2024年9月1日日曜日

日本人は何故根拠のないランキングに一喜一憂するのだろう? Why do Japanese people feel happy or sad about baseless rankings?

  先月、新型コロナ蔓延時に非常に役に立つ「数値データに基づく感染状況サイト」を立ち上げ、非常に好評であった東洋経済が「全国住みよさランキング2024」を出した。毎年出しているという。 

 色々な観点から総合判断をしてランキングを決めているという。しかし、その判定基準は一切メディア上では公表されていない。もし知りたければ20万円~40万円するデータブックを購入しなければならないようだ。しかもその中にどの様に誰が何を基に判定したかという判定基準が明確に書いてあるかどうか判らない。

 筆者が散々お世話になり、過去14年間に300泊以上した人吉市が今年2024年版で何と全国一位になったという事を知り相当に驚いてしまった。


 しかし同時にこの判断をした人の中に人吉市生まれ、もしくは人吉市に住んだことが有る人がいったい何人いるだろう?そこまで行かずとも人吉市に来て泊ったことがある人が何人いるのだろう?と思ってしまった。

 確かに山奥で3万人以上が住み、かっては小京都の面影を持つ風光明媚な都市と言われた事もあった。かの司馬遼太郎も「街道をゆく」の執筆中市内の旅館に泊まっている。

 しかしその程度の都市は日本中至る所に存在する。「街道をゆく」執筆で泊まった宿は数知れないほど多いだろう。

 それが理由で全国一位になどなる訳がない事は誰もが常識的に思う事だ。一方で2020年7月4日の球磨川大水害で市が水没し、今市内中心部は歯抜け状態で「小京都」は見る影もなく、市民必死で復興中だという事実をこの東洋経済社はどう考えているのだろう?

 毎年雨季、梅雨の終わり頃、台風通過時に住民は避難避難の連続。2020年の大災害時は死者もたくさん出てしまった。八代からの鉄道・肥薩線(=旧鹿児島本線)は鉄橋が2本完全に消滅・ズタズタになりここ10年ほどは開通復旧の見込みが立っていない。再度似たような災害に見舞われれば復旧を諦めることになるだろう。

 何故そういった都市が「住みよさ」で全国一位になりえるのだ?おかしくないか?

 しかも「安心度」で全国一位って、ブラックジョークか?2020年7月の豪雨災害で人生が変わったり大損害を被った人達に大変失礼ではないだろうか?同時にこの東洋経済のデータのとり方と分析がまるで実情に合っていない事の証拠だろうと思う。

 人吉在住で身近な、お世話になった方々が相当な困窮状態になられているのを目の当たりにしているだけに怒りすら感ずる。

 さらに言えば、快適度(基準・要素は一体何?)365位、富裕度(平均収入?)695位で総合1位になる事のおかしさ・・細かく見ていけばいくほど不可解な順位決めと言わざるを得ない。

 「住みよさ」の基準を明かさず示さないまま、結果だけをランキングで出すこのやり方には筆者的に視て大きな疑問が一杯だ。かのミシュラン・ガイドと同じで一般的な感覚と相当かけ離れている事は否めない。

 東洋経済はランキング決定の理由を明らかにすべきと思うが如何だろう?ネットで見てもこういった説明しかない・・、要はこのランキング発表は商売なのだ。

つまり高額なお金を払わなければ、「理由※それもきちんと分析しているかどうか?」を教えないというシステム。

 全国トップになった人吉市民なり自治体の長は一瞬、無邪気に大喜びだろう、しかし同時に地元の実態を知っているだけに「?」もたくさん付くはずだ。頭の良い人ほど「あり得ない!」と思ったに違いない。この全国1位が逆に人吉市の足を引っ張るのでは?と心配した方は相当に頭が良いと思う。

 疑問はほかにもいくつかある。

 まず、昨年10位以内だった都市が100位以下に急激に下がっていたり、急上昇したりする都市があるが、その原因・理由は一体何なのだ?非常に重要だろう?

 昨年353位から今年48位にジャンプアップした「いなべ市」、同じく109位から15位にジャンプした福井の勝山市。何故なんだ?理由は?原因は?

 逆に1位だった野々市市が14位に下がった理由は何なのだ?5位の白山市が17位になった理由は何なのだ?こういったランキングを出す以上、目立った上下の理由を分析して発表してこそ経済会社ではないのだろうか?

 筆者は思う。

 そもそも「住みよさ」ってそんなに激しく変わるものなのか?変わって良いのだろうか?そういう観点から見ればこのランキングはあまりに根拠のない、いい加減なものだと言わざるを得ない。データ上の数値だけで現場の実態を考慮せず、調査員が行った事も無く、災害データも盛り込まず現状を無視した酷いものだと言わざるを得ない。

 まさかこの東洋経済社の高額なデータを買った所が翌年ランキングジャンプアップしたりするのではないか?人吉市を外から12年間見て、300泊以上し他所と色々な面を比較して「強みと泣き所」を知っているからこそ、この「住みよさランキング2024」全国総合ランキングの1位というメディア報道がうさん臭く感じられてしまうのだ。

 地域活性化にこのような根拠のない統計データ・ランキングなど決して役立たないと思うが如何だろう?現場を知ってこそ本当の地域活性化が出来るというもの。まさかこのデータを基に行政が「正しい事をしてきたた結果がこれだもんね」などと安易に思うのであれば大間違いだと思う。

 人吉市が全国で一番住みやすい・・と住んでいる方々が本当にそう思うのであれば、地元で調査をして見ればいいだろう?
 人吉市は去年9位だった(それも根拠をぜひ知りたい)、さて、来年度は何位になるだろう?人吉市民の方々がこれを観て、無邪気に信じてしまわれないことを祈るばかりだ。