1953年、筆者5歳の時封切られた小津安二郎監督「東京物語」は色々な意味で日本人とその家族に関しての日常生活を表現した名画中の名画と言われている。
登場人物たちの日常生活における「会話の日本語」のすばらしさ、正しさはNHKでも定評がある音楽家の神津善行氏や奥様である中村メイコさんの言葉遣いにも似て、良き時代の日本文化・風俗を表現していると思う。
今や民放テレビどころか、NHKですら鼻濁音(びだくおん)ができない、聞き苦しい関西弁タレント・アナウンサーやコメンテーターが平気で闊歩している。テレビ局もそれを諫めないし恥じない。この指摘を「差別」とすり替えて放っておくメディアは、この先日本文化をどんどん破壊し続けるだろう。
どういうことか判らない人もいるだろう?
例えば東京人と関西人のユニットPUFFYの歌を聴いてみると良い。東京育ちの大貫亜美と関西・寝屋川育ちの吉村由美の歌う曲中の「が」の発音を比較すればすぐ判る。大貫亜美の「んが」と吉村由美の「がぁ」の差がそれだ。ウインクの「愛が止まらない」のカヴァーバージョンでは最初の方でこれが如実に出てしまっている。言っておくがパフィーは1996年デビュー時に少々関わったし、初期の曲、ELOの「Don't Bring me Down」にヒントを得た「アジアの純真」から始まって2000年頃までの曲は大好きだ。
話は戻って・・。
この映画「東京物語」が、すでに失ってしまった日本の良さを想い出させてくれることで、最近とみに評価が高まっていると聞く。その理由は原節子さんや香川京子さんの美しさや言葉遣いの美しさだけではないだろうとも思う。
この映画で凄いのが主役級の笠智衆さんの老け役。恐ろしい程だ。役の上での年齢設定は70歳、奥方役の東山千栄子さんが67歳だという。当時このお二人の実年齢は笠智衆さん49歳、東山さん63歳だという。
昭和53年頃の70歳ってこんなに老人ぽい感じだったのだろうか?信じられない!しかし笠智衆さん少し老け過ぎじゃないのか演技が・・。むろん小津監督の指示だったのだろう。
そんな中、鉄道150周年の今月、この映画を見返していて映像中いたる所に鉄道の場面が出てくることに気が付いた。今や名画DVDでも日本映画専門チャンネルを録画しても「東京物語」は観られる。録画した中から鉄道シーンの主なものを拾ってみた。
筆者が物心ついた昭和55~6年頃から鉄道には非常に興味をもっていたので、この映画の各シーンとはリアルタイムで接していたと言って良い。
鉄道150年記念にこの「東京物語」や「浮雲」での鉄道シーンを振り返ると、小津安二郎監督がやはり相当の鉄道好きだった事を確認した次第。