特に3月上旬だというのに新緑の木々の勢いは相当なものだ。菜の花の爆発的開花、ヒメモクレンなどは花火が開いたように満開になっている。この分では桜も相当早いだろう。東京の千代田区では今日一凛桜が開花しているという。雪が少なかった長野県その他東北や北陸のコメどころでは雪融け水も少ないだろう、初夏の水不足が気になる所だ。
そんな状況下、今年はカワウが例年以上に多く人吉エリアに飛来している。球磨川本流はもちろん、支流部にまで例年以上にカワウが目に付く。黒い個体に白いくちばしのオオバンも近年多いようだが、今年のカワウはヤマセミの繁殖エリアとダブる形でたむろっているので、ヤマセミとしても相当イラついている様だ。
今日、久しぶりに出遭えた昨日までとは異なる支流部のつがい(これで今回人吉市エリアで遭遇したつがいは四組)のいつもの行動エリアのど真ん中に、カワウが10羽ほど居座っていた。
川の中ほどに大きな岩があり、いつもはヤマセミとイソシギとセグロセキレイなどが同居していたりする野鳥の集会場的役割を果たしているのだが、そこに婚姻色に変化した三羽の大きなカワウがデンと居座っているのだ。
此のあたりの町内の顔役的存在で気の強いヤマセミはこれが気に入らないらしい。
盛んにその岩を回りながら、その岩ぎりぎりに3回~4回とダイブを繰り返しては岩の上で体を乾かしているカワウに水を引っ掛けているのだ。これには笑ってしまった。まるで子供のいたずらと大差ない。カワウも緊張してヤマセミの動きに合わせて首を振っていた。
漫画のような話だが、これ以外、この状況を説明する理由が無いのだ。そうではないという何か根拠のある別の原因があればぜひ知りたいのだが・・・。
野鳥の生態といえば、その野鳥の体形や特徴的な部分に限るもの‥といった細かい内容から、縄張り意識の強さや気の強さからくる生態(行動)特徴、あるいは繁殖方法(営巣方法・営巣場所)の特徴からくるものなど多岐にわたる。
ヤマセミに関しては警戒心が強く個体数も少ないため、過去においては研究者も少なく詳しい文献が無いのはご存知の通りだ。おおむね10年間の観察で人吉市周辺半径10㎞内の4~5家族を観察したデータを整理しても、今回のような他の野鳥に対する奇妙な生態は初めて目にした。これだから生態観察はやめられない。
よく、カワウが羽を広げて乾燥させている姿を見る事が有るだろう。カワウにとって水しぶきは基本的には嫌なはずなのだ。
明らかに嫌がっているカワウ。
明らかにカワウたちも、しつこいヤマセミの行動に目を奪われている。