東京の美大を出て、大手広告代理店に入り定年退職まで広告業界の裏も表も知り尽くした人間だ。
したがって、そこいらのちょっと美術をかじった評論家とは次元もレベルも違う審美眼、制作テクニック論を実地体験上持っている。映画も作った事のない映画評論家や自分でサッカーもしないワールドカップ・サッカーのコメンテーターとは全然違う「本物の批評」が出来る人物だ。
その彼の日々の美術展レポートをFacebookで見て、何としても行こうと思ったのが今日7月1日(日)まで新宿の損保ジャパン日本興亜美術館で開かれている「ターナー・風景の詩」展だ。
結局、昨日終了1日前、朝一番の打ち合わせ終了後新宿へ急ぎ、開館20分後のターナー展に滑り込む事が出来た。
朝9時半で30℃近い都心だったが、開館直後に行けてスムーズだった。
此のターナー展でターナーの作品にお目にかかるのは、1972年横浜の大学・教育学部美術専攻科3年生の春休みに英国へ40日間ホームステイで滞在し、ボーンマスのKing's School of English(=現在のKing's Education Bournemouth)で学んだ時以来だ。毎週末ロンドンへ行きサッカーの試合を観たり、美術館巡りをした際にテートギャラリーで開催されていたターナー展をじっくり観たのだった。
見て驚いた!テートギャラリーで観たターナーの絵は、帆船と海の作品は多かったものの、ぼやけて遠くの火事のようにしか見えなかった橋の上を走る蒸気機関車の絵、上下逆さまでも判らない様な、どれも眼の検査のような絵という印象が強かった。
しかし、どうだ!今回の展示作品は極めて素晴らしい具象画、それもえらく描きこんだ水彩画が多く驚かされてしまった。
なおかつ描いている場所が、英国のストーン・ヘンジ、エジンバラ城とエジンバラの街、スイスのツーン(Thun)湖、アルプス越えの峠・峡谷、いずれも筆者が現場へ行ってほぼ同じ場所で写真撮影した所(=観光地)だった。
要は、ターナーも写真の発達で観光地などの案内・説明用具象画が用無しに成る頃(4月16日のこのブログ内容と同じ)の最後の画家の一人だったのではないだろうかという思いを強くしたのもこの展覧会だった。
http://yamasemiweb.blogspot.com/2018/04/baby-boomers-think-about-what-kind-of.html
同時に、カラフルな本の挿絵を描いているが、大きく描いてPHOTOSHOPなどで画像処理し縮小したかのような小さな小さな本物の絵、一体どのような筆でどのような状況下で描いたのだろうと、気が遠くなるような絵だった。ターナーは実は相当なオタクだったのでは?
7月7日から9月9日まで福島県の郡山市立美術館でも巡回開催されるが、もう一度是非見たいと思っている。
当日券65歳以上の団塊世代は1,100円!だった。
最終日の今日はこういう訳には行かないかもしれない。
美術館がビルの最上階に有るため、11時頃帰る際にはエレベーターの順番待ちで長い列が出来ていた。
その代わり高層ビルからの東京見物は素晴らしいものがある。
図録とポストカードを買った。スイス・ツーン湖。長野オリンピックのスノーボード種目の競技役員を委嘱された1996年以降、FIS国際スキー連盟の年次会議に幾度か出張し、此のツーン湖の畔にあるFIS本部へ行った。現在、正面の三角形の山の頂上には灯りが有って夜に成ると点っている。
同じくエジンバラ城、全く同じ場所から同じアングルで筆者も写真を撮っているのが面白かった。妙に親近感がわいた。
同じく、ストーンヘンジ。あのBeatelsが映画HELPの中でI need youを強風の中歌ったのが懐かしく思い出された。ターナーは2度行っているようだが、水彩画もエッチングも同じアングルだった。
このブログを観て行く気になられた方は、最終日の今日は18:00までのようなので是非お気をつけて。