ここへ来て、TOKYO2020オリンピックの運営だの準備が滅茶苦茶な状態であることが、国内外の数多くのメディアにより明らかにされてきた。相当酷い様だ。折しも昨日の東京の新規PCR陽性者(≠感染者)が1,400人を超えた。この勢いは開会式当日に向け留まりそうにない。
大方の予想以上に晴海のTOKYO2020選手村は新型コロナウイルスの変異株掛け合わせ培養村になり、観戦者の居ないスタジアムなり競技会場は戦う感染者で一杯になる恐れが出てきた。
菅首相、記者会見などで記者たちの質問には相も変わらず「1+1は?」に対して「B」などという見当はずれで質問者を馬鹿にしたような答えしかせず、先天的なのか意識的なのか国語力・読解力・コミュニケーション力の無さを露呈している。
まだ「未曽有」を「みぞうゆう」と読んで笑われたかっての麻生太郎氏の方が未熟ながら「言っている事は通じている」点でまともに思えてくるから不思議だ。
折しも感染症専門家の各位、政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会が予想した通りオリンピック開催前後に今までで一番大きな第5次感染拡大ピークが来ると警告を発したというのに十分な対策を取らずに「安心・安全なオリンピック大会を成功させる。」という抽象的で根拠のないスローガンを発するだけで中央突破を図ろうとしている。国民はより不安で危険なオリンピックに戦々恐々としている。
海外メディアは既に避難ごうごうの論調で、IOCを筆頭に日本の組織委員会、日本の政府を叩きまくり始めた。我が国の主要メディアは此のオリンピックのスポンサーになってしまっている為思うように非難も出来ず叩けていない。
筆者は考えた。何故国家的なこのイベントがここまで酷いのだろうか?いくら新型コロナ禍で諸条件がコロコロ変わるハンデがあるとはいえ、全ての末端部分での酷さは説明がつかない。
例えば、海外から来たオリンピック関係者たちが選手村に入るまでの間宿泊するホテルに缶詰めになり、ほんの数分コンビニなどへ買い物に行って良い・・・という規制ルールを守らせるための監視・警備役が全く役に立たずザル状態だという。理由を調べたら担当者が英語を喋れないので選手など関係者に行先だの所要時間などを確認できないのだという。これじゃプールや海水浴場の監視員が泳げないのと同じではないか!?
政府関係者が得意げに言っていたバブル方式は、当の昔に崩壊して泡と消えているのだ。
大会組織委員会や主要代理店の「電通」は一体何をやっているのだ?スタッフ日当20万~30万円だの大問題になった数字を計上して大会経費を膨大なものにしておきながら、現場運営のレベルがこれかよ?…と言いたい。
英語もしゃべれないスタッフを配してこれだけの国際大会を運営しようとする姿勢が筆者には信じられない。バイリンガルのボランティアなどいくらでもいるだろ?ましてや日当を払うスタッフなら語学学校・大学・サークルなどにいくらでも居よう?
この大会の監査をする所轄部門は国の一体どこに当たるのだ?そもそもそういう自浄作用が働く部門が、此のオリンピックに関しては無いのではないのか?
細かい事を言い出せばキリが無いが、筆者も広告代理店(中央宣興~博報堂)時代数多くの国家レベル催事を担当した。大きなもので言えば長野オリンピック、愛・地球博、横浜博覧会、つくば博覧会その他地方博覧会、全国育樹祭、世界女性スポーツ会議、世界室内自転車選手権大会、スキー、スノーボードのワールドカップ、世界選手権、1995年のインタースキー野沢温泉村大会、AWSPウインドサーフィンハワイシリーズ、1981年ウインドサーファー世界選手権大会・沖縄などなど。広告代理店退職後も2012国際航空宇宙展(名古屋)など大型国際イベントにプロデューサー、あるいはディレクター、競技役員として参加した。
http://www.japanaerospace.jp/2012/
この2012国際航空宇宙展の報告書も写真の殆どはプロデューサーとして参加した筆者自ら撮影したもの。報告書のデザイン・レイアウトもほぼ自分のPCで作成、フィニッシュを長年親友の敏腕DTPデザイナーにお願いしたもの。決してプロダクションへ丸投げで作ったりしなかった。
組織として上はIOC、国際スキー連盟FIS、JOC、日本体育協会、SAJ日本スキー連盟、ISA国際スキー教師協会、各県庁、農林水産省、文科省、国交省(航空宇宙工業会)などなど。
これらの催事をディレクティングするに関して、数多くの主管団体と交渉準備を重ね、協力会社・プロダクション・ボランティアと一緒にイベントを進めた経験・実績が身に付いている。それも約30年間に及ぶ。大小合わせて数多いトラブル・失敗を経験している。
これらの経験からして、大きな催事の前には必ず綿密・詳細にわたるチェックリストというバイブルがあり、様々なケースを予想してそれに対する対処法を書き記すものなのだ。多分今回の大会にはこれがないのだと思う。メディア対応に関しては更に極秘扱いの対処内容を関係各所情報共有の上、各部署のトップの了解を得て本番に進むものなのだが・・・。
例えば選手関係者が選手村に入る前のシティホテル滞在中、近くのコンビニへ買い物に行く際夕立・大雨が降ったらどうする?・・・などの「あり得る事象」を考えて番号付きのビニール傘を貸すなり、レジ袋有料のシステムを知らない時の為に買い物レジ袋をあらかじめ渡すなど店で店員が困らない様に臨機応変の対処法を大会主催者側で準備しておくのが常識なのだ。
これを怠ると、「消したつもりと消えたはず・・。」の結果起こる火事の様にあちこちでトラブル・事故の火の手が上がるのだ。
しかし今回オリンピックではそういった事前の実務レベルのシミュレーションがまるで出来ていない、と言うか、まったくしていないのではないだろうか?
現場の詰め作業だとか、何かが起きた際の・・と言うより前に、この先どういうトラブルが起き得るか?という予測、予想を出来る現場経験者が電通や組織委員会に居ないのだろうと推察する。
21世紀に替わる2001年頃から大手広告代理店はアウトソーシングとか言って自社内社員・スタッフに実務を行わせず、外部のプロダクションや下請けに現場を丸投げして任せてしまい、実際起こり得るトラブルへの予測が出来なくなっている。
現場を知らなきゃ善し悪しの判断、下請けへの理に適った指示など出来る訳もない。
大手広告代理店社員は現場へ「立ち合い」と称し顔出しだけで、現場では手を汚すことなくクライアントと並んで「こいつら頑張っているんですよ、褒めてやってください」などと言うだけという時代に成っている様だ。右の仕事を左に回すだけで利ザヤを稼ぐだけが広告代理店のメインになって久しい。だから一時問題になった日当25万円だの35万円だの人件費の殆どは幾社もの中間搾取・マージンで消えるだけで、本人には数万円程度しか渡らないのだ。
かってバブルの時代に「仕事を取ってくる・・」などという考え方で営業担当がモノ言う時代が一時期あったのも、こういった中身を知らず(実務など出来ず)に仕事依頼と金だけ動かすのが広告代理店の仕事だと思う人種が増え始めた原因かもしれない。クオリティだの信頼だのが消え去って「ソリューション」などという実体のないワードがもてはやされ始めた頃からの、広告業界・イベント業界での根本的問題かもしれない。この手の業界に「当事者意識」が存在しないのは、筆者がそこに籍を置いていた頃一番強く感じていた事だ。
此のあたりを鋭いメディアや海外メディアは既に見抜いていて世界にその状況が拡散されてしまっている。