筆者も一部お手伝いしている写真家 佐藤秀明さんプロデュースの写真展「私たちと野鳥の楽園・野川」開催までいよいよ1週間となった。
今回の写真展は完全に手作り写真展と言って良い。展示用ボード(=オープンな写真額)製作から写真の印刷、貼り付け、キャプション書き、印刷まですべてプロデューサー佐藤秀明さんの手作業だ。
スタッフが指示に従ってメイン作業をするのではなく、今やレジェンドと言われても良いプロの写真家さんが自分の手ですべてをコツコツと進めていくのだ。
いわば、あのクリント・イーストウッドが、脚本を考え、自分を含めたキャスティングを行い、カメラを回し、スタントもこなし、録音もして完パケまど持って行くというのに等しい。
筆者は幸運にもごくごくその一部のお手伝いをさせて頂けた。具体的に言うと、写真展の基本テーマに沿った野川らしい野鳥写真のパートで参加させて頂いたのだが、そのすべてをプロデューサーである佐藤さんに選んで頂いた。
最初、第一段階として筆者が野川及びその流域で2006年から17年間に渡り撮影した80種類以上の野鳥写真20万カット程の中から、自分で1000カットほどを選び、数回にわたって更にその中から300カットほどに絞り込んだ。
それを精査して、ピントが充分来ているカットを100カット選び、後は佐藤さんの写真展全体構想に合うカットをゆっくり選んで頂いた。
基本的に筆者の野鳥写真はその生態の瞬間を撮った証拠写真に近いものばかり、このブログをご覧いただいている皆さんは当の昔にご存じのとおりだ。
筆者の撮った野鳥はピントや露出、光の加減よりも「何かをしているその瞬間=証拠」の一瞬!が大切で、シャッターを切ったモノばかりなのだ。ブレていようが暗かろうが、何をしているかのある意味において学術的な証拠にさえ成ればいいのだ。
例えば、ヤマセミが撮影者の顔を覚えて、川原からわざわざ乗っている車まで飛んできてチョコチョコ寄ってきた・・だの、ヤマセミの幼鳥が枯れ枝をクチバシで咥えてへし折り、獲った魚を岩に打ち付ける練習をした・・・などは口で言って説明しても「んなバカな事があるか?」と言われてしまう。これを写真で記録して証拠として残すための撮影なのだ。
筆者の撮った野鳥はこの類、このレベルで一杯なのだ。
つまり人様にお見せして何かを感じて頂くような意図を持って撮影したものではないだけに、野川をフューチャーした芸術性豊かな写真展に相応しい作品を選ぶのは至難の業なのだ。筆者の感性ではとてもできなかった。
頭の中に一本ピーンと筋の通った理念というかコンセプトが無ければ出来ない事。それを佐藤さんは独特のあの感性を持って、いとも簡単に選び出してくださった。
その野鳥が珍しい種類か否か、あるいは出遭い難く撮り難いか否かなどより「写真として良いかどうか」で切って行ってくださった。プロの眼で見れば一瞬で判断できたのだろう。
今回の作業で、プロの写真家さんの感性と野鳥の生態だけに眼を凝らす者との差にイヤというほどの開きを感じてしまった。当然非常に勉強になった。