2017年8月5日土曜日

球磨川のヤマセミ繁殖期はまだ続いていた! The Crested kingfisher's breeding season of the Kuma river still continued!

 2日前の大収穫に引き続き「柳の下のドジョウ狙い」を試みたが、微妙な影響、状況の変化でドジョウは居なかった。
 ヤマセミの繁殖期におけ泡河原には下りずる親の微妙な警戒心、先を読んだ対応が観察できて別の意味で良い経験が出来た。

 2日前は堤防下の球磨川河原まで車で降りず、後ろに住宅が並ぶ生活堤防道路から球磨川全体を見下ろす環境下で撮影した。これであれば球磨川の支流が本流へ合流する打ち出し部分と呼ぶから7~80m程奥まった流域まで見通せるので、支流から出てくる其処のファミリーの動向を予測できるのだ。

 基本的に人吉市界隈の球磨川支流には、必ずヤマセミのファミリーが繁殖しており、それぞれの支流域を縄張りとして生息しているようだ。本流そのものが縄張りというファミリーも幾つか居て、時々支流のファミリーが本流まで出てきて小競り合いを行ってはいるモノの概ね上手く棲み分けているようだ。

 今回観察できたヤマセミの生態は、親鳥2羽が本流に出て状況を視て幼鳥たち2羽が本流に出てきても安全かどうか確認している様子と判断できる動きだった。
 2羽のつがいが球磨川本流の大きめの連なった岩に飛来し、盛んに鳴きながらあたりを見回し、支流の打ち出し部分に向かって連続音で鳴き続けていたのだ。
 そうしてほんの5分間ほど居ただけで何もせず支流の奥へ戻って行ってしまった。

 撮影画像を夜に成って詳しく見ると、次のような事が判った。

① 2日前は堤防の上は筆者一人が撮影機材と共に場所を動かず、勿論喋らず観察・撮影していたのだが、昨日は複数の人間が堤防上にたむろし声高に会話を続けていた。これは本流打ち出し部分のヤマセミつがい親の定位置(本流の対岸に居る人間からは非常に見難い)からはそれが間違いなく判っていたと思われる。

② 一旦出てきたヤマセミつがいの親鳥2羽(オス・メス)が、鳴きながら交錯しても鳴いて警戒音を発する方向はつがいのお互いではなく、明らかに支流打ち出し部分の樹木へ向かってであった。そのうっそうとした樹木には猛禽類やカラスが居る訳でもなくヤマセミの幼鳥2羽が居るのであろうことは、揃ってその後4羽が支流をさかのぼって行ったことで判った。

③結論から言うと、様子見の親2羽は、子供達を本流に出すべきではないと判断し、今日の幼鳥教育の場を本流以外に決めたのだと見て取れた。

④20分後に同じ場所に行ってみたら、河原に3台の作業車が停まっていて、河原の草刈り並びにそれの撤去運搬作業を行う準備をしていた。したがって終日それ以降ヤマセミは其処へは一度も現れなかったと言って間違いない。

 この場所は普段鮎の刺し網漁の漁師さん達が川船を係留している場所で、いつも軽トラックが出入りするのだが、ヤマセミは間違いなくその車や漁師さんの顔を識別している。 ナンバーまで識別しているとは思わぬが、見慣れぬ車(車種・色)やそれに乗ってくる人間がやってくれば警戒するのは間違いない。

 このように、ヤマセミの警戒心、警戒時に対する対処は見事なものだと言わざるを得ない。たった2日間の観察で色々な事が判って、今回は非常に有意義な人吉行だった。
朝7時前、この日初めて支流域から本流に出てきたヤマセミ成長オス。

盛んに警戒心を発しながら2羽目を待ち受ける。撮影時現場では先に来たオスがあとから来たメスに向かって鳴いているのかと思った。


メスが近づいて、どうなるのかと思いきや・・・。

メスは通り過ぎてしまい、オスはあらぬ方向へ向かって鳴き続けている。

メスは少し離れた場所にランディング。

更に離れた小岩に移動し堤防のこちらを視ていた。

一方でオスは支流打ち出し方向へ向かってガルルルルと警戒音で鳴き続けていた。

 そうして、つがいの親鳥2羽が支流打ち出し部分へ戻った直後、4羽のヤマセミが支流の奥へ去っていくのを撮影できた。

 しかし、ここで早とちり、間違った判断をして頂きたくない事がある。野鳥種個々の生態や生息状態を調べもせず、無知から来る勝手な思い込みや野生の生き物に対する「忖度=そんたく」をして、「ヤマセミが居る所でやたらと大人数で見物したり撮影したりするな」、あるいは「そっとしておいてやれ・・・」、非具体的な「野鳥観察ルールやマナーを決めるべきだ!」などという一見優等生的な提言・アピールをしてほしくない。

 ヤマセミが展開するエリアは、人間にとってもアユ漁の場所であったり、堤防上は人間同士の移動の道路、コミュニケーションの場なのだ。土手の草刈りや刈った草の撤去は意味があって行っている事なのだ。野鳥観察や撮影行為もヤマセミに限った事ではなく、猛禽類、サギ類やカワウ、カワセミを対象としている観察撮影者も居るのだ。

 ヤマセミが人吉市の鳥に制定されたからと言って、決していきなり「保護をしなければ・・・、観察ルール・マナーを作らねば・・・」とその生態も知らず具体的プランもないのに優等生ぶって提案だけするなど「良い子」にならないで欲しいのだ。
 ヤマセミに限らず、野生の鳥が人吉市街地で人間と共生・共創している意味やその理由をよく考えていただきたい。人吉の街や其処の人間が煩わしく危険と判断し、傍に居たくなければ、ヤマセミは当の昔に人吉から居なくなっていただろう。