人吉附近の球磨川はご存知の通りアユ釣りのメッカ。全国から30cmクラスの尺アユを狙って太公望が殺到する事で有名だ。
台風で増水している時には、流れが強すぎて川に入る釣り人は殆どいないが、台風と台風の合間の水位が低く水が澄んでいる時には、この時とばかり釣り人がいつもの倍ほど川に入る。9月になれば解禁になった刺し網漁も始まるし、10月になればガックリ掛けと言われる、転がしで鮎を引っ掛ける原始的な漁も解禁となり、更に球磨川に入る人間は多くなる。
このガックリ掛け漁は筆者が1960年頃の少年時代八代市の球磨川・前川堰でも行っていた。堰に今でいうテニスやバレーボールの審判席のような櫓があって、沢山獲ろうとする者たちを監視していた。基本的に子供たちは家族の数しか持って帰れなかったように思う。
我が家族は5名だったので「お前が所は5人だいけん、5匹しか獲ったらいかんぞ!」と言われていた。こうやって天然アユの乱獲を規制していたのだ。やたら獲りまくって制限のない現在、アユの数が減るのも当然だと思う。カワウが大挙押しかけて獲ってしまうと嘆く漁協関係者もいるが、太公望たちの乱獲もある程度視る必要があるのではないだろうか?
こうした、台風襲来とアユ釣り太公望たちの狭間で、ヤマセミたちはしたたかに生きている。今日はそういったこの時期、球磨川本流から身を隠し支流などでそれなりの回避生活を送っているヤマセミにスポットを当ててみた。
折しも葛の花があちこちで満開!これほど綺麗なものだとは今まで知らなかった。植生生物学的に言うと「マウント群」に入る葛だが、都会エリアでは鉄道に沿った崖や線路わきに壁や地面に這って伸びて行き、その葉で地表を覆ってしまう夏特有の植物だ。都会エリアではなかなか花が咲かないようだが、人吉界隈では5月から初夏にかけての山藤のように爆発的に咲いていた。紫からピンクになるグラデーションが非常にきれいな花だ。
今回観察し撮影したヤマセミのつがいは、この葛の花の咲き乱れているエリアで回避生活を送っていた。
葛の花、思いのほかきれいなケーキのような花だ。
葛の花に囲まれて羽根休みするヤマセミのメス。人吉ならではの風景だろうか。
木陰からオスがご機嫌伺でもなかろうが飛び出してきた。
ほんの50m程飛んで、再び木陰に入ってしまう。真夏の昼間、ヤマセミを撮るのは非常に難しい。
狭い、浅い球磨川支流なのだが、ヤマセミつがいが隠れて昼間を過ごすには十分な場所。