実は3年前、御徒町北側の佐竹商店街(東京で二番目に古いアーケード商店街)に大阪から来たという「一本堂」というパン屋が出来て話題だという話を、この地に事務所を構える友から聞いた。
かって佐竹商店街に在った一本堂パン屋
直ぐに買いに行って、自宅に持って帰ったが6枚切りとかはしてもらえず(今は切ってくれる様だ)自分で切らねばならず、焼き立ての食パンは包丁では切りにくく往生した事を思い出した。しかしコスト的にも決して高くはなく、食パン専門店というポジションが目新しいのでこの時期少し注目した覚えがある。
確かに焼き立ての食パン(1斤=280円)は良い匂いがするし、其のまま食べても美味しいのだが、筆者大好物のアップルパイや柏餅の様に「おやつ」的に食べるものではないので、食べ物のポジション的には難しい買い物だ。その美味しい焼き立ての状態も、残念ながら半日も経つとただの食パンで、目隠しテストをすれば駅前のパン屋で売っているパンと差異は判らない。
レーズンパン(当時1斤=380円)もあるので買ってみたが、捏ねた形のままレーズンが渦巻き状に入って居る、下手をすると底の方に固まって入って居て、なおかつ包丁で切るとボロボロとせっかくのレーズンが零れ落ちてしまった。店頭で切ってくれない理由がこれなのだ。ある意味欠陥商品。
自宅の近所、三鷹にもその半年後開店したので、行ってみたが商品的には同じだった。これは2017年頃の話だが、何と佐竹商店街のお店は今はもう閉店してしまって無いという。逆に、当時話題になった一本堂は現在東京だけで35店舗も展開しているので多分流行っているのだろう。
今日筆者が訝しがりながら問題にしているのは、この一本堂の事ではなく、銀座・日比谷や青山などで話題を集め、メディアがこぞって取り上げている高級食パン専門店の事だ。
雨の中列を造って数時間待って、くそ高い食パンを買う人々。それが今のカッコいいトレンドだと吹聴するメディア・マスコミ。この動きを筆者は訝しんでいる。一方では業務用スーパーで買える一斤80円くらいの食パンが在る中、1枚80円でも買えない高級食パンとの格差は何処にあるのだろうという興味から、筆者は色々な食パンを試す気になったのだ
銀座1丁目の高速下にあるセントル・ザ・ベーカリー。高級食パンブームの火付け役になったとメディアは言う。2斤800円?どのレポートを見ても一本と表記したり一斤と表記したりレポーター自身があまりに不勉強。2度ほど列が出来ていない雨の日に買って食べてみた。確かに普通の焼きたて食パンの美味しさは素晴らしいモノだったがこのお店だからこそ・・という所まではいかなかった。焼きたて食パンは何処でもこういう匂いと味がするものだ。
小学校の時に給食で食べたコッペパンは、当時昼直前に焼きたてが地元のパン屋から木製のパレットで運ばれたもの。ものすごく良い匂いがしたのが擦り込まれているので、団塊世代はパンの焼きたての匂いを良く知っている。
しかし20年暮らしてベース駅になっている武蔵境駅では、このリトルマーメイドが圧倒的に美味しい。価格に対する大きさ・味含めてコストパフォーマンスが群を抜いているし、近所には無いので毎日は買えないが一番の好みのアンデルセンの食パンと同系統の美味しさで贔屓にしている。調べたら実はこの2店、資本も同系列の企業だったので驚いた。
それにこの武蔵境店にしかない、レーズン一杯のレーズンパンは他の何処の食パン屋のレーズンパンより美味しいし、ブドウの密度が素晴らしい。
要は、各家庭の味の好み、価格と質・食感・大きさなど「お得感!」で決められる毎朝のトースト食材としての食パンは、食生活において重要な位置を占めているのは間違いないだろう。
此処で、先ほどの列を造ってまで買うのがトレンドだ・・とメディアが煽る高級食パンだが、買い求めている皆さん本当に毎日それを食べ続けて生活しているのだろうか?しこたま買い込んで1割程度を焼き立てて食べて残りは冷凍して毎朝解凍して焼いて食べているのだろうか?
我が家では、そんなに高い金額を食パンに投じる価値感覚はないし、並んで待つ時間的ゆとりもない。皆さん余程のお金持ちで、暇なのだろう。
話題の高級食パン店は残念ながら三鷹・武蔵野界隈には無いので縁がないが、都心に出た際も建物に沿って並んで待っているお客を観るにつけ、絶対に買う気にはならない。ましてや毎日もしくは1日置きに確実に手に入らない食パンって意味が在るのだろうか?
ネットにこれら高級食パン食べ比べの投稿サイトがあったのでご参考に!食べ比べの感想は筆者とそう違わない事に納得した。
https://retty.news/35459/
しかし、個人のブログにおいても情報発信する以上、実際に食べもしないで批評や非難するのは卑怯という筆者の理念から、実際に買って食べ比べている。
全部で8店舗の商品を食べてみたが、此処でそれぞれ個々の良し悪しを論評するつもりはない。焼きたてをその場で食べるのではなく、全て購入後半日経ってから、それと1日経ってからの2度食べてチェックをしてみた。
勿論、食の好みは各個人で千差万別だし、「良い悪い」では無いのだが、実際の生活のルーティン食材としての食パンの位置づけで調査をしてみたのだ。
結論から言おう。毎日朝トーストを食べるという食生活に根付いた食パンは、最低でも2日に一度並ばずに買える食パンである事。その条件下でコストパフォーマンス(匂い、味、食感、大きさ、焼き上がりの見た目、価格)を比較すると都心の高級食パン群は総崩れ。
中にはパンの耳まで柔らかくて美味しいと主張するお店もあったが、筆者などは耳はバリバリに硬いのを好む。今は無いが広尾商店街に在った「木村屋」が最高の食パンを造っていた。
硬い耳の食パンが嫌いな人は多分フランスパンなど絶対に食べないし、あの美味しさも理解しないのだろう。
結局、最近の高級食パンの類は一時的なファッションであり、デイリーな必需品食パンとは別物であるとの結論に至った。