昨日の地方新聞に北海道の海鳥が危機的状況だとの記事が出ていた。結構大きな記事だったが、現地で数年前観察した実地経験から言わせていただくといささか疑問点が多い。
特に数が激減している主要原因に漁業の刺網による混獲があるという話だが、そのエビデンス、証拠データがまるで無いのは如何なものか?海鳥激減論の中心的要因と上げているからにはそのエビデンス表記は必須。決して~だろう、~と推察する・・で語って良い領域ではないと思う。
球磨川で盛んにおこなわれている鮎の刺網でヤマセミほかの水中採餌の野鳥が掛かって死んだという話は聞いたことが無い。このあたりは詳細なデータが必要だろうと考える。
このエトピリカやオオセグロカモメに関しては、過去数年夏7月と冬1月末それぞれ10日間ずつ根室に滞在し、道東を車で周り数多くの野鳥を撮影観察したのだが、エトピリカも結構居たし、オオセグロカモメは嫌というほど道東各エリアに生息していた。
野鳥の数データを取るのは非常に難しく、事実上野鳥関係団体の調査データは残念ながら不正確なものが非常に多い。全国調査でそのエリアには数が少ないと出ている資料で、実際は結構多かったりする事例が山ほどある。ましてや海鳥の場合は更に調査は困難だろう。すべてが大勢で目視して調査できるタンチョウのような訳にはいかない。
この記事のレポーターは過去1~20年間の各種野鳥の数の推移データを持って論じているのだろうか?是非エトピリカなりオオセグロカモメの数の推移を教えて頂けたらと思う。エトピリカに関しては居る場所は限られているのだから推測ではなく定点観測できよう?
エトピリカなりパフィンの仲間は英国東岸及びその周辺の諸島に山ほど集団でいる。10年続いている大人気英国ミステリーの「~ヴェラ・執念の女刑事~」のなかにも、シーズン7第1話「連鎖の孤島」の回に出てくる。北海道道東では霧多布の沖合の無人島などにも居たが、現在は根室沖の2つの無人島付近で繁殖しているのが確認されている。しかし冬季の漁網うんぬんで数が減っているという話は漁業関係者からは聞いてない。
2014年の3回の出航時には沖合で10羽以上のエトピリカの幼鳥に遭遇、撮影している。自然淘汰を考えても相当数が成鳥に成ったと思われるが、違うのだろうか?
漁船を管理している漁協に直接訊いたので間違いない。オオセグロカモメに至っては根室附近の漁港十数カ所含めてどこでも出遭える。
逆に危機的状況というエビデンスを、国内の実測データなり推移表で示して頂けると嬉しい。水族館で飼育しているエトピリカの生態を観察して何かを想像しているとの記述もあったが、現場での実地観察をしなければ本質的な事は判らないのではないだろうか?
東京・吉祥寺の井の頭文化園で飼われ、毎日金魚を飼育員の手から貰っているヤマセミ、あるいは野外で風切羽を切られて飼われているタンチョウ、コウノトリを観て本来の生態など判る訳が無いのと同じだろう?野生生物を甘く見てはいけない。
それに野生生物は色々な環境により増減するものだ。減るものもあれば、カピバラや外来のインコ、オオサンショウウオなどその地の環境で刻々と変化するのが当たり前。「危機的状況」と訴えるのは少しおかしいような気がする。人間が自然界を管理しているとでも言いたげだが、その自然界を数を増やしながら変えてしまっているのは人間だろう?
単に危機を先生に言いつけるような事は誰にでもできる事。溝に落ちた子犬を「ワー大変!誰か―!」と言っているようなものではないだろうか?危機的状況だと思うのであれば具体的に何をするか、どうしたら良いか(自分を含めて)までを提案して初めて学者・研究者・メディアであるような気がする。
欄外に海洋プラスティックなどの記述もあったが、レジ袋の件も出ていた。ここで一つ質問だが、レジ袋のプラスティック量と弁当やレトルト食品の器、ミニトマトなど野菜用のプラケースの量とどちらが多いかご存じだろうか?レジ袋の事ばかり叩いて、こうしたプラスティック容器の事を叩かないのは、少し的が外れているような気がするが如何だろう。