鳥の会熊本県支部の安藤博人さん則子さんご夫妻の展覧会が
以下の内容で行われる。自分にはとても撮れない素晴らしい野鳥写真
を沢山観させて頂けそうで今からワクワクしている。昨年も数多くの作品
を見せていただき大きな刺激になった。行ける方は奥様の力作と一緒に
是非ご覧になっていただくと嬉しい。


実は此の安藤さんご夫妻はブルーベリー・ファームの経営者でもある。
毎年素晴らしい大粒のブルーベリーを生産されている、一度お試しを!



※なお人気商品の為此のブログをご覧になった時点で売り切れの場合は是非ご容赦を。