2020年10月25日日曜日

人間、住む所に関する利点とリスクは理解しなければいけないと思う。 I think we have to understand the benefits and risks of places of residence.

  今回の球磨川豪雨水害で色々考えさせられることが多かった。個人的に知っている、あるいは非常に懇意にして頂いてきた方々が大変お気の毒な事態になるなど、被災された方が多いので未だに球磨川の洪水に関してのあれこれが頭から離れない。

 このブログでも幾度か述べたが、単にダムの有る無しで球磨川の洪水に対する防御を行っても、必ず豪雨はこの先も襲ってくるし、球磨川は氾濫するだろう。問題はその際どうやって人命を救うかが重要な問題なのだと思う。

 熊本県の蒲島知事さんが県内を巡回して被災者含めて「民意」を聴いて廻っている。しかし、「民意」は殆どTV報道、新聞報道、ネット記事などメディア・マスコミから得た情報だけで出来上がっていると言って良い。もしくはそういう情報を丹念に拾っている「物知りの友人」からの解説で出来ている。

 したがって、今回の球磨川洪水のメカニズムと本当の原因を知って理解した上で「意見=民意」を持っているとは到底思えないのだ。行政の人たちですら「本当の真実」を理解しているとはとても思えない。専門家たちですら色々な意見で対立・混乱しているのだから。

 その意味からすると、実質的に今ある「民意」の中身・方向を決めてしまう地元メディア・マスコミの責任は非常に大きいと思うが如何だろう。

 必ずまた来る豪雨、洪水氾濫への不安、日常生活の復活へ向けての自己資金の悩み、また来る洪水への自己防衛方法を考えた時、国や行政への不安に駆られた「ダメ元で、言うだけは言う」陳情・要請・意見は今後も途切れなく出てくるだろう。

 聞いてもらえたと思えば、民衆は期待するに決まっている。果たしてその後は?

 一方、今まで住み慣れた所に戻って住みたいという意見が大半だとメディアで紹介されたが、「住み慣れた所に住みたい気持ち」を実現するために、我々が支払った血税が注ぎ込まれるのは、筆者としてはお気の毒だと思う気持ちとは別に、いささかモノ申したいという気持ちだ。

 理由ははっきりとしている。

 「住み慣れた所」に天災の危険リスクがどれだけある所か理解して住んで居られるのだろうか?という事だ。「先祖伝来の場所だから・・」「ご先祖様のお墓があるから・・」「小さい頃から育った場所だから愛着があって・・。」理由は色々あろうが、元々天災・洪水・崖崩れを受けやすいという事を棚に上げて感情的・気分的に「此処に住みたい、他へ行きたくない」という方が一番多いのだろうと推察する。

 こういった理由だけで全国民の税金を使った公共事業で、そういう一部の危険地域にお住いの限られた方々をサポートして良いものだろうか?

 人間、自分や家族が住む場所に関しては住む者自身が防災リスクを考える責任が在ると思う。特に国土が狭く、梅雨・台風・豪雨・地震・大雪など天災が非常に多い国の国民としては我が家の自然に対するリスクを理解し、「少しでもリスクの少ない場所選び」をする責任が在ると思う。

 風光明媚な球磨川が見えるから、川にすぐに降りられるから、桜の時期や紅葉の時期の景色が良いからそこに住みたい・・等という事を含め、一方で豪雨災害で洪水氾濫の危険、崖崩れ、肥薩線の普通、国道219号線の寸断などリスク面も検討し、我が家の場所を決めるにあたり、他人や地元行政に迷惑をかけない様、各人責任を持って優先順位を付ける必要があるだろうと思う。

 スキーの好きな御仁がスキー場の傍に住みたいけれど、大雪・雪崩・寒さ対策、クマの危険などリスクで、泣く泣く街中住まいする。風光明媚な観光地に住みたいが、観光客の多さ、物価の高さで生活するには無理と諦める。

 高層マンションに住んだら住んだで高い月の共済費・修繕積立金、駐車場代などの支払い、高層階火災の恐怖、大地震でエレベーターが止まった際の階段の上り下り、リスクは想像を絶する。東横線武蔵小杉の高層マンション地獄はメディアでも報道をはばかるような生活困難地域に成ってしまった。

 一次はブームになった武蔵小杉の高層マンション群。元川底後に建った棟もあり、昨年2019年豪雨で地下室の発電機に浸水し停電で大問題になったケースがあった。

 筆者を例に取れば、武蔵野の台地で地震が来ても地盤がしっかりとしている為、周りの地域での震度より必ず1段階低い。なので調布が震度3でも三鷹は2なり1の場合が多い。

 超大型地震が来ても家の西側が直接大学のキャンパス(指定広域避難所)に接しているので安全。更には急激な集中豪雨があって排水溝がオーバーフロウしても、200m離れた場所が3mほど低くなっているので、そこに水が溜まり我が家の周辺は水が溜まらない。

 しかし景色に関しては全くメリットはなく、コンビニ・バス停まで500m以上というデメリットもある。何を優先するべきかを自分なりに考えての場所決めをした。

 勿論、ウインドサーフィンに狂っていた30歳台には友人たちの強い引きで風光明媚な湘南~葉山エリアに住もうと思ったことは幾度もある。候補は友人紹介の昭和初期の別荘だったり、富士山正面の相模湾を臨める、映画に出てくるような丘の中腹の白亜のハウスだったり、チャンスはいくらでもあった。当時は物件もまだ安く資金の工面も充分ついていた。

 しかし、相模湾の地震・津波、塩害で洗濯物が乾かない環境、都心までの満員電車の通勤、週末の観光客の大混雑、道路渋滞。風が強い絶好のウインド日和にも都心へ向かわなければならないストレス・・・。色々なリスクを考えて諦めた。

 球磨川で言えば、筆者の友人の先々代が荒瀬ダムなどが出来る際に山の中腹・高台へ集団移転し、今回の洪水災害には合わなかったと聞いた。やれば出来るのだろうと思う。

 そこに住みたいという生活者の心を尊重し大切にするのはもちろん大切な事だ。しかしそれが災害を発生させる原因の一つに成ってしまえば「我儘」に見えてたりもする。このあたりの微妙な状況をメディアは公正・公平に報道しきれるだろうか?