2022年6月4日土曜日

団塊世代は山小屋での時間の大切さを再確認した。 The baby boomers reaffirmed the importance of time in the mountain hut.

  筆者が社会に出たときは、青山のVAN(=ヴァン ヂャケット)という当時団塊世代のあこがれだったアパレルメーカーの広告宣伝・販促部門で時代の最先端の仕事を楽しんだ。

 以降、広告・宣伝関係の世界を進み、わりに世の最先端の空気・環境の中で仕事を行ってきた。しかし残念ながら、広告代理業の世界は物造りや実業の伴う世界(=一般企業)とは異なり、あくまで代理・虚像の世界、今でいうバーチャルの世界に近い。地に足のつかない根無し草の様なビジネス空間だった。

 実務力より言葉巧みに相手をその気にさせる、あるいは一部を肩代わりする代理業、仲介するような「口仕事」に近い世界だった。決して本人は実務当事者ではないのに「あれは俺がやった、俺の仕事だった」とさも自分がやったように吹聴する、あるいは本人もそう錯覚しているような人種の集まりだった。一般社会の企業の価値観や常識がまるでない世界だった。これは実務を持つ企業に二社勤めた後、その二社の広告を扱っていた広告代理店に入ったから良く判る。会社組織を卒業して歳を重ねれば重ねるほどそう確信するようになった。

 そんな経歴の筆者だが、毎年、2~3回季節の変わり目に必ず訪れる場所がある。霧ケ峰一帯だ。ここ15年以上はまっている野鳥撮影も勿論目的の一つだが、最近は脳と心の洗濯が半分以上の目的になりつつある。

 霧ケ峰の八島湿原は余程自分に合って、心が落ち着く大自然空間なのだろう。21世紀に入って訪問回数はかれこれ50回は下らない。

 ここ10年前からよくお世話になって、泊めてもらっているのがその八島湿原のはずれの山小屋だ。東京から行ってもこの山小屋には車を停められない。1.5㎞程離れた公共駐車場に車を停めて、一晩の荷物を持って木道を歩いて行くのだ。慣れないうちはこの木道を暗い時間帯に通る気がしない。

 しかも以前は電気も通じず、ランプの宿だったところだ。そういえば蓼科に在った広尾高校の山の寮も1964年頃はランプしかなかった。

 木造の宿のその温もりというか、木で出来た居住空間が非常に心地よい。薪ストーブにJAZZ、クラシックのレコード、誰もが一度は目にした書物が置いてある。それに加えて此処の客層を感じさせるピアノやアコースティックギターも置いてある。

 宿と言えば、ネットその他で意図的に話題にさせた「SNSで評判の人気 ホテル」に「インスタ映えする話題の料理」。他人に先駆け評判になりかけの宿へ行き優越感をSNSで誇張発信する人が多い中、こうした隠れた定宿を持ち、自分の思うがままの「目的」を持つ喜びをやっと最近感ずるように成った。

 その宿に泊まって何をするか?が希薄になって「そこへ行くだけ、行って泊まるだけ」になってしまっているのも「いま時の都会人たちの旅行と宿」の特徴かもしれない。

 SDGsなどという今や存在価値のほとんどなくなった国連推奨の「持続可能な地球に良い事」の模範的実行者と自己をアピールしながら、そのほとんどが石油から出来たプラスティックやアクリルガラス、化学物質で造られた話題の居住空間のホテルで、手の込んだ器の真ん中にちょこっと乗った料理を皿をいくつも替えながら楽しんで帰ってくる・・消費のみの旅行。一体どこがSDGsなのだろう?そういうのって矛盾の極みではないだろうか?

 今回、やっと長い冬から目覚めた霧ケ峰周辺を二週間をおいて二度訪問し、色々な事に気が付いたので少しご紹介。

 大自然の中で思うがまま枝を伸ばし続けた樹木の「美しさ」を感じた事があるだろうか?枝打ちされ、狭められ、人工的に育てられた人造公園や近所の樹木しか知らない都会人にはなかなか気が付かない事かもしれない。

 今回の山行きで、何故だか高原の思うがまま自然の姿ですくすく大きくなった樹木の凄さ、すばらしさを感じたのだ。

 何故高原に居ると心が落ち着くのだろう?実はこういった自然樹木の剪定されない「真の姿の植物」に囲まれる事が、実は非常に重要なんだと思った今回だった。

 もちろん思った以上に珍しい野鳥の生態を観られ、撮影成果を得られたのもそういった余裕が生まれた理由だったのかもしれないが・・・。

行く都度思うのだが、この木道のアプローチは素晴らしい。

車を置いて1.3㎞歩いてやっと到着する山奥の宿。今後もお世話になる回数が増える。

確かに野生動物も近くにいるだろう、でもそれが「本物の自然」なのだ。


今はズミの花が咲き始め。

剪定、枝打ちなど一切しない自然の樹木はフォルムが非常に美しい。




自然の中の老木と若い樹木の関係を観るのも面白い。

昭和30年代の最初の建物。ランプだしビーナスラインもなかった。

現役の薪ストーブ


この宿の管理人、若夫婦がまた非常に温かい。

美味しいビーフシチュー。

美味しいハンバーグ。

高原のトーストと珈琲は都会のモーニングとは全然違う味がする。


此処の二階の廊下には数百冊の書籍が並んでいる。読書だけに行ってもいい。

 今日のブログは決してこの宿の宣伝ではないので、詳細はご紹介しない。もし興味を持たれたらご自分でネット検索を。ちなみに持って行って出たゴミは必ずすべて持ち帰る!これが出来なきゃ行く資格がない。尾瀬などと一緒の山の精神を持っていないとSDGsじゃないだろ?