最近、自費出版を勧める数多くの印刷屋さんの広告がネット上に出ている。丹念に詳しく調べてみると千差万別、それぞれの出版屋さん印刷屋さんとも業界内の同業他社を調査もせず、バラバラの印刷費・製作費で勝負に出ているようで驚いてしまった。
同じ1冊の本(100Pフルカラー写真集)を1000部作るにしても1冊あたり400円を切る所から1冊あたり5,000円以上もする所があって、未経験者にはとても怖い世界である事が良く判る。
もちろん、DTP(DeskTop Publishing=デスクトップパブリッシング)でデジタル入稿して、ただ印刷をする所から、写真(規定のデータサイズ)さえ用意すれば、レイアウトからページネーションまですべて先方がやってくれる・・という所まで色々ある。
筆者の場合は長年撮り溜めたデジタル画像を画像処理ソフトでトリミング・拡大縮小・その他規定のデータサイズへ統一処理をして、まずCanonのPHOTOPRESSOで100ページほどのテスト版写真集を作ることにしている。
これをネット上で一般公開し、その反応を視て本印刷(きちんとオリジナルのレイアウトで130ページほどの写真集にする)をしてきた。もちろん本印刷はオフセット印刷だからデジタル画像のRGBデータを印刷用のCMYKデータへ変換したりページ帳合に応じた微妙な誌面バランスをDTPのプロである筆者40年来のウインド仲間でもある親友にお願いしている。
この部分のスキルを自分でやっても良いが、限られた生きている時間内では撮影をして良い画像を収録するほうの作業に、天から与えられた時間を使う事にしている。勿論、親友と言えども大変なクリエイティブ作業に対する対価は当然支払う。
しかしこうして作成、自費出版した本(=主に写真集)の殆んどは販売しない。本屋さんでもネット上でも買えない。理由は簡単だ、売りたくないのだ、理解して喜んでいただける方にさし上げたいのだ、観て頂きたいのだ。自分のやっている事を良く知って頂きたい、観て喜んで欲しい・・・のが自費出版する理念なのだ。
お金を払って買っていただくまでのレベルには無いと思っているからこそPHOTOPRESSOのネット上でまずは公開するのだ。出版社に話をして書店ルートで売る本を作るつもりが無いのもそれが理由。
基本的にこれだけネット上で情報が流れ、スマホで自分の行動を左右する人だらけの時代、印刷された重たい本は手に入れた途端断捨離対象のゴミになりかねない。
下世話の理由から言えば、筆者の出版物はお金で誰でも手に入れられるようなものではない・・というプライドと、売るとなると売れたかどうか気に成るので販売は嫌なのだ。
ここから先が、本を出版社から売り本として出す発行者と、自費出版する者の「理念の違い」の世界に入って行くのだ。
巷にはよく言われる「人間誰でも一生に一冊の名著を世に出せる、それは自叙伝・・。」というのがある。その人にしかない完全オリジナルの経験談生い立ち談は、誰にも評論できないしケチも付けられない。
それがNHKのファミリーヒストリー的内容であろうが、自分の携わってきた仕事を振り返っての企業人レポートであろうが、いずれもプライベートな内容なので、赤の他人的には興味は少ない上、知り合いであった場合は生で逢って本人の口から直聴く方が良い内容だったりする。更に酒を飲める人同士であればなおさらだ、より自慢話に花も咲こう?
筆者も「団塊世代のヤマセミ狂い外伝」という生い立ち自伝や「団塊世代のVAN狂い外伝」という青山のヴァン ヂャケット宣伝販促部時代の話をまとめた社内面白話(未完成)などを自費出版していない事もないが、一冊も販売はせず親類縁者・友人知人に差し上げた。それ以外のほとんどは野鳥中心の写真集だ。
CanonのPHOTOPRESSOで既に12冊(主に本印刷へ向けてのテスト版として)を制作、仲の良い友人やお世話になっている方々に贈呈した。現在その一部をネット上で誰もが観られるように公開している。
中には既に9000回以上の閲覧アクセスを頂いているものもあるし、4月20日に公開した今回の「明治神宮100年の杜 野鳥」も既に1000回を超える閲覧アクセスを頂いた。現在この2冊のどちらかをパワーアップし通常のオフセット印刷にして配ろうかと思っている。
残念ながらPHOTOPRESSO の場合多量に印刷すると単価が安くなる・・、という印刷の世界の常識とは違うシステムなのでコスト的に高く、とても多くを印刷できない。清水の舞台から飛び降りたつもりでも、毎回せいぜい20冊が良い所だ。
筆者は勿論プロの出版人ではない。しかし素人としてできる限界の事は今後も続けようと思う。楽しんで行っている事を「仕事」「金儲けの手段」としてしまう辛さは良く判っているつもりだ。