年に1週間から10日間程しかない、まとまったファミリーの動向・生態を観察できれば、大体のヤマセミの親子の関係、教育の厳しさ、激しい気性、知恵などが良く判る。
単に出遭い難いヤマセミの姿を求め、首尾よく撮影出来た、時には2羽同時に撮れた!と悦ぶ程度の接し方では、ヤマセミを深く理解するには程遠いと思う。
さらに踏み込んだヤマセミの写真撮影に挑みたいと思うのであれば、被写体ヤマセミの生態や癖を学ぶ事だろう。
筆者も、まだまだ8年間しか接してきていないので、ヤマセミに関しては知らない事だらけだと思っている。幾ら車という機動力を駆使してもたった2つの眼で観察をするには限界がある。
人吉にお住いの古江さん、辻先生、刺網漁師の島津さん、塩見さんなどの情報を小まめに頂いても、まだ見落としている生態があるに違いないと思っている。どんなに熱心に観察しても限られたエリアの少数者の観察だけに頼っていては限界がある。
例えば、北海道の千歳川に生息するヤマセミには球磨川で生きているヤマセミには無い特殊能力があるかもしれない。北海道に多いオジロワシやオオワシはヤマセミそのものを襲って食べているかもしれない。
自然界は不思議な事ばかりだ。あのニューギニアの密林で生きているカラフルな極楽鳥を撮り続けているティム・レイマンに逢った際、極楽鳥(フウチョウ)はカラスの一族だと聞いて驚いた記憶がある。
生息地域ごとに地域限定の特殊生態を会得したヤマセミが居てもおかしくないと思わなければ、とても自然を相手になど出来ないだろう。
これらを前提に、今年6月いつもより遅い幼鳥教育の様子を5日間に渡って観察・撮影した中から内容を精査してご紹介してみたい。
例によってあくまで生態研究の証拠画像としての写真なので、被写体は遠いし、周りの様子も入れて撮影することが必須なので画像は荒いし水面の反射などで見辛いがご容赦願いたい。
まずは、広い川幅の球磨川左岸から人の多い右岸側に飛んで来た幼鳥を岩の上の親鳥がそれ以上行くな!と叱りつける場面。本当は親の居る岩に留まりたいのだが、親の剣幕で留まるにとまれず、といって飛翔力も無いので、ついには失速して球磨川に落ちてしまうシーン。
オスの親がいる岩めがけて100m以上飛んで来てみたものの、
こんな遠くまで、まだお前には早い!とでも言われているのだろうか?
縄張り争いの時のように羽を広げて威嚇する親!
羽根をいっぱいに広げた幼鳥だが既に揚力は失い、失速している。
遂には・・、
球磨川へ墜落!
元来水中にダイブする野鳥なので実は何の問題も無いのだが・・・。
ちなみにこの頃のヤマセミ幼鳥は何にでも興味を示す。
成鳥に成れば他の野鳥の飛翔になど目もくれないが・・・。
幼鳥のヤマセミは目の前を飛ぶアオサギをジーッと注視している。こんなものに気を取られていると、他の危険(=天敵など)に対する防備が出来ないので命を落とすことに繋がる。