堤防上で撮影者の真ん前で脱糞した後、ヤマセミは雨で増水した球磨川本流に向かって飛んで行ったのだが、その後の行動は常軌を逸脱した非常に珍しいパフォーマンスだった。あとにも先にも今まで4年間ヤマセミを観察していてこのようなはしゃいだ様な飛び方は視た事が無かった。
水面すれすれ(と言っても増水の球磨川は結構波立っている)に飛んだかと思うと、水面に突っ込んだり、1mの高さからそのまま真下に水面に平行状態のまま落ちてみたりした。あるいは体を左右にヒネリながら飛んでみたり、急旋回して方向を180度変えてみたりしていた。
一見本気ではしゃいでいるのか?何かに喜んでいるのか?朝から雨で増水した球磨川で採餌が上手く行かないところ、やっと大物が獲れて喜んでいるのかと茫然としながらシャッターを切り続けた。
ひょっとすると、先ほど丸呑みした餌が鮎やイダ(ウグイ)やオイカワのようにすぐに死んでしまう種の魚ではなく、ドンコやカジカ、ヨシノボリの類でなかなか死なないタイプの餌で充分殺していなかったのが、食べた後にヤマセミの腹の中で仮死状態から息を吹き返し暴れているための行動なのかも知れないと後でパソコンの画像を観て思った。
今では真剣にそれが原因の一つかもしれないと思い始めている。こういう自然界の野鳥が人間のように己の喜怒哀楽を行動で示す事など考えられないと思う。しかし不思議だ。
脱糞後対岸方向へ飛んで行ったはずが、すぐにくるっと向きを変えて鳴きながら戻ってきた。
尾羽を目一杯広げたまま左右に振りながらいつもとは違う飛び方で川面を飛ぶ。
3~4回は左右に振って飛んでいた。
次の瞬間水面すれすれに腹ばい飛行をして・・・・・。
頭の先から水面に突っ込む。
突っ込んだ瞬間180度向きを反対方向に変える。
またまた向きを変えて水面からジャンプアップ。
一見楽しそうにも見えるからこちらもおかしくなってくる。
鳴きながらこういう行動を円を描くように、あるいは滅茶苦茶な方向に10回以上繰り返した後いつもの巣の方向に飛び去って行った。後に残された撮影者はただ茫然とするしかなかった。