しかし、空を飛ぶ野鳥から見れば、どんなに高い建造物があっても、交通量や人間が多くても、餌が採れて、塒が確保でき、水さえあれば天敵から身を守りやすい大都会は意外に過ごしやすい環境だと聞いた事がある。
地方で犯罪を犯した容疑者が、小さな地方都市や顔見知りで構成されている工業地帯の工場街・下町の横丁あるいは、山岳地・荒野を逃げ回るより、東京や大阪など、見ず知らずの多くの人間が不定期に行きかう大都会の盛り場の方が、はるかに身を隠しやすいというのに似ている?
かって、昭和の天皇陛下が皇居の吹上御所の芝生の庭に春先ヤツガシラが飛来し、しばらく滞在した事実があるという。これに関してはその芝生のお庭を見ていた天皇陛下が皇后陛下に「ヤツガシラだよ、珍しいねえ?」とお声を掛けたら「あら、今夜のおかずにちょうど良いですね?」と、サトイモ科の八ツ頭と勘違いされたという笑い話があるが、どこまで本当か定かではない。
一方で、新宿御苑にはルリビタキ、トモエガモなど地方でもなかなか出遭えない野鳥も渡ってくるし、明治神宮にはオオタカも営巣、サンコウチョウ等も来たりするという。
東京もビルの真ん中ではなく郊外へ出れば23区内でも数多くの野鳥に出遭える可能性がある。
今日は、そういったレベルではなく、日常街歩きの途中で出遭う都会で暮らす野鳥たちをレポートしてみた。
カラスとスズメとカワラバト・伝書バトのたぐいは省くとして、ハクセキレイとメジロ、ヒヨドリ、オナガが都会のど真ん中では一番多く遭遇する野鳥だろうか。
まずメジロ!JR山手線の駅に「目白」があるがこれは同じく「目黒」同様、野鳥のメジロ、メグロからきている名前ではないようだ。いずれも鎌倉街道に沿った「目白不動尊」「目黒不動尊」から来たようだ。
で、メジロが何で都会の町中で盛んに生息しているかと言えば、間違いなく「餌と安全」だろう。よほどのことがない限り大都会で猛禽類が小鳥を襲うことはない。逆に塒にする公園の樹木、人間が残したりこぼした残飯、あらゆるところの水溜り。これだけ揃っていて過ごしにくい訳がない。紐でつながれたペットの犬、唯一天敵と言える野放しの猫たちも野生の本能を失って久しい。
おまけに、軒先に干された干し柿などは格好の餌だ。三鷹の住宅街でもう13年以上続けている筆者の干し柿作りのベランダの干し棚にもメジロやヒヨドリが来る。一度ほじくられて鳥除けネットを張ったためもう実害はないが、ご近所では今年もほぼ全滅した。
もう13年以上こうして柿を剥いて干し、恩師やお世話に成っている大先輩たちに贈呈しているが、鳥除けネットが無ければ干し柿もメジロたちへのボランティア・プレゼントになってしまう。
毎朝散歩で通りかかるご近所の干し柿は、吊るし方も雑で酷いが、とうとう野鳥に食べ尽くされてしまったようだ。
一方でハクセキレイ。
レンガの歩道にハクセキレイ
此処まで近づいても、人間が避けるだろう・・くらいになめているハクセキレイ。
こうして、都会のど真ん中にハクセキレイが人間と共存して闊歩している事実は驚きだ。