今日の話は野鳥の「巣」と「塒=ねぐら(寝床)」の違いに関しての話だ。勿論ベテランのバーダーの方はこの段階で今日のこのブログから退出されるだろう。
童謡に「ななつの子」という唄があるが、その歌詞に「山の古巣へ行ってみてごらん、可愛いななつの子があるからよ♪」という部分がある。どんなカラスでも大抵5個の産卵が普通なので、7羽もヒナがいるのはちょっと大げさだろうが、巣に行けばヒナが居るという所はお判りいただけよう。
しかし、ヒナが巣立った後「巣はどうなるの?」「夜は巣に戻って寝るの?」という疑問をお持ちに成った事は無いだろうか?
「巣」は繁殖の期間一時期子育てをする為の施設で、決して寝る所ではないのだ。言わば「巣は女性の子宮」という見方すらできるのだ。特にヤマセミの様なシラス壁に横穴を掘って子育てするような場合はまさに子宮と言ってもおかしくなく、其処から巣立った幼鳥がそこへ戻る事は絶対に無い。20分前に巣立った巣穴から、翌日巣立つ次のヒナが顔を出している横を、見向きもせず飛び行くヤマセミの画像を幾つも撮影した。
一方で寝るのは樹の葉や枝に囲まれて天敵などから身を隠せる安全な場所で「塒(ねぐら)もしくは寝床と言う」・・・が基本的な事なのだ。ヤマセミも同様だと思われる。
ツバメやムクドリ、スズメ、セキレイなどは大群で夕方になると、まとまって樹木の枝に留まって寝る。ツバメの場合など、奈良の平城京跡などに数万の大群で塒入りする事は知られている。
岡山県倉敷市のメインストリートの街路樹にムクドリが群がって塒入りしているのを発見、寝静まった真夜中街路樹を足で蹴ってみたら、ボトッ、ボトッと3羽ほどムクドリが落ちてきた事があった。
東京西部の昭島市のJR昭島駅前ロータリーの樹木にセキレイがワンワンに群がって塒入りしているのを目撃したこともある。
こうやって、集団で塒入りする野鳥もいれば、単独で何処かの山奥で秘かに寝入る野鳥もいる。筆者が研究しているヤマセミもその最たるもので、シラスの壁に穴を掘って繁殖子育てする一方で、ヒナが巣立った後は二度とその巣穴に戻る事は無く、ファミリーで何処かでまとまって塒入りしているものと思われる・・・と言うのは、ヤマセミの塒を突き止め、画像証拠などが過去の文献・図鑑の何処にもないのだ。筆者もいまだにこれだけは判らない。
一方で大型の猛禽類はある程度塒が判っている。特に葦原で寝るチュウヒの類は大勢のバーダー(=人間)が見守る目の前で、悠々と葦原に消えていく。霞ケ浦の浮島湿地などでは10羽以上のチュウヒが葦原にどんどん消えて行くから観察していて面白い。
今日の画像は暗くなっても画像に残りやすいハイイロチュウヒのメスの塒入りをご紹介。渡良瀬遊水地と霞ケ浦で観察撮影出来ているが今回は霞ケ浦での撮影データ。
独特のV字飛行で名高いハイイロチュウヒのメス。
夕方相当暗くなって日没後突如現れた。
右へ左へ、葦原の上を悠々と3周した。
そうして4度目の左から右への移動中・・・。
急に両脚をだらーんと下げて・・・。
高度を下げ、
葦原へ斜めに降下していった。
ホバリングして一旦空中で溜を作ってからドスンと降りる場合もある。
この時は本当にスムーズにス~ッと塒入りをしていった。
殆ど何処だか判らなくなる見事なものだ。