理由は人吉盆地の地下200mまでの地下に存在する温水帯、つまり5~60℃の温泉だ。熊本県内の各河川の中で球磨川の水温だけが冬期もそう大して下がらない事が、国土交通省河川事務所のデータにも明らかだ。これは豊富な水量とその流れのスピードの速さによるらしい。
そんな状態でのヤマセミの佇まいを今日はご紹介。
球磨川流域、錦町でほぼ真下へのダイブ。
野鳥の画像など一枚もないのに、昨日の当ブログへのアクセスが多くて驚いている。今日の後半は昨日の続編報告。当日会場に来られた日本の代表的メディアの自然ドキュメンタリー番組・制作ディレクター氏に撮って頂いた画像でご紹介。
インタラクティブ発表は75分間の発表時間で、内容に興味を持たれた方へ対面で詳しい説明を行なえるもので、大教室で頭脳明晰な大勢を相手に最大公約数的な発表を行うのとは異なり、より突っ込んだ説明を行えるので好きだ。
勿論聞いてくださる方は野鳥に関してはあまり知識が無い方が多く、ヤマセミそのものの希少性や特殊性を最初の数分で説明しなければいけないのが難点だ。しかし写真集「人吉市の山翡翠」を差し上げて、ヤマセミ自体への理解を頂けるようにした。資料としては少々大げさで重たいが一様に喜んでいただけた。
野鳥好きの方の質問はとてもツボにはまって面白かった。
そんな中、何故ヤマセミが同じ漁師の竿に来るのか、何故毎回同じヤマセミだと断言できるのだ?と質問をされた方が居た。そこでヤマセミは1km四方の強い縄張りを持っていて、自分のテリトリーに他のヤマセミを絶対に入れない、したがって同じ竿に別の個体が来る確率は殆ど無いという事と、ヤマセミに限らず野鳥たちは人間の個体識別をしているので固定の人間に慣れると警戒感がだんだん薄れる・・・、と説明をした。
ほとんどの方々は「成る程!」とうなづいてくださったが、一人「何を証拠にそれが言えるのだ?例えば科学的にこうだとか、理論的な説明はないのか」と、突っ込んでこられた方が居た。きっと自分が納得しないと我慢ならない性格の余程頭の良い研究者の方なのだろう。周りの人達は「それはこの際あまり重要な事じゃないでしょ?」とフォローしてくださったが、その方執拗に食い下がるのでこう申し上げた。
「申し訳ない、私は鳥類医学者じゃないのでそういう専門的な事は判りません。その部分は鳥類に限らず全く別の学問に成ると思います。でもヤマセミの生態と行動に関しては、過去8年間に東京から現地に40回以上飛び、300日以上滞在し、18万枚以上の撮影を行って研究しています。したがって膨大な画像データと、現場での観察事実からそう判断しています。多くの漁師の方々からの話でも確認しています。
もし、貴方の疑問がはっきりしないとこの発表の続きを理解できないのであれば、どうぞ他の方の発表をお聴きくださって結構です。」
こういう学会の発表となると、種々雑多な方が聴衆に成るため、色々な次元の質問が飛び交う。学術的な会合では知識や頭脳明晰さを誇るような発言や質問が多いようだが、こちらは広告代理店時代様々な状況下で鬼の様なメディアやクライアントに対してプレゼンを30年以上繰り返し、問答に関しては百戦錬磨だ。瞬時に相手のツッコミをかわしたり反論するのは頭でも口でも慣れ切っている。
ただ、プライドが非常に強い学者・研究者の方々は、異業種交流やディベートなどの経験があまり無いので、今後は対応の仕方も気を使わねばならないだろうと反省もしつつ、良い経験をさせていただいた。
※ブログ掲載の画像の方々とブログの内容はリンクしていません、念のため。