2020年12月21日月曜日

団塊世代のコーヒーに関するあれやこれや。 This and that about the baby boomer's coffee knowlidge and talk.

 筆者が珈琲という飲み物に接したのは北九州の小倉市(現・北九州市小倉北区)で小学校時代銀天街の駅に近いエリアに在ったフルーツパーラー「ニューヨーク」だか「ニュートーキョー」でだった。いつもお店の前を通る都度良い匂いがするので何だろうとは思っていた。たしか、何を注文する?と父親に訊かれて、大きくてカラフルなニューを見て大きな声で「フルーツチンポ!」と言ったのもこの店だった。小学生の記憶の中に残る数少ない「西洋風」な世界が其処にはあった。

 その次に珈琲に注目した記憶が濃いのが、1969年横浜の大学に入った頃だ。当時清水が丘に在った教育学部や経済学部、弘明寺にあった工学部、キャンパスは分かれていたが、港ヨコハマの佇まいは江戸・東京に比べると英文字やカタカナの多い西洋そのものだった。日用品や生鮮食品を買うお店にしても「いなげや」、だの「三平ストア」、駅前銀座ではなく、スーパーマーケット UNIONだったり、本牧ベースのPXだったりした。当然そういう所は店内に入った途端、入れたての珈琲のものすごく良い匂いがしたものだ。

 当時の横浜はネルの袋で煎りたて挽きたての珈琲が当たり前だった。その頃はインスタントコーヒーの出始めで、テレビの宣伝で「アムステルダムの朝は早い・・」とかいうコマーシャルが流れていたものだが、筆者自身すでにまがい物のインスタントでは納得しない歳になっていた。

 それを過ぎて、社会人になり忙しくて自分でいちいち綿ネルのドリップを入れる暇がなくなって珈琲店で美味しい珈琲を飲む癖がついていた。そうして知ったのが、店によって違うコーヒーの香りだった。香りの方が味より差が良く判った。もちろん焙煎したてか否か、挽きたてか否かは他の誰より嗅覚が発達しているせいか、気に成ったのもこの頃からだ。これは熟練とか商売でやっているからとかではなく、先天性の音感や記憶力に近い何かだろうと思う。

 神保町の「さぼうる」、新宿駅・渋谷駅の立ち飲み「アートコーヒー」、原宿「レオン」、横浜西口ダイアモンド地下街の「カリオカ」、それに続く外れの細長い地下街に在った「横濱珈琲店」などが好みで行きつけだった。

神保町のさぼうるは1969年の学生運動の頃からずーっと通っている。

スタンド立ち飲みのアートコーヒーは渋谷の東横線改札横が一番多かった。

フランス・パリのシャンゼリゼに在るラドュレ・レストランで食後のエスプレッソ。

 1972年英国旅行の帰りにローマの空港で飲んだエスプレッソの香りと味の衝撃はその後のコーヒー好きの原点に成ったと言って良い。空港で3倍もおかわりしてクラクラしたのを覚えている。砂糖もミルクもしっかりと入れるんだよ!と店の兄ちゃんに言われたことを今でも守っている。今どきの気取ってエスプレッソをブラックで飲む奴はちょっと信じられない。

 1973年に社会人になって最初の会社・青山のVANに入り、すぐAoyama99Hallがオープンした。入り口に一杯99円で飲める我が国最初のカフェ・エスプレッソが出来た。このVANに居た時分は倒産するまでの5年間、毎日このエスプレッソを最低2杯は飲んで暮らした。

 一方で1975年に出張で初めて行ったアメリカ本土のファミレスで出てくる、紅茶より薄いのではないかと思うようなアメリカンコーヒー。個人的に言えばあれは珈琲ではない。

 こういった珈琲との長い付き合いの中、最近は毎朝・毎夕二度珈琲を挽いていれて居る。ネル袋ではなくカリタでドリップ。豆はさんざん経験してきた中で一番美味しいと思うOKストアのオリジナル・マイルドブレンドだ。何せこの店の珈琲豆の人気は半端ではなく回転が速いので常時新しく焙煎した豆がアルミ袋に入っている。



豆と粉どちらも400g410円、会員になりネットで注文すれば300円台だ。

コーヒー専門店ほどバリエーションは無いが、デイリーで多飲する人には充分!

 完全密閉のアルミ袋でありながら焙煎したての珈琲の匂いがすると言う信じられない香りの強さだ。封を切ってミルで挽いていれると小山の様に膨れ上がる。完全密閉で冷凍庫で保存すると随分この感じは保てるのでそうしている。400gで410円というのが素晴らしい!

 訳の分からない、如何にも専門めいたうんちくや宣伝文句を並べて100gで千円近くもするような豆を売っている珈琲豆ショップとは雲泥の差だ。試しに喫茶店をやっている友人へ持っていって挽かせて入れて飲ませたら目の色が変わった。だけど何処の商品かは教えてあげなかった。ショックを受けるの間違いないから。

 東京ではKALDIの豆がリーズナブルで常に新鮮だ。やはり焙煎してどれだけで回転して売れていくかで珈琲豆の匂いと味は相当違ってくる。

 筆者は野鳥の撮影などで日中アウトドアで過ごすことが普通の人より遥かに長い。したがって珈琲を保温のボトルに入れて持ち歩くが、途中で補給する。その際思うのだが最近のコンビニの珈琲は結構おいしいので驚いている。セブンイレブンの珈琲など結構おいしい。時には自宅で急いで珈琲パックでいれたのより美味しかったりして腹が立ったりする。

 珈琲に限って言えば喫茶店をやっているから詳しいとか、手に入りにくい良い豆を安く売っているとかは関係ないと思う。希少価値で高価=良い豆とは限らないのだ。珈琲は理論ではない、好き嫌い、好みの違いで「絶対」は存在しない。これはワインと同じかもしれない。決して通のいう事が正しいとは限らないだろう?筆者はアルコール分解酵素を持って生まれなかったのでワインの良し悪し、好き嫌いは全く判らぬが、事・珈琲に関しては少しうるさいのだ。