ここ数年、コンパクトデジタルカメラが異常に市場から減った。もちろんスマホのカメラ機能の格段の進歩が影響しているが、撮る側の人間の写真というものへの常識が大きく変化したこともあるだろうと思っている。
音楽と同じだ。昔は30㎝直径のレコード盤をターンテーブルに置いて、世界中から集めた有名な人気オーディオ装置を通して澄んだ高音、腹を打つ重低音をリスニングチェアで楽しんだものだ。
オープンリールのテープレコーダーが音源の場合はヒスノイズを気にしながら、同時にタテに置いたテープレコーダーからピンチローラーやキャプスタンの不具合で床に海藻のようにテープが溜まっていないかどうかチェックしつつ聴き入ったものだ。
レコードジャケットや音楽情報誌に目を通しながら、LP片面の30分ほどをじっくり聴いたものだ。
針を置いた際の「ボン」という音で適正音量を確認もしたし、自分のレコードの何処に傷があるかわかっていたし、低音の出方がいつもと違うな?と思うとトーンコントロールの低音部のつまみの位置がいつもと違ったり、ラウドネスコントロールが入っているかいないか、超微妙な音の変化に気づいたものだ。
それが、カセットレコーダー(ウォークマンなど携帯用も含む)、を経てアップルのiPod/shuffleが出現。何世代もの進化を経て音楽というものは今やイヤホーンで聴くものに替わった。
数日前のニュースで現代人の60%以上は1か月に1冊も本を読まないという。
地方都市から本屋というものが消えたのも、筆者は野鳥の撮影で九州熊本県・八代市・人吉市へ2010年頃から通って良く知っている。
なぜこうなったのかとメディアはいろいろな事を原因として挙げているが、いずれも「これだっ!」というものは無い。
筆者は思う。人類どんどん便利で楽に事を成せるモノを発明し、それを売って儲けるシステムが氾濫するので、人間がその便利さに群がり「人間的な行動・風俗・文化」を替えてしまっているのだと・・・。
昔本を見ていた時間、人々はテレビを観るようになった。そうして21世紀になってどのTV局も人気俳優の三文ドラマや金太郎飴のごとくお笑い芸人が並ぶバラエティ番組になって飽きられ、ネットを見るようになった。人が創った物語ドラマより、笑うだけが狙いのバラエティ番組より、世界中の劇的な瞬間のリアル動画、Youtubeのリアル画像の方が面白いのだ、気を引かれるのだ。
筆者が北九州の小倉市で小学生3~4年生の頃、テレビが世の中に普及し始めた。朝学校へ行くと「ねえねえ、昨日の『お笑い三人組』観た?面白かったねー?」「猫八が本当に転んじゃったのは最高だったねぇ?」こういった話題で一杯だった、テレビのあるうちの子供たちは・・・。
我が家にはテレビがまだなかったから、この会話には入れなかった。人が本を読まなくなった第一次時代はこの頃ではないだろうか?テレビに読書の時間を取られたのだ。
町中本屋さんが立ち並び、貸し本屋さんが繁盛し、図書館が混雑していた時代、これは昭和40年代に入るとどんどん消えて行った。今は更にそれが進み本どころかテレビも観なくなりつつあるのだ。文明の利器で人間の行動がどんどん変わりつつあるのが今なのではないだろうか?その一番の原因がスマホだと筆者は視ている。
歩きスマホ、バスの乗降スマホ、座席でスマホ、満員電車で立ちスマホゲーム。スマホが人間の行動を替えているのは間違いない。
これは、行動形態を変えているだけではなく、スマホを見ながら街中で人にぶつかり、スマホを見ながら電車に轢かれ、駅を乗り越してしまうのだ。スマホを見ながら追突交通事故を起こし、人を殺し、自分も死んでしまうのだ。
カメラも一緒、スマホでインスタグラムという投稿サイトに投稿して「いいね!」を貰いたい、褒めて欲しい・・。これがカメラという機器の存在を人類から忘れさせようとしている。スマホでカメラ設定にし、ピントを合わせてシャッターにタッチするだけ。
だからスマホで撮った写真はいつも同じパターン、良いお顔を作った撮影者が仲間と自撮りで「ワイワイ画像・アリバイ画像」を撮ってFacebookやインスタに投稿する。プロのカメラマンですらやたら投稿したりする。いいね!をもらいたい・・あるいは自己アピールも度を過ぎると厭らしい。
もちろん写真展や写真集の写真とは違う。新しいジャンルが生まれたのだがこういったイージー写真とアートとしての写真、それに広告写真、写真というジャンルが細分化しはじめてしばらく経った今、筆者はライフワークの野鳥の生態写真以外に日常の景色の移ろい、日々の何でもない風景をコンデジをポケットに撮りまくっている。特に雲や太陽・月など空の変化は一瞬だ、これに気が付かないようでは「写真を撮るのが好き!」などと言ってほしくない。
尊敬する写真家さんの行動力、観察力、活動範囲、作風の幅広さ・・これに少しでも近づくために1日100カット!を志している。
被写体を収録するにはセッティングからシャッター押すまで時間の掛かりすぎるスマホは全く役に立たない。飛んでいる野鳥や低空で飛ぶ航空機を撮れないスマホは筆者の目指す写真にはまったく役立たない。
今写真を撮る事がとても面白くてしょうがない。歩く時も走る時も、ポケットにいつもコンデジを! これが筆者の今の合言葉だ。