2022年8月15日月曜日

ブログ開始から10年目に入って団塊世代が考える写真撮影について・・#8。 After 10 years since this blog started , baby boomers think about photography again #8.

 団塊世代の写真愛好者はなぜ星野道夫に魅かれるのか? Why the baby-boomer like photographer Michio Hoshino ?

 筆者の尊敬する写真家は数名居る。

 まず圧倒的に影響を受けているのは佐藤秀明氏。ハワイものだとか、ニューヨークだとか、あまりに幅広い被写体、シリーズに「何が凄い?」とジャンルで括れない、たった一人お手本にさせて頂いているプロ写真家さん。

 作品そのものに惹かれるのは勿論だが、よりその撮る姿勢、シャッターを押すまでのプロセスがものすごく勉強になるのだ、筆者も一生懸命真似し盗もうとは思っているが・・・まるで出来ない。でも、いつの日にかとは思っている。

 そのほか、ウインドサーフィン関係ではまずスティーブ・ウィルキンス氏(師と言って良い)、同い年で1973年一緒にアンアンの対談に出て以来の付き合いだった故・前野やすし氏(彼に400㎜レンズを貰った)。

 そうして自然・動物系では圧倒的に故・星野道夫氏と岩合光昭氏だ。 

つい数日前、市川市の公共施設で観てきた。是非お勧め。

シロクマやカリブーばかりではない動物作品が筆者には魅力的だ。

年末年始にはTOP MUSEUMでも展覧会が待っている。

 星野道夫氏は20数年前カムチャッカ半島で撮影合宿中・野営テントをヒグマに襲われ亡くなってしまった。その事故の方が当時は報道で有名になったが、その作品に関してはやっと此処10年前辺りから高い評価を得るようになってきた。

 一度地元市川市ニッケ・コルトンでの写真展でお逢いした奥方の星野直子さんの努力も在って、最近は多分広告代理店もバックに入り、大きな写真展も各地で開かれているので、行かれた方も多いだろうと察する。

星野道夫の旅・展= http://www.asahi.com/event/hoshino20/

 いつ見ても思うのだが、特に団塊世代の写真撮影愛好家で自然や動物(野鳥も含む)の撮影をしている者にとって、彼ほどその作品から教わる事の多い
人はいないと思う。

 自分でもプロの彼らの数パーセントのレベルにしろヤマセミの生態を観察し、撮影している同類として、その作品を見れば見る程、そのすごさが良く判る。

 狙った野生の生き物の情報を地元の人間達から集め、自分の眼で確かめ、航空機をチャーターするなり、自分の足で徒歩で向かうなどしてその動きを追う。そうしてあらかじめロケハンをしていた素晴らしい背景の前で狙った通りの「画像」を収める。

 現在の最高級一眼レフ・デジタルではない、大判銀塩カラーにしか表現できない雄大さ、繊細さが見てとれる。

 松屋の写真展で見た中では、マーモットのようなホッキョクジリスが立って画面の左方向を視ている、その背景の雄大な山々にきちんとピントが合ってその広大さが表現できている。望遠レンズではない、望遠で撮れば当然被写界深度は浅いので小動物にピンが来れば背景はあれほどくっきり表現できない。
星野道夫のホッキョクジリス、背景の山々までの大自然が素晴らしい。

普通に小動物を撮るとどうしても背景はボケてしまう。この表現の差に感動。

 一方で、広角なら充分表現できるものの、その為には小動物に余程接近しなければならない。彼はどうしたのだろう?不思議な事を沢山画面が訴えてくる。
 とかく、珍しい動物や野鳥が被写体だとどうしてもその被写体にズームアップした写真を撮りたがるが、彼・星野道夫はそこをぐっとこらえて背景の大自然の中での生き物をきちんととらえている。其処が並みの動物写真家と違う所だろうと思う。

 アラスカのイヌイットだろうか、満月の夜カヌーで狩りに出る。遠くに満月が見えている、という事は夕日が沈んで少し経った頃だろう。西の夕陽の名残の灯りでイヌイットが写せている。高緯度なので白夜に近いのかもしれないが、極でしか撮影出来ない不思議な色をしていた。
全て星野氏の画像は今回写真展図録より

 一つ驚いたのは、別冊太陽に出ていた彼の取材メモ。筆者もヤマセミの巣立ちまで21日間車の中から観察を続けて詳しいメモを取って在るが、彼のメモはテントの中か宿で綺麗に書いたものと思われる。きちんとしている。

 こちらは入れ替わり来る親鳥の♂♀確認その他、獲ってきた魚の種類までなんとかその場でメモるため、どうしても汚いメモでしかも英語で書かざるを得ない。
 別にかっこつけている訳でも無く英語の方が余計な形容詞を書かないで済むので楽なのだ。一番の理由は日本語は漢字・ひらがな・カタカナの3種類の文字を使わねばならないが、英語であればアルファベットだけなので簡単。更にそう沢山の単語を知っている訳では無いので、逆に楽なのだ。

 この辺り、星野道夫氏の几帳面な性格が判って面白かった。