2022年3月5日土曜日

団塊世代の「お笑い」野鳥撮影現場レポート。 Baby boomer generation "laughter" wild bird shooting site report.

  色々なカメラを携えて色とりどりのダウンジャケットを光らせながら、群れ集うバーダーさん達の野鳥撮影の現場は一体どのようなものか?

 今回は筆者の経験値と、最近の野鳥撮影現場での収録による「バーダー」と言われ最近急増している野鳥撮影カメラマン達の笑いと涙の現場「仮想中継」をお届けしたい。

 世の中に野鳥撮影ファン(=バーダー)と言われる方々は、「鉄ちゃん」あるいは「鉄子」と言われ、あちこちで問題を起こしメディアを騒がす鉄道写真撮影ファンたちよりはるかに多い様だ。

 一般の野鳥が好きという趣味人の集まりである「日本野鳥の会=約5万人」の登録構成人数と「鉄道友の会=3000人・筆者も1962年中学生時代所属していた」のそれとを比べてもその差が判る。

 勿論、こうした団体の構成員が全員カメラを持って撮影をする訳ではないし、逆にカメラを持って頻繁に撮影するから団体に入っているか?というと、むしろ「日本野鳥の会」になど入っていない筆者の様な人の方が実際は多いと思われる。

 しかしカメラショーに行っても、鉄道撮影の実例でカメラの性能をアピールするメーカーや企業より、野鳥をモチーフに撮影するトークショウやシミュレーションの方がはるかに多いし人だかりも多い。

 Wikipediaを検索したら「野村総合研究所オタク市場予測チーム による「オタク市場の研究」(東洋経済新報社)によると、鉄道ファンは約3 - 5万人、市場規模は40億円と推定されている。」・・とある。野鳥撮影関連で言えば決してそのレベルではとどまらないだろう。

 現場を見ても判る。さよなら○○号、などの列車引退運行の際のホームの大騒ぎの現場にまずオバちゃんは居ないだろう?小中学生から、予備校生のような風体の年齢不詳の若者がまず圧倒的に多いはずだ。次に妙に太って汗だくで走り回る青年中年層が多く、高齢者はあまり居ない。

 昭和の時代、SLブーム全盛の頃、今よりはるかにフォトジェニックな被写体をそれなりの風景をバックに撮影出来た団塊世代などの高齢者は、今の趣に欠けるスタイル・デザインの鉄道・列車になど興味を持たないからなのだろう。古き良き時代、日本が車社会に成ってしまう直前の鉄道黄金時代に「鉄道撮影の醍醐味」を味わい尽くしたからだろうと思う。

 その点、昭和も令和もあまり変わらない自然界の野鳥撮影は、決まった時間(時刻表通り)に、あるいは情報通り(引退列車・季節列車など)に必ず線路の上をやってくる鉄道とは違い、まず目当ての被写体を探し当てることから始まるのではるかに奥が深いのだ。

 基本的に野鳥撮影の世界は「待ち」のスタイルと「探す」スタイルの二派に分かれると言って良い。「待ち」のスタイルはNHKの「WILDLIFE」の収録などと同様、目指す被写体の情報を集めに集めてポイントにブラインドなどを張って「待つ」のだ。来るまで待つのだ。

 これで待っていて現れた事をバーダーの一部では独特の表現で「出た」と言う。で、季節の鳥が居なくなったのを「抜けた」という。筆者は嫌いな言い方だ、使わない。野鳥の立場で考えれば、カメラを持った人間の方が「出た!」という感じだろう?

 初心者がベテランや地元の鳥情報を頼りに、教えられた場所をうろつく方々もこのスタイル。やたらお喋りしながら徒党を組んで探し回るオバちゃん達が多いのもこのあたり。特徴として傍にいる人にやたらと訊く「何が居るんでしょう?」自分で探せよ!と思う。

 「珍鳥・迷鳥・出会い難い種」を狙う人々が多いのもこの類。筆者のヤマセミの生態観察の様に東京から人吉市に10年、50回以上通い300日も滞在したのも、その部分に限って言えばこの部類に属すだろう。

 しかし筆者の場合は人吉市へ行って泊って、ヤマセミの観察時間以外はレンタカーで色々な野鳥なり自然を探し回るので、半分以上はこの次の「徘徊・探す」タイプとなる。

 で、一方その探すタイプは、野鳥の事を良く調べて(生息環境・鳴き声・居る季節など)いて、居そうな場所も事前に調査してそれなりの季節にそれなりの行程を組んで単独行動する。

 派手な色を着て野鳥に警戒心を与えない様、目立たないアーストーンのアウターや迷彩服に身を固め、長距離を歩いても問題ない靴や装備と重量で探鳥地へ赴く。

 勿論トイレや食事の事も想定して前日から水断ちなども行う。自販機やコンビニなどを当てにせず災害地へのボランティア極意に近い状態で行動する。

 勿論徒党を組んでおしゃべりをするなどありえず、単独行動が常識。全神経を集中し、視力、聴力、嗅覚力を100%働かせて行動する。特にバズーカ砲に近い超望遠レンズを持って行く場合などは、戦場のスナイパーに近い心境(~ってよく知らないが)かもしれない。

 今年に入って最近東京郊外へ数回(5~6回)探鳥に出掛けたが、コロナ禍で2年間自宅に閉じこもっていた反動なのか、手にそれぞれ最新のカメラを持って、大勢で「話題の野鳥」を取り囲みバシャバシャやる場面に頻繁に遭遇した。

埼玉県の某所

こちらも埼玉県某所

 皆さんどのようなカメラをお持ちなのか、埼玉と千葉の二か所でマーケティング的に調べた結果が以下のようだった。

A地点(埼玉県)

➀コンデジ=2名 ②入門用デジタル一眼12名 ③セミプロ・プロクラス7名

B地点(千葉県)

➀コンデジ=0名 ②入門用デジタル一眼7名 ③セミプロ・プロクラス3名 

この場合の➀~③各クラスを説明しておこう。

➀コンデジ=コンパクトデジカメ・レンズ交換不可(ただし光学40倍などの機種も)

②入門用デジタル一眼(ミラーレス含む)=レンズ交換可・望遠レンズ200mmどまり。

③セミプロ・プロクラス=500mm迄の純正ズームなど、レンズ専門メーカーも使用。

 なお、ズームレンズに迷彩柄ステッカーを貼って一端のセミプロを気取る御仁も多いが、貼る貼らないは好みで単なる流行り。撮影の技量にはまるで関係ないので無視。なお撮れた画像の腕前も全く判らないので、お持ちの機材のレベルだけ調査してみた。

 で、これらの方々が人気の野鳥の周りに集まってバシャバシャやる訳だが、この際の会話がメチャクチャ面白い。

 概ねセミプロ・プロクラス以上の機材をお持ちの方はやはり単独行が多く、入門用のレンズ2本キットなどで購入された方々は、大概2名もしくはそれ以上の仲間と同伴が多い様だ。

 今回のタイトルに「お笑い」と入れたのは、まさにこの数名で連れ立って来ている方々の現場会話がメチャクチャ面白くてブログ化させて頂いた次第。 

 行動を見ているとこの連れ立ちメンバーの皆さんの特徴が良く判る。現場に行くと丹念にじっくり野鳥を捜す様子はまず見えない。木道なり地道をキョロキョロして「何処だろう?」と必ずぺちゃくちゃ話合いながら林間を進む。これは決して野鳥を捜しているのではなく、望遠レンズを持ったバーダーの集まっている人垣を捜しているのだ。

 そうして3名ほどがレンズを樹の梢に向けていると、すぐその後ろに回り込んで望遠レンズの向いている方向を丹念にトレースする。さすがにすぐ脇にぴったり身を寄せて撮ろうとはしないが、これは決して自分の加齢臭で迷惑を掛けてはいけないと思うからではない。方向的に鳥がいるあたりだけはしっかりと脳に焼き付けるのだ。

 しかし皆さんも経験があるだろう、居る枝など覚えたつもりでも、一旦目を離すと何処だったかすぐに判らなくなってしまう。広い地下駐車場で自分が止めた場所をすぐに忘れてしまうのに似ている。

 7~8人が固まっているのを見つければ、もう狙いの野鳥が撮れたように安心した気分になるようだ。皆同趣味・つまり同志だもんね?みたいな雰囲気になってはしゃぐ人が出て来る。普段会社でお調子者と言われている人などが此処でも面白いのは、もう仕方が無い事だろう。

 これはある日の千葉県の谷戸湿地帯での撮影の人々の内の2人連れの様子。ベテランの数名が暫くの間待っていたらしく、やっと行動を開始した小さなミソサザイ・・。運よく通り掛かった筆者の記憶(二人の会話)を再現してみた。

この時筆者が撮影したミソサザイ。

「えっ、何処何処?」

「ほら、其処のシュロの細い木の根元!」

「えー?細いシュロって4本あるじゃん?どれよ?」

「イヤー、緑の細かい丸い葉っぱが切れるあたり・・。」

「緑のって・・葉っぱはみな緑色だぜ・・」

・・ここでこの二人の右の方でシャッター連写の音しきり

「あーっ、そっち行った、行った」

「えっ?そっちって右?左?」

「右か左かって、お前は俺のどっちに居るんだよ?右に居るオマエに向かって左をそっちとは言わねーだろ?」

「カメラ覗いていると判んねーんだよ。」

「えっ?ファインダー覗きっぱなしなのお前?まず肉眼で探してから狙えよ」

「だって肉眼じゃこんなに暗い所でチョロチョロするモノ判る訳ねーだろ?」

「じゃ、お前一人で来たらどーするつもりだったんだよ?」

「そんなのい~から、で、何処へ行ったのミソサザイ」

「消えた・・・。」

ここで画像を確認する一人。

「駄目だよなー・・・アッ、でも撮れてる!やったね!よしっ!」

「どれどれ?・・・これウグイスだよ」

「えー?いつスリ替わったんだよぉー、クソッ」

・・・お目当てのミソサザイは既に離れた場所に移動してしまっているのでした。

この二人連れの会話とこの画像は関係ありません、念のため。