2021年6月27日日曜日

2021年東京都内でツミの繁殖レポート最終稿 その4. 2021 Report on the breeding of Japanese sparrowhawks in Tokyo Part 4.

  都内で今年2021年繁殖した小型猛禽類のツミ ファミリー。繁殖における巣立ち前後・クライマックスだけの観察だったが、非常に面白かったし感動もした。以前NHKの番組で多摩エリアのバス路線の街路樹で繁殖するツミの生態を観て気になっていた。同時に毎日朝5時半の愛犬の散歩で見かけた住宅街でのツミの生態と照らし合わせながら大変勉強になった。

 今回情報を連絡してくれた中学校時代の同期生には大変感謝している。もうお足を向けて寝られない。

 昨日の投稿では親鳥が獲物を食べやすくして巣に持ち込み、ヒナに与える場面までのご紹介だった。実は筆者は先の二羽の巣立ちの瞬間には立ち会えていない、多摩地区から都心部を通過しての通いで観察なので、そうやすやすとは良い時に出遭えないのは仕方がない。

 しかし、このツミの場合シジュウカラやヤマセミの様に一度巣から巣立ったら二度と巣に戻らないという事は無く、ヒナたちは巣の近所の樹上で世の中に慣れるのと同時に、親が給餌に来る場合はまた巣に戻って三羽で仲良く親を待つのだった。

 これは非常に驚いた。今の今まで野鳥は巣から巣立ったら二度と戻らないものだとばかり思いこんでいたのだが、親が餌を咥えて来る前に先に巣立った二羽がちゃんと巣に戻っていたのだ。

 で、先に巣立った二羽が先に食事を終えると、巣の横の枝にとまり、まだ巣立っていない頭の白い末っ子が親から給餌を受け、終わって親が巣から出ていく瞬間を撮影出来たのが今回最大のハイライトだった。

 巣の周りを360度丹念に回り、葉に隠れた巣のかすかに垣間見える撮影ポイントを探し続けた結果のご褒美だった。

 基本的に野鳥が営巣・繁殖している時には巣に近づいたり、覗き込んだり、ライトを当てたり、周りで騒いで警戒させてはいけないというのは当たり前のルール・マナ―なのだ。

 しかし、ことツミに関して言えばバス停の上の樹に営巣したり、公園の道路上の樹木に営巣したりして、そこいらのハトやカラス同様、人間世界とその生息域を共有している。

 したがって巣の下をベビーカーを押したファミリーやカップルがいくら通っても、見上げても全然平気で繁殖活動をしている。これは今回の観察でも実体験し非常に驚かされた。        

 親がキャーキャーキャーキャーと鳴きながら餌を運ぶぞ!という合図でもしたのだろうか?三羽のヒナが巣に集合した。

三羽揃ったところで親が餌を運んで順番に与える。

先に餌を貰ったヒナは既に一度巣立っているので傍の樹に移ってじーっとしている。

時々末っ子への給餌をのぞき込んでいた。右に見えるのは給餌中の親の尾羽

末っ子への給餌が終わった親はヒナを残してさっさと巣を離れていった。

しばらくして巣から10m程の樹に一羽の巣立ったヒナが来た。やはり少し小さい。

と、もう一羽が木を伝って歩いて来るが足元がおぼつかない。ヨロヨロしながら登場。

何とか兄弟の傍へ行こうとバタつきながら接近。

待っている方はその様子を注視して・・。

やっと兄弟が一緒になれた。

10分もするとこうした間隔で落ち着いた。

20m程離れた木の上からメスの親が様子を見守っていた。これが巣立ちの生態の様だ。

ところで!

 今回の3回の観察で、実はあまりよろしくない人間の状況をも観察してしまった。この公園は割に人通りが多いうえ、普段近所から自然を楽しむ方々が多数訪れているようなのだが、このツミの繁殖を観察・撮影する人々に高圧的な態度・言動、あからさまな嫌がらせをする地元爺さんグループがいた。
 
 筆者は全国で野鳥の観察その他を廻っているが、よそから来る観察者や撮影者を排他的行動で拒否する、あるいは追い出すような行動をとる人たちが各地でごくまれにいることを身をもって体験してきた。
 野鳥観察のマナーやルールを守り、そのエリアの住民への撮影による迷惑行為を避ける心得は大変大切な事で、筆者も用心し神経質なほど守っている方だと思っている。
 
 しかし、

 この公園には地回りとは言わぬが、結構ご高齢の爺様たちが連日折り畳み椅子に腰かけ、ツミの繁殖を観察するでもなくサロンの様に雑談をしていて、よそから来た観察者・撮影者に色々注意をしているのだった。

 筆者も最初行った際、巣の場所が判らず周りの人たちが向けるレンズの方向を探って巣を探しつつ、その様子をしばらく遠巻きに見ていたのだ。
 
 そうしたら、舗装された通路上で立ち止まって巣の方向へカメラを向ける御仁に「其処っ!道路から撮らない様に、脇へ寄って撮れ!」「警察が来るぞ!」・・もういきなり命令調だ。



 よそから来た人は、まず一様にこの恫喝的指導にそうとうびっくりしているようだった。画像は一般の人に写っている個人が判別できない様にわざと画像処理してぼかしてある。

 見ていると、道路上で立ち止まって撮影する女性の撮影者には何も言わない、スマホで撮る人にも何も言わない。しかし高そうな望遠レンズのカメラマンには大声で指図していた。
 
 たまたま筆者の横にきて岩に腰かけている数人は、神奈川から来た方野鳥撮影グループの方たちらしかったが、小声で「何ですかあの人たちは?」とブツブツ言っていた。そのうちいきなり言われて食って掛かる御仁が出てトラブルになるのは間違いのない所だろうと思った。
 
 公園で人通りが多いので、他の人の妨げになっては迷惑だというのはよく判るし、撮影者同士で譲り合い、注意しあうのは当然理解できるが、いきなり大声で恫喝まがいの指図は良くないだろう。

 そのくせ、ツミの親子に何か具体的な動きがあると、真っ先に道路の真ん中で仁王立ちでレンズを巣やツミに向けていた。思わず笑っていしまったが、無邪気な老齢者とはいえ「良い事をして、秩序を守っているんだ俺たちは・・。」も良いが、その方法にいささか問題があるのではないだろうか?

 更に、三回目にはこんなこともあった。

 いろいろな角度から巣への見通しを探っていて、あるポイント(3~5枚目のカット)から巣と巣立ったヒナの写真を収録した10分後、どうなったかまた見に行ったら、その爺様の仲間の一人がそのポイントで頑張って巣を見上げて撮影していた。もう既に親鳥も巣立ったヒナも何処かへ移動していて居ないのだが、その場所に陣取って巣を撮っている、それもいつまでも何カットも。

 で、どうしてツミが一羽も見えない巣だけをファミリー用のカメラ(多分真っ黒になるか良くてシルエットにしかならないはず)で、何故何カットも撮っているのか最初は判らなかった。で、よく考えたら、そういった場所は自分たちの縄張りだという主張の行動らしかった。いわゆる犬や猫、アフリカの獣たちのような臭い付けの一種なのだろう。

 もしボランティアで秩序を整理するのであれば、腕章なり首からそれなりの説明を書いた札を下げるなりすべきで、普通どこの誰とも判らぬ者にいきなり恫喝されれば、よそから来た人は訝しがるだろうと思う。見知らぬ他人に上から目線で指示したり恫喝するのは気持ちがいいかも知れぬが、たぶんそのうち痛いしっぺがいえしを喰らうだろう。そちらの方が心配になってしまった。

 帰りに交番でこの件を聴いたら、「そうなんですよ、実は遠くから来た方からずいぶんクレームが出ているんですが、困りましたねぇ」だそうだ。悪い事をしている訳ではないので、恫喝された、自由を阻害されたというクレームが持ち込まれた場合は現行犯で「口頭注意」が最大の措置だとの事。お巡りさんがいちゃそういう事はもちろんしないだろうからイタチごっこだ。渋谷辺りのスプレー落書きに似ている。

  今回はおかげさまで大収穫だったが、同時によく言われる「撮り鉄」や「景色・花」撮影者、「野鳥撮影者」にありがちなルール・マナ―違反とは少し違う「あってほしくない野鳥撮影現場の弊害」の新しい私設マナー警察に出遭ったような体験をもせてもらった。

 これは東京だから起きる事なのだろうとは思うが・・・。