2013年6月3日月曜日

■人物の撮影について・・・・1.


 自分には4歳年下の画家で学校の先生を長年やっている弟がいる。大学も全く同じ大学の同じ学部を出ているが、絵の才能ははるかに彼の方が勝っている。大体からして人物を描けるという事をとってみても彼の方が数段上だ。黙々と描くタイプで、私のように気まぐれな性格ではない。私などは絵画室で前の日に描いた自分のキャンバスが翌日登校してみて見当たらず探しまくった事が有る。要は前の日、自分が描いた制作途中の絵が判らないほど毎日気分が替わるという恐ろしい性格をしている。だから一日で描き上げられる水彩ばかりやっていた記憶が有る。

 少し話が飛んだが、この優秀な弟が在学中、「絵が描けなくなった」と頭を抱えた事が有った。自画像を一生懸命描いたのだが学校で他の仲間たちから「似ていない、何かが違う」と言われて潰れそうになった時期が有った。あまりに落ち込んでいるので話を聞いて、作品を見せてもらった。瞬時にピンときた。
 「お前さー、どうやって自画像描いてんの?」と描き方を訊いたら鏡に向かって自分の顔を見ながら、その横にワトソン紙を水張りをしたボードに向かって描くのだった。
 そこで、弟に説明をした、「あのね?鏡は左右が逆になっているの判るよね?だからお前が描いている自画像は左右が逆なの。だからこうやって描いた自画像を鏡に映してみてご覧、これが他人が見ているお前の顔、すごくよく描けているよ問題ない!」弟は翌日大学でそうやって皆に自画像を鏡に映して見せた所もの凄い反応だったという。 翌日から弟は天才と呼ばれるようになったらしい。

ウィキペディアより転載
 

 
写真もこれと同じだ。「私は写真映りが悪いの、だから写真撮られたくない」と言うご婦人が多い。「私、写真映りには自信が有るの!」と言う御仁には滅多に出遭ったことが無い。もしいたら普段からあまり良くご自分の顔をよく見ていないか、余程眼が悪いかどちらかだろう。
 つまり、人間は自分の顔を鏡に映った顔だと小さい時から思い込んでいる。左右逆の画像が自分だと思っている訳だ。しかし写真に映った顔は見慣れた鏡の中の自分ではなく鏡とは左右が逆の本当の姿だから「違う、似ていない、アタシャこんな顔じゃない!」になる。
 この辺りを「写真映りが悪いから・・」と尻込みする御仁に説明してあげると非常に納得する。

 一般に普通の人々は撮れた写真を視て、「良く撮れているじゃない?」と批評する事が多いが一体これは何を褒めているんだろうか?高いカメラだから良く撮れているとカメラに感心しているのか?撮影者の撮り方が良いから誉めているのか?想像や期待以上に自分が良く描写されているから自分で自分を歓んでいるのか?

 人物を描写するというのは油絵でも写真でも結局は同じ悩みが有るような気がしてきた。特に描写された被写体がモノ言う場合は特に大変だ。